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第一章:勇者誕生?
プロローグ
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「――……あー、腹減ったなぁ」
俺――スウェインはそんなことを呟きながら、森の中で大の字になって仰向けに倒れている。
ここ数日は満足いく食事にありつけておらず、このまま餓死してしまうという未来が現実味を帯びてきた。
「……まあ、俺が死んだところで誰も悲しんではくれないんだろうけど」
どうして俺が森の中で倒れているのか、それは生まれてから十五年間を過ごしてきた村から追い出されてしまったからだ。
村人からは哀れな視線を向けられ、友人は一気に離れていき、家族からも罵られた結果がこれである。
では何故こんな状況に追い込まれたのか。それは、俺の職業ランクがNだったからだ。
「まさか、Nだからって手の平返しで追い出さなくてもいいだろうよ!」
神が定めたとされている職業ランクには五つのランクが存在している。
最高ランクのXRから順にUR、SR、Rと続き、最低ランクが俺のNだ。
ここ、ラクスライン国では職業ランクだけでその者の生活水準が決まるとされており、Nは奴隷と似た扱いしかされない。たとえ親子であっても子供がNと分かれば俺のように追い出されることも少なくない。
そこに加えて選ばれた職業もNの中でも最底辺とされている単なる荷物持ちとあって、職業判明から三日後に追い出された。
周囲の視線に耐えきれなくなっていた俺は準備を整え次第自ら出て行くつもりだったのだが、俺が限界を迎える前に周囲が限界を迎えてしまったのだ。
「食べ物もなし、水もなし、周りを見渡しても何もない。……まあ、魔獣がいないことが唯一の救いか」
せめてNでも戦闘職なら魔獣を狩って食べられたんだけど、荷物持ちじゃあそれすらできないんだよなぁ。
そういえば、そろそろ勇者が魔界に入って本格的に魔王討伐に乗り出すとか職業ランクが分かる前に耳にしたけど、あれはどうなったんだろうか。
「ったく、勇者がさっさと魔王を討伐してたらこうはならなかったのか? ……いや、人族は人族だ。Nに対する差別が変わることはないだろう」
それに、勇者は根っからの貴族主義だと聞いたことがある。Nは他と変わらず見下し、Rですら邪魔者扱いするのだとか。
勇者にとっての人族とは、SR以上の職業ランクを持つ者のことを言うんだろう。
「……なんか、このまま死んでしまってもいい気がしてきたな」
俺はこの世界と勇者に絶望していた。
今まではこんな感情になったことはなかったが、Nだと分かった途端にこう感じてしまったのだから俺も人のことは言えないんだろうけど。
「……はぁ、いい天気だなぁ」
木々の隙間から見える雲ひとつない空を地面に寝そべりながら見ていた俺は――突然の強烈な頭痛に顔をしかめてしまう。
「ぐがあっ! ……お、おいおい、なんだよ、これは……ぐああああああっ!?」
視界が揺らぎ、意識が遠のいていくのが分かる。
……あぁ、まさか、餓死でも魔獣に喰われるでもなく、意味の分からない死に方をするなんて。
そんなことを考えていると、またしても理解不能な出来事が起きる。
(――……死んでちょうだい)
(――ぐがあっ!?)
(――あなたは、ふさわしくないわ)
……おいおい、男女のもつれか? それとも、殺し合い、か?
(――な、何をするのよ!)
(――順調なラクスラインにちょっとした悪戯だよー)
(――止めなさい! あぁ、そんな、どうしたらいいのよ!)
……今度はなんだ? 人の頭の中で、何を口論してるんだよ。
俺の頭の中には聞いたことのない声が響き、見たこともない光景が映し出されていく。
そして、なんのことだかさっぱり分からない情報らしきものが大量に流れ込んできた。
「があっ! ……ヤ、ヤバい……これは、マジで……し……ぬ…………」
そして、俺はそのまま意識を失ってしまった。
◆◆◆◆
「――……ぅ、ぅぅん」
……俺、生きてるんだな。
気絶する前に感じていた頭痛は嘘のようにスッキリしており、空腹から感じていた倦怠感もすっかりと抜けている。
――ぐううううううぅぅ。
……まあ、空腹が解消されているわけではないんだけどな。
だが、どうして体がスッキリしているのかは全く分からない。それに、あの時に流れ込んできたあの情報はいったいなんだったのだろうか。
「……あれ? 力が、漲ってくる?」
なんだろう、今なら魔獣の一匹や二匹くらいなら殴り倒せるような気がしてならない。
いやいや、Nの荷物持ちなんだからそんなはずはない……ないんだけど、できると確信のようなものを俺は持っているんだ。
「……ま、まさかなぁ」
そんなことを呟きながら、念には念を入れて俺は自分の職業を確認する為に俺自身に鑑定スキルを発動させる。
「鑑定。……ん? 鑑定?」
俺は鑑定スキルを発動させてから気が付いた。
どうして俺は鑑定スキルを持っているんだと。
そして、その鑑定スキルが問題なく発動してしまったものだからさらに驚いてしまう。
「……ま、まあ、見てみたら分かるか」
俺は俺自身の情報を目の前に浮かび上がっている鑑定スキル特有の画面から確認していく。
「名前、スウェイン。十五歳、男。職業ランクXRの勇者、身長まで分かるのかよ。身長は……ん?」
……今、おかしなところがあったよな?
「ま、待て待て待て待て。心を落ち着けろ、俺。すー、はー。すー、はー。……よし、もう一度見るぞ」
あり得ない。職業ランクが数日のうちに変わるなんて、絶対にあり得ない!
「スウェイン、十五歳、男。職業ランク……職業、ランク……XR!? それに勇者ってどういうことだよ!?」
俺は職業ランクNの荷物持ちだったんじゃないのかよ! というか、勇者は一人しか現れないはずじゃないのか! 同じタイミングで二人も勇者が現れるとかおかしいだろ!
「……もしかして、頭の中に流れてきたあの光景って……勇者が、殺された?」
なんだか、女性の声でふさわしくないとか言ってたような。
……で、でも、勇者が殺されたとしても、次の勇者は新しく生まれてくる赤子から生まれるって聞いたことがある。
唐突に野たれ死のうとしていた奴に与えられるとか、聞いたことがないんだけど。
「でも……はははは。なんか、勇者としての知識が頭の中にあるんだよなぁ」
これはもう、夢でも嘘でもないのだろう。
俺は、勇者になってしまった。
……これから、どうやって生きていこうかなぁ。
俺――スウェインはそんなことを呟きながら、森の中で大の字になって仰向けに倒れている。
ここ数日は満足いく食事にありつけておらず、このまま餓死してしまうという未来が現実味を帯びてきた。
「……まあ、俺が死んだところで誰も悲しんではくれないんだろうけど」
どうして俺が森の中で倒れているのか、それは生まれてから十五年間を過ごしてきた村から追い出されてしまったからだ。
村人からは哀れな視線を向けられ、友人は一気に離れていき、家族からも罵られた結果がこれである。
では何故こんな状況に追い込まれたのか。それは、俺の職業ランクがNだったからだ。
「まさか、Nだからって手の平返しで追い出さなくてもいいだろうよ!」
神が定めたとされている職業ランクには五つのランクが存在している。
最高ランクのXRから順にUR、SR、Rと続き、最低ランクが俺のNだ。
ここ、ラクスライン国では職業ランクだけでその者の生活水準が決まるとされており、Nは奴隷と似た扱いしかされない。たとえ親子であっても子供がNと分かれば俺のように追い出されることも少なくない。
そこに加えて選ばれた職業もNの中でも最底辺とされている単なる荷物持ちとあって、職業判明から三日後に追い出された。
周囲の視線に耐えきれなくなっていた俺は準備を整え次第自ら出て行くつもりだったのだが、俺が限界を迎える前に周囲が限界を迎えてしまったのだ。
「食べ物もなし、水もなし、周りを見渡しても何もない。……まあ、魔獣がいないことが唯一の救いか」
せめてNでも戦闘職なら魔獣を狩って食べられたんだけど、荷物持ちじゃあそれすらできないんだよなぁ。
そういえば、そろそろ勇者が魔界に入って本格的に魔王討伐に乗り出すとか職業ランクが分かる前に耳にしたけど、あれはどうなったんだろうか。
「ったく、勇者がさっさと魔王を討伐してたらこうはならなかったのか? ……いや、人族は人族だ。Nに対する差別が変わることはないだろう」
それに、勇者は根っからの貴族主義だと聞いたことがある。Nは他と変わらず見下し、Rですら邪魔者扱いするのだとか。
勇者にとっての人族とは、SR以上の職業ランクを持つ者のことを言うんだろう。
「……なんか、このまま死んでしまってもいい気がしてきたな」
俺はこの世界と勇者に絶望していた。
今まではこんな感情になったことはなかったが、Nだと分かった途端にこう感じてしまったのだから俺も人のことは言えないんだろうけど。
「……はぁ、いい天気だなぁ」
木々の隙間から見える雲ひとつない空を地面に寝そべりながら見ていた俺は――突然の強烈な頭痛に顔をしかめてしまう。
「ぐがあっ! ……お、おいおい、なんだよ、これは……ぐああああああっ!?」
視界が揺らぎ、意識が遠のいていくのが分かる。
……あぁ、まさか、餓死でも魔獣に喰われるでもなく、意味の分からない死に方をするなんて。
そんなことを考えていると、またしても理解不能な出来事が起きる。
(――……死んでちょうだい)
(――ぐがあっ!?)
(――あなたは、ふさわしくないわ)
……おいおい、男女のもつれか? それとも、殺し合い、か?
(――な、何をするのよ!)
(――順調なラクスラインにちょっとした悪戯だよー)
(――止めなさい! あぁ、そんな、どうしたらいいのよ!)
……今度はなんだ? 人の頭の中で、何を口論してるんだよ。
俺の頭の中には聞いたことのない声が響き、見たこともない光景が映し出されていく。
そして、なんのことだかさっぱり分からない情報らしきものが大量に流れ込んできた。
「があっ! ……ヤ、ヤバい……これは、マジで……し……ぬ…………」
そして、俺はそのまま意識を失ってしまった。
◆◆◆◆
「――……ぅ、ぅぅん」
……俺、生きてるんだな。
気絶する前に感じていた頭痛は嘘のようにスッキリしており、空腹から感じていた倦怠感もすっかりと抜けている。
――ぐううううううぅぅ。
……まあ、空腹が解消されているわけではないんだけどな。
だが、どうして体がスッキリしているのかは全く分からない。それに、あの時に流れ込んできたあの情報はいったいなんだったのだろうか。
「……あれ? 力が、漲ってくる?」
なんだろう、今なら魔獣の一匹や二匹くらいなら殴り倒せるような気がしてならない。
いやいや、Nの荷物持ちなんだからそんなはずはない……ないんだけど、できると確信のようなものを俺は持っているんだ。
「……ま、まさかなぁ」
そんなことを呟きながら、念には念を入れて俺は自分の職業を確認する為に俺自身に鑑定スキルを発動させる。
「鑑定。……ん? 鑑定?」
俺は鑑定スキルを発動させてから気が付いた。
どうして俺は鑑定スキルを持っているんだと。
そして、その鑑定スキルが問題なく発動してしまったものだからさらに驚いてしまう。
「……ま、まあ、見てみたら分かるか」
俺は俺自身の情報を目の前に浮かび上がっている鑑定スキル特有の画面から確認していく。
「名前、スウェイン。十五歳、男。職業ランクXRの勇者、身長まで分かるのかよ。身長は……ん?」
……今、おかしなところがあったよな?
「ま、待て待て待て待て。心を落ち着けろ、俺。すー、はー。すー、はー。……よし、もう一度見るぞ」
あり得ない。職業ランクが数日のうちに変わるなんて、絶対にあり得ない!
「スウェイン、十五歳、男。職業ランク……職業、ランク……XR!? それに勇者ってどういうことだよ!?」
俺は職業ランクNの荷物持ちだったんじゃないのかよ! というか、勇者は一人しか現れないはずじゃないのか! 同じタイミングで二人も勇者が現れるとかおかしいだろ!
「……もしかして、頭の中に流れてきたあの光景って……勇者が、殺された?」
なんだか、女性の声でふさわしくないとか言ってたような。
……で、でも、勇者が殺されたとしても、次の勇者は新しく生まれてくる赤子から生まれるって聞いたことがある。
唐突に野たれ死のうとしていた奴に与えられるとか、聞いたことがないんだけど。
「でも……はははは。なんか、勇者としての知識が頭の中にあるんだよなぁ」
これはもう、夢でも嘘でもないのだろう。
俺は、勇者になってしまった。
……これから、どうやって生きていこうかなぁ。
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