最弱職と村を追い出されましたが、突然勇者の能力が上書きされたのでスローライフを始めます

渡琉兎

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第二章:集落誕生?

外に行くのか?

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 ブレイレッジと決まった集落の名前は、すぐに住民に伝えられた。
 誰かに伝えるなんてことはないのだが、名前が決まると何やら嬉しいようで、子供たちは何度も口にしている。
 その様子を見ていると、名前を決めてよかったなと思えてきた。

「ねえ、スウェイン。ブレイレッジから外に出る予定はないの?」

 右隣に立って子供たちの様子を見ていたリリルがそんなことを聞いてきた。

「なんで?」
「いえ……なんでもないわ」
「言いたいことがあるなら、言ってくれて構わないぞ?」

 むしろ、いきなりお淑やかにされても気持ちが悪い。
 俺はお前の性格をある程度は理解しているつもりだからな。

「……外に出たら、人族のNや魔族のRを集めることができると思ってね」
「お前なぁ……昨日の今日で言っていることが矛盾してないか?」

 昨日は一ヶ月近く集落……じゃなくて、ブレイレッジにいるのが普通みたいなことを言っていたのに、いきなり人集めかよ。

「わ、私が勝手にじゃなくて! スウェインも一緒だったら、村長としてすぐに決断ができると思ったのよ」
「あっ! それは私も思ってたわ!」

 すると、左隣に立っていたルリエまでが話に参戦してきた。

「スウェインがいたら、私たちの判断じゃなくてスウェインの判断になるから、楽でいいわよね!」
「……お前のその言葉を聞くと、絶対に外に出たくなくなってきたぞ」
「えっ! それは酷くない!?」

 いや、酷いのはお前だろうが!

「とはいえ、ここで手に入らない物があれば買い出しに行くことにはなるだろうな。……言っておくが、今のところはそんな予定ないからな?」

 先にそう口にすると、ルリエは何かを言おうとしていたがガクンと肩を落としてしまった。

「そりゃそうだろう。俺が望んでいるのはスローライフであり、ここで手に入るもので生活をするようにしているんだ。そんなしょっちゅう買い出しに行くわけないだろう」
「そ、それはそうだが……」
「そもそも、俺が買い出しに行ったのは、ルリエと出会ったあの時が初めてだったんだぞ?」
「なあ!? ということは、私がここに来てから一度も外に出ていないのか!!」
「そうだけど?」

 当たり前のことを確認されても困るんだが。
 しかし、ルリエはどうしてそんな驚いた顔をしているんだろうか。お前だって、魔界から戻ってきてからは一度も外に出ていないだろうに。
 しかも、俺が出ていないことはお前が一番よく知っているだろうが!

「毎日、誰がお前たちの食事を作っていると思っているんだ?」
「……スウェインです」
「だろ? 当たり前のことを聞くなよ」

 腕を組みながら俺がそう言うと、ルリエはさらに肩を落としてしまった。

「スウェイン、あまりルリエさんをいじめないでね?」
「いじめてるつもりは一切ないんだが?」
「……いじめているだろう」

 何でそうなるんだ。俺は事実を告げているだけなんだが。

「それじゃあ、外に出る時には私たちにも声を掛けてちょうだいね?」
「いいけど、三人とも外に出るわけにはいかないだろう。最低でも一人は守りのために残らないといけないんじゃないか?」

 ここにいるのは人族のNに魔族のRで、種族内でいえば最下層の者たちだ。
 もし誰かしらに見つかりでもしたら、否応なく捕まえられて奴隷として売られるだろう。
 最悪の場合、無理やりにでも理由を付けてその場で殺されるかもしれない。
 そんなことが起きてしまうのが、今の世界なのだ。

「俺は魔界は当然だけど、人界についてもルリエほど詳しくはないから、やっぱり二人が出掛ける方がいいんじゃないか?」
「だが、それで勝手に連れてくるのは問題なんだろう?」
「それでは、私たちのどちらかと、スウェインが外に出るのはどうかしら?」
「……俺が出るのは確定なのか?」

 正直なところ、面倒なんだよなぁ。

「人界はルリエさんが、魔界は私が案内するということで、スウェインに同行してもらうんです」
「おぉっ! それならその場で判断してもらえるな!」
「……言っておくが、こちらから声を掛けるのは無しだぞ?」
「「えっ!?」」

 当然だろう。
 わざわざ問題に顔を突っ込む理由が一つもないからな。

「生きる意思のない者を無理やり連れてきても、問題しか起こさないだろう。生きたいという意思を持った奴なら、自ずと何かしらの行動を取るものさ」

 ……それっぽいことを言ってみたが、実際は難しいだろう。
 この世界では、人族だとNになった時点で家族からも見捨てられるわけだしな。

「……分かりました」
「……スウェインが言うなら、仕方ないな」

 納得してくれたみたいで何よりだ。
 俺としては、これ以上住民が増えないことを祈るだけだし、一緒に行けば二人の暴走を止めることができると考えれば、悪い話ではないかもしれない。

「まあ、外に出る時がきたら、声を掛けるよ」

 今はそれだけを口にして、また子供たちの方へ視線を戻すのだった。
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