役立たずだと見捨てられたら、敵国で英雄扱いされました! ~謎スキル緑魔法で成り上がります~

渡琉兎

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第一章:役立たずから英雄へ

36.戦争の結末は

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「――……ぅ……ぅぅ……」

 過去に感じた事のない気怠さを覚えながら、僕はゆっくりと瞼を持ち上げていく。
 見慣れた天井があるという事は、ここはライブラッド王国の王城にある自室、という事だ。
 だが、僕はどうしてこれだけの怠さに襲われているのだろうか。
 何があったのかを遡り……そして、すぐに意識を失ったあの時の光景を思い出した。

「レイリア! ――いったあぁぁぁぁっ!」

 体を起こそうとしたのだが全身に強烈な痛みを感じてしまい、頭を少し上げた時点で諦めた。
 だが、そのおかげで部屋の様子が少しだけわかってしまった。
 ……そう、わかって、のだ。

「……もしかして、ずっと看病してくれてたのかな?」

 ベッドの横には椅子があるのだが、そこに座っている者はいない。その代わりに、椅子を机変わりにして顔を乗せ眠っている人物がいたのだ。
 その人物は、僕が先ほど名前を呼んだ相手でもある。

「……レイリア」

 何とか右手だけを動かして、レイリアの頭を優しく撫でる。
 ……この感触を、僕は三年以上忘れていたんだな。

「……ん……ぅぅん……」
「おはよう、レイリア」
「ふぇ? あぁ、おはようございます、お兄様。……ふええええっ! お、お兄さ――ぶへんっ!?」
「だ、大丈夫か! レイリア!?」

 レイリアはあまりの驚きに慌てて立ち上がろうと椅子に手を置いたのだが、体重を乗せた場所が悪かったのか椅子が倒れてしまい地面におでこを強打してしまった。
 いや、僕が目を覚ましたくらいでそこまで驚かなくてもいい気がするんだけどな。

「だ、だだだだ、大丈夫なのですか、リッツお兄様!」
「僕は大丈夫だよ。それよりもレイリアは大丈夫なのか?」
「わ、私は大丈夫です!」

 ――バンッ!

「何があったの!」
「アルスラーダ帝国の間者か!」
「レイリア様、ご無事ですか!」

 ドアが乱暴に開け放たれて入ってきたのは、母上、ニーナ、キリシェである。
 三人も慌て過ぎだろう。レイリアが倒れた時の音を聞いてだと思うけど、王城に間者が忍び込めるなんて思わないし。

「皆様! お兄様が……お兄様が、目を覚ましました!」
「お、おはようございます、皆さん」

 レイリアの言葉を聞いてようやく三人が僕の方へ顔を向ける。
 緊張していたのか強張った顔だった三人も、徐々に表情が緩んでいき……え……ええええぇぇっ!?

「ああああぁぁっ! よかったわ、リッツ!」
「うええええぇぇん! よかったです、戻ってこられたのですねええええぇぇっ!」
「ちょっと、泣かないでくださいよ」
「これが泣かずにいられるか! このバカ者が!」
「キ、キリシェまで!?」

 まさか騎士であるキリシェまでが泣いてしまうなんて……あれ? こんなにみんなが喜んでくれるって事は、もしかして?

「……なあ、レイリア」
「な、なんですか、お兄様? ひっく!」

 おぉぅ、レイリアも泣いてた。さっきは驚き過ぎて気づかなかったよ。

「その、僕ってどれくらい寝てたのかな?」
「ひっく! ……今日で、一週間になります」
「…………い、一週間!?」
「そうですよ! だから、みんな……な、泣いているんですよおおおおっ!」

 ニーナはそう口にすると再び大泣きしてしまった。
 ……この状況、動けない僕にはどうしようもない。誰か、助けてくれないだろうか。

「リッツ君! 目を覚ましたのだな!」
「あぁ! よかったわ、リッツ君!」
「ア、アルヌス王に、エミリア王妃まで!」
「あぁぁ、寝ておらんか!」

 僕が体を起こそうとすると、アルヌス王が慌てた様子で止めてくれた。
 いや、僕としては王様の前で横になっている事の方が苦痛なんですけど。

「我々だけで申し訳ない」
「アークとイシスは戦後処理に追われていて、ネルは学園に通っているのよ。でも、みんなリッツ君が目覚めるのを願っていたわ」
「そんな! お二人の顔を見られてとても嬉しいですし、アーク様たちのお気持ちも嬉しく思っています!」
「……ん?」
「……え?」

 僕とアルヌス王の間で何やら行き違いが生じているようだが、何かあっただろうか?

「……アーク、様?」
「……え、ここでもですか?」
「……」

 む、無言で微笑まれても、非常に困る。隣に立っているエミリア王妃に至っては満面の笑みではないか。

「…………アーク兄上たちのお気持ち、嬉しく思っています」
「うむ!」
「まあまあ! 嬉しい言葉ね!」

 ……は、恥ずかしい。本当に、恥ずかしい。

「……って、そんな事より! 戦争はどうなったんですか?」

 あまりにも展開が早すぎて聞くタイミングを逸していたが、それが一番大事な事なんだ。
 僕の言葉に全員が真剣な表情となり、口を開いたのはアルヌス王だった。

「……戦争は終わったよ」
「……終わった?」
「その通りだ。おそらく、レイリア皇女の癒しの魔法陣が消えた事でアルスラーダ帝国軍の左翼が敗北した事が伝わったのだろう。すると、中央と右翼はあっさり引いていったと聞いている」
「あっさりと? レイリアを助けにとか、来なかったんですか?」

 僕は視線をアルヌス王からレイリアに向ける。
 だが、そのレイリアの表情は暗くなってしまった。

「……誰も、来ませんでした。もしかすると、お父様からレンネルお兄様とロベルトお兄様に別の指示が出ていたのかもしれませんね」

 ……いいや、それはないだろう。何せ、二人はレイリアの事をとても可愛がっていたからだ。
 となれば、誰の指示だったのかはわかり切った事だ。

「これは、皇后リリアナの指示だろうね」
「……お母様が?」
「僕と相対した黒頭巾の魔法師、あれは僕だけではなくレイリアの事も殺そうとしていた」
「なるほど。リリアナが裏で色々と暗躍していると考えれば、全てが納得できるわね」

 母上も同じ事を考えていたようだ。
 皇后リリアナにとって、自分の思い通りに動かない者は自分の子供であっても単なる駒に成り下がる。
 黒頭巾が言っていたみたいに、レイリアは僕の事を気にし過ぎるあまりに狙われたのだ。

「……それでは、レイリアの今の立場はどのようになっていますか?」

 そして、僕は起きた事ではなく、これからの事に目を向けた。
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