異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?

渡琉兎

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施設とダンジョン

お試し

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 それは──ダンジョンのお試しである。

「モンスターの昇華もできたし、ロンド君には私のダンジョンを試してもらいたかったのよ」

 廻がアセッド大陸にやってきてから二十日が経っており、モンスターの数は累計六十匹を超える。その結果、累計特典として経験値の実を手に入れていた。
 その数は十個であり、その実を使ってまずはスラッチとゴブゴブをレベル10に上げて昇華を果たしている。
 使った実がそれぞれ二つずつだったのでそのままキラービーとマジシャンも昇華を果たし、それぞれにキラビとミスターという名前を付けていた。

 ライもレベル10になっている。
 レア度2のライは最大レベルが20なので昇華はできていないが、それでも十分に強くなったと言えるだろう。
 その他にもスライムとゴブリンの総数が進化に必要な十二匹を超えたので余分を素材として使い最終的に進化の素材にするもう一匹のレベルを上げた。

「とりあえず、これだけいれば五階層まではいけるかしら?」

 廻の手持ちモンスターで主力と言えるのがライ、スラッチ、ゴブゴブ、キラビ、ミスターの五匹。
 次にレベル7のスライム、レベル5のゴブリン、レベル1のライガーが三匹。
 キラービーとマジシャン、それに種類としてはレア度1のアントとミニデビルが増えていた。
 アントはランダムにも名を連ねるモンスターで蟻が巨大化したモンスター。強固な外殻と強靭な顎が特徴だ。
 ミニデビルはランダムには入っていないモンスターで、右手に三又の槍を持っているモンスター。槍での攻撃もあるが、メインは状態低下魔法を駆使するのが特徴だ。

「まずは五階層と一階層の配置を考えましょう」

 現時点での最深部になる五階層と掴みとなる一階層。重要な二箇所の配置から考えることにした。
 一階層のレア度は5が制限だが、五階層は8になる。そこも踏まえての考えだ。

「五階層のボスはライ、そこは外せないわ」
「僕もその方がいいと思うにゃ」
「ランダムにはスラッチとゴブゴブ、それにレベル1のキラービー、マジシャン、アント、ミニデビルを配置して、オートにはスライムとゴブリンだね」
「レベル10のスラッチとゴブゴブもここに配置するのかにゃ?」

 廻のこの決断は予想外だった。ニャルバンとしては各階層のボスにレベル10まで上げたモンスターを配置するのだと思っていたからだ。

「現時点での最深部なのよ? そこに強いモンスターを置かなくてどうするのよ。オートにはランダムの中でも強いスライムとゴブリンを配置することで、同じ種族でも強いモンスターと弱いモンスターを作るわ」
「でも、他の階層はどうするのかにゃ?」
「そこも一応は考えてるわよ」

 そうして一階層についての配置を口にした。

「ボスにはレベル5のゴブリンを配置して、ランダムにはレベル1のキラービー、マジシャン、アント、ミニデビル。オートにはゴブリンを配置する」
「えっ? ランダムのモンスターをオートにしないのかにゃ? それじゃあ意外性を突けないのにゃ!」

 ニャルバンが声を上げるが、廻にも考えがあった。

「掴みの一階層で冒険者に、おや? と思わせたいのよ」
「よく分からないにゃ」
「ほとんどのダンジョンがランダムとオートを同じモンスターにして強いのと弱いのを混ぜるわよね?」
「そうだにゃ」
「当然、新しくて階層も浅いダンジョンも同じだと考えるわ」
「普通はそうですね」

 ここでロンドも相槌を打ち始める。

「だけど、実際には違うのよ。そうなれば、このダンジョンは基本とは違う、簡単に攻略できるんじゃないか? もしくは、普通のダンジョンとは違うのか? と思わせることができると思うの」

 言葉にすると確かに意外性を突いているように聞こえるが、それが本当に良いことなのかニャルバンには判断がつかなかった。
 何しろ多くの経営者が最初はセオリー通りに配置してくるので、廻のように奇をてらった配置をした人がいなかったのだ。

「誰もやらないから経験したことがない。経験できない。それって、一番の意外性にならないかな?」
「うーん、どうかにゃー」

 首を傾げるニャルバンに対して、ロンドの反応は異なっていた。

「……ありかもしれませんね」
「ロンド君!」
「そうなのかにゃ?」

 廻をチラリと見てみると、一度コクリと頷いてくれたのでロンドはそのまま話し始めた。

「僕が冒険者登録する時に講習会があったんです。そこで言われたのが、上層では弱いモンスターの中に同じ種族の強いモンスターが混ざっていると教えられました。それくらい当たり前のことと捉えられているんです。それなら、メグル様が言うように当たり前を覆す配置もありではないかと思ったんです」

 ランキング上位の冒険者からすると上層はただの通り道かもしれないが、それ以外ではやはり警戒はするだろう。
 一階層で疑問を感じたまま下層へ移動し、そこで同種族の強いモンスターが現れれば意表をつけるのではないだろうか。

「よーし、一階層と五階層はこれで決まりね!」
「にゃにゃ! それじゃあ残りの階層も決めるのにゃ!」

 そのまま話し合いは続き、残りの階層も決まっていった。
 レア度の制限は二階層と三階層は5、四階層は6である。
 ボスから決まり、二階層はキラビ、三階層はミスター、四階層はレベル1のライガー。
 ランダムも決まり、二階層と三階層の共通のモンスターはスライム、ゴブリン、キラービー。残りの一匹は二階層がミニデビル、三階層がアント。四階層にはレベル7のスライムとレベル1のキラービー、マジシャン、ミニデビルである。

「オートはどうするにゃ? ランダムに配置しているモンスターにするかにゃ?」
「二階層まではランダムのモンスターを外して、三階層からはセオリー通りにいきましょう」
「二階層までで完全に冒険者を騙すんですね?」
「その通りよ!」

 二階層のオートはアントでランダムに入っていないモンスターを配置する。
 三階層からはセオリー通りでランダムに入っているモンスターを配置する。三階層がゴブリン、四階層がスライムになった。

「――よし! これでモンスターの配置は完了かな!」
「何とか間に合ったにゃ!」
「それにしても、ダンジョンのモンスターってこうやって決まってるんですね」

 ぼそりと感想を口にしたロンドに廻も頷いていた。

「普通はこんなところ見ないもんね」
「メグル様と契約できたから見れたわけですからね。冒険者は本来ダンジョンに潜る立場ですから」
「ふっふっふー! そこでロンド君には実際に冒険者になっていただきます!」
「どういうことですか?」

 モンスターの配置を決めることも重要だったが、次の作業も同様に重要なものであり、その作業にはロンドが必須なのだ。

「私のダンジョンのモンスター配置に問題がないか、ロンド君に試してもらいたいのよ!」
「さっきもそんなことを言ってましたけど、できるんですか?」
「できるのにゃ!」

 そこに口を挟んできたニャルバンが説明してくれた。
 経営者と契約している冒険者なら事前にダンジョンに潜ることができる。そこでの感想を元に、経営者は再びモンスターの配置を変えることができる。
 ただ配置するだけではなく、実際に潜り感触を確かめることで改善点も見えてくるというものだ。

「ぼ、僕にそんな大役が務まるのでしょうか?」
「大丈夫よ! というか、ロンド君にしか頼めないから」
「メグルだとすぐに殺されちゃってお試しにならないのにゃー」
「それはニャルバンの意見だからね!」
「そ、そうなんですか? ……分かりました、本来ならこの為に僕は雇われたんだろうし、頑張ります!」
「あっ、そうだったわね! うん、よろしくね!」
「ちょっと、本当に宿屋の従業員として雇うつもりじゃないですよね!」

 本来の目的を忘れていた廻はあはは、と笑いながらごまかして話を締めくくった。
 この後はようやくダンジョンのお試しとあってややテンションが高くなっている。自分でモンスターを配置したダンジョンがロンドからどのような評価を受けるのか、楽しみな廻なのだった。
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