異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?

渡琉兎

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ダンジョン開放

おもてなし

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 戻ってきた三人を廻が労うなか、アルバスはロンドにどこが悪かったのかを指摘している。
 それをロンドも真面目に聞いており、廻はこの二人の性格は真逆だけれどうまくいくような気がしていた。

「いやー、研究対象が増えてしまって大変ですよ! どうしましょうかね!」

 一方のポポイは研究対象になったダンジョンからウキウキ気分で戻ってきている。
 アルバスもポポイには口で太刀打ちできないと諭すのを早々に諦めているので何も言わなかった。
 そして、入口から入ることのメリットを計らずも発見することができて廻としては嬉しい限りだ。

「ロンド君、アルバスさん。話し合いが終わったら換金所に行きましょうね」
「分かりました」
「はいよー」

 入口から潜って手に入れたアイテム、それらをそのまま換金することができるということだ。
 廻と契約した住民では無理だろうと勝手に思っていたのだが、試しに換金機材に入れてみるとそのままお金が出てきたのだ。
 さらに、換金したアイテムは廻の手元に残るわけだからちょっとした裏技を見つけたのだと喜んでいる。やりようによっては大金持ちになれるのではないかと考えたのだが、それはやめることにした。

 三人に危険を犯してまでダンジョンに潜れとは言えなかったのだ。
 独裁者であればやるだろう。それこそ上級冒険者を囲い入れて自らのダンジョンを踏破させることも可能なはずだ。だが、それを廻はしなかった、やりたくなかった。
 あくまでもダンジョンを試してもらう。そしてロンドとモンスターを成長させてもらう。さらに三人が納得してくれた時に限り、ダンジョンに潜ってもらっていた。

「てめえは本当に甘ちゃんだな」
「だから、てめえじゃなくて廻ですってば! 何回言えば分かるんですか」
「あはは、アルバス様もメグル様も落ち着いてくださいね」

 こうして言い合いながら換金所に向かうのもいつも通りである。
 みんなが仲良く暮らせる都市を作る。それが廻の一番の目標なので、言い合っているこの時間も廻にとっては有意義な時間の一つだった。

 換金所は平屋で横に長い造りをしていた。
 今はアルバス一人しかいないので入口から一番近い中央の窓口しか空いておらず、残りの窓口には格子が降りている。
 宿屋の従業員もそうだが、換金所で働く人手も増やしていかなければいけないと廻は考えていた。

「今日のアイテムは~……あれ? これって、ライから出たドロップアイテム?」

 昨日までには見たことのないアイテムが袋に入っているのを見て、廻は首を傾げている。
 ライから出た今までのドロップアイテムはライガーの牙や爪、毛皮などが多く、稀にポーションなどの回復アイテムがドロップすることもあった。だが、取り出したアイテムは今まで見たことのない形状をしていた。

「それは親爪だな」
「親爪?」
「ライガーの上位種、まあレベルの高いライガーを倒した時に稀に出てくるレアアイテムだ」
「レアアイテム!」

 レアという単語に反応して廻が飛び上がっているが、アルバスは冷静に説明を続けた。

「あいつは昇華もしてレベルも徐々に上がっているからな。それでレアアイテムがドロップするようになったんだろう」
「こういった素材は、鍛冶屋があれば武器を作ったりできるのよね?」
「そうだが、この都市にはいないから宝の持ち腐れだな」
「酷い! こ、これから雇う予定だもん!」

 鼻息荒く言い放った廻だが、鍛冶師と契約できなかったので、今のところ新しい人を雇う予定はない。それどころか冒険者すらもやって来ないのだ。
 地道にダンジョンに潜ってアイテムを換金して収入を得ているものの、これだけでは軍資金が底をついてしまうので早く誰かやってこないかと期待していた。

 そんなある日、経営者の部屋に聞いたことのない電子音が聞こえてきた。

 ──ピピッ、ピピッ、ピピッ。

 何事かと思い周りを見回すが、電子音を発するようなものなどあるはずもない。それでも未だに電子音は鳴っている。

「うーん……ニャルバン!」
「どうしたの──あっ!」
「そうそう、この音なんなの?」

 電子音を聞いたニャルバンの表情は嬉々としているように見えるのだが、意味が分からない廻は説明を求めた。

「この音は都市周辺に人がやってきたことを示す合図なのにゃ!」
「な、なんですって! それは本当なの!」
「本当なのにゃ!」

 話を聞くと、都市に初めて訪れる人が近づいた時に電子音は鳴るようで、人が近づくたびに鳴っていたらうるさいからそういうものかとも廻は納得していた。

「でもさぁ……外からみたジーエフって、酷く寂れた都市よねぇ」
「最初はどこもそんなものだにゃ」
「でも囲いも何もないのよ? ただダンジョン入口の近くに建物がポツポツ建っているだけだしさ」
「家とかは大工を雇う必要があるけど、自然物を造りたい場合は都市のランキングによってプレゼントされるのにゃ!」
「……ニャルバンさぁ」
「どうしたのにゃ? ど、どうしてそんな怖い顔をしているのにゃ?」
「ちょこちょこ大事なことの説明が抜けてるわよね? それって重要な情報よね?」

 じーっと見つめながら問いただす廻に、ニャルバンは視線を逸らせながらあははと笑う。

「……はぁ、もういいわよ。貰えるならそれに越したことはないし、その時に説明を求めるからちゃんと教えてよね!」
「ご、ごめんなのにゃ。ちゃんと説明するのにゃ!」
「よろしい。今は近づいてくる人に対してのおもてなしを考えなきゃいけないし、みんなにも伝えてこなきゃだわ!」

 廻はパタパタと動きながら話をしており、みんなを呼び出す為に連絡を取っていく。
 ──そして数分後には全員が経営者の部屋に集まった。

「人が来たって、本当ですか!」
「うふふ、宿屋の営業ができるかもしれませんね」
「私の作ったアイテムが飛ぶように売れるイメージが湧いてきますよー!」
「……おい、そいつは何名で来ているんだ?」

 歓喜する三人とは異なり、アルバスだけは冷静に現在の状況を確認してきた。

「どうなんだろう。ニャルバンは分かる?」
「三回連続で鳴ったから、三人なのにゃ!」
「三人、冒険者か? 冒険者ならパーティを組んでいるはずだな。そいつらの実力とかは分からないのか?」
「そこまでは分からないのにゃ」
「どうしたんですか、アルバスさん?」

 考え込むアルバスに、喜んでいた三人の視線もアルバスに集まった。

「いんや、都市の噂ってのは冒険者から広がることが多いからな。優秀なパーティだったらその広がりも早いと思ったんだが、分からないならそれはそれでいいかと思ってな」
「噂、ですか?」

 要領を得ない廻は首を傾げている。アルバスは仕方がないと言った感じで説明を始めた。

「都市ができたから勝手に人が集まる、そう思っているわけじゃないよな?」
「思ってません」
「なら、どうしたら人が集まるかって話だ」

 そこまでの話を聞いて、廻もなるほどと一度頷いた。

「冒険者は都市から都市へ、ダンジョンからダンジョンへ移動をするから、訪れた都市の情報を他の冒険者にも共有することが多い。その情報がまた別の冒険者から別の都市の住民に広がって、移住者が出てくるってのが普通の流れだな」
「それじゃあ、今回来てくれている冒険者が良い印象を持ってくれたら、また次の冒険者がやってくる可能性も、移住希望者が来る可能性もあるってことですね!」

 元々あるやる気を更に漲らせた廻は、アルバス達におもてなしを徹底しようと声を掛ける。

「おもてなしって、お前なぁ。それは宿屋がやることじゃないのか? 俺は関係ないな」
「何を言っているんですか! アルバスさんも換金所を訪れる冒険者に笑顔を振りまいてくださいね!」
「誰がそんなことするかよ」
「やってください!」
「やるかボケ!」
「ボ、ボケって言う方がボケなんですよ!」
「あは、あはは」

 二人のやり取りを見ながら乾いた笑い声を漏らすロンド。ニーナは笑顔で二人を見つめおり、ポポイはいまだに妄想の世界から戻ってきていない。

「大丈夫なのかにゃ……」

 ニャルバンだけが、不安を口にするのだった。
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