異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?

渡琉兎

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ダンジョン開放

初めての冒険者

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 ジーエフの入口を視界に収めた冒険者パーティの一人はガッツポーズを取っていた。

「よっしゃあ! 俺達が一番乗りだろ!」
「喜んでいるところ悪いが、できたばかりのダンジョンにはザコモンスターしかいないのだから喜ぶ理由にはならない。そうだろう、アリサ」
「私に言われても分からないよ」

 アリサと呼ばれた茶髪茶眼の少女魔法師は困惑顔を浮かべる。

「トーリには楽しみがないのかよ。初めてのダンジョン、初めてのモンスター、初めての冒険! それができたばかりのダンジョンでできるってんだからワクワクするのも分かるだろ?」
「知るかそんなもん。僕はカナタと違って安全に稼ぎたいんだ。それなのに新しいダンジョンに潜ろうだなんて……全く……」

 トーリと呼ばれた蒼髪蒼眼の少年祈祷師は、カナタと呼ばれた朱髪朱眼の少年剣士にぼやいている。
 彼らは全員が新人冒険者である。
 装備もトーリ以外は中古を買い集めて揃えたもので、アリサは体に合った黒のローブを身に纏っているが、手には頭の高さまである長い杖を持っている。
 カナタはぶかぶかのライトアーマーを装着し、細かな傷がついたショートソードを背負っている。

「こんな装備では一階層で躓きそうだがな」

 冷静にパーティの戦力を分析するトーリはというと、白の聖職衣に身を包み、腰には伸縮自在でオーダーメイドのロッドを下げている。
 二人に比べて装備が充実しているのは、トーリが元貴族だからだ。

「だったら俺達にも装備を買ってくれてもいいじゃないかよー」
「施すだけが正義ではないからな。カナタが人一倍働いてくれれば、それに見合うものを買ってやる」

 元貴族のトーリは、自身の財産を全て持ってきている。二人の装備を新品で買えるくらいはあるのだが、そこは現在聖職者をしている者の矜持なのか甘えさせることはしなかった。

「よっしゃ! それなら、ジーエフでモンスターを倒しまくってドロップアイテムをガッポガッポ手に入れてやるさ!」
「うんうん、そうして自分で稼いだ金で買った装備は大事にするものだぞ」
「おう! ……ん? おい、トーリ、お前が買ってくれるんじゃないのかよ!」
「金がなければな。あるなら自分で出せ」
「ひっでえ!」

 淡々と話すトーリを、カナタは前のめりになりながら睨みつける。

「でも、ここでたくさんのアイテムを手に入れられたら、私も装備を新調したいから頑張るよ」
「カナタにもアリサのような謙虚さがあればいいのだがな」
「あは、あはは」

 口喧嘩に巻き込まれそうになったアリサは乾いた笑い声を零す。
 カナタはトーリの嫌味が気にならないのかすでに意識はダンジョンに向いており、肩を回して準備運動を始めている。
 その姿を見たトーリは溜息混じりにさっさと歩き始めてしまう。
 噛み合っていない三人は、その足でジーエフへとたどり着いた。

 三人はランキング上位の都市からやってきている。そのため、ダンジョンのある場所は栄えていると勝手に思い込んでいた。
 そんな三人がジーエフを見た最初の印象、それは──

「「「ぼろっ!」」」

 である。
 開放したばかりのダンジョンはほとんどがジーエフと同じような見た目になるのだが、大都市で育ち、冒険者として新人であり、ジーエフが初めてのダンジョンなので大都市のダンジョンしか見たことがない。それならばこの感想も致し方ないのかもしれない。
 特に元貴族のトーリは荒野のど真ん中にポツンと出ている入口と、その周辺にポツポツとしか建っていない建物を見て眉間にシワを寄せていた。

「引き返すぞ!」

 声を大にしてそう告げたのもトーリだった。

「何を言ってるんだよ! 一番乗りでここまで来たのになんで引き返すんだよ!」
「ダンジョンがこんなにボロいわけないだろう!」
「も、もしかしたら、できたばかりだからとかじゃないのかな?」

 正解を言い当てているアリサの言葉を、トーリは聞こうとはしなかった。

「そんなわけあるか! ダンジョンだぞ、宝が眠るダンジョンだぞ! そんな場所がこんなにも寂れているはずがないだろう!」

 一人踵を返して来た道を戻ろうとするトーリの腕を掴み、カナタが連れ戻す。

「放さないか!」
「落ち着けよトーリ。とりあえず宿屋を取って、話を聞いてみようぜ!」
「そんなの無意味だ! 僕は行かないぞ!」
「で、でもさあ、トーリ君」

 怒鳴り散らすトーリに、おどおどしながらアリサが告げてくる。

「今から戻ると、次の都市に着く前に夜になっちゃうよ?」

 アリサの指摘通り、ジーエフの周辺にはダンジョンはおろか、ダンジョンを持たない人里すら存在していない。
 今から戻ったとしても荒野か、良くて荒野を出てすぐの森のなかで野宿をするハメになる。ダンジョン外にモンスターはいないものの、野生の獣は存在しているのだから危険極まりない行動である。

「…………くそっ!」

 悪態をつきながらカナタの手を振り払ったトーリだが、一人で引き返そうとはしなかった。
 その様子を見てホッとしたアリサは、カナタの指示通りに宿屋に向かって歩き始める。
 その間、トーリはぶすっとしたまま歩いており雰囲気は最悪、カナタともアリサとも視線を合わせることのないまま宿屋に到着した。

 ──カランコロンカラン。

 ドアが押し開けられて呼び鈴が鳴る。
 宿屋の中からは木のぬくもりを感じる温かな香りが鼻腔を通り抜けて気持ちを落ち着かせてくれる。そして出迎えてくれた宿屋の店主──ニーナの笑顔に、ぶすっとしていたトーリも表情を改めていた。

「おやおや、初めてのお客様は三名様ですね?」

 初めて、という言葉にカナタは破顔する。一番乗りだと信じていたものの、やはりジーエフの当事者から確約をもらえれば嬉しいものだ。

「私は店主のニーナと申します。それと──」

 そこまで言いかけて、奥の方から一人の少年──ロンドが顔をのぞかせた。

「はじめまして! 僕は宿屋の従業員でロンドと言います。店主は腰が悪くあまり動くのが得意ではないので、なにか申し出があれば僕までお願いします」

 礼儀正しく頭を下げてきたロンドを見て、自然と三人も頭を会釈程度に下げてしまう。

「ダンジョンには早速潜られますか? それでしたら、先に宿屋のご予約をどうぞ。まあ、他にお客様もいないので、潜ってからでも部屋は空いていますけどね」

 おほほ、と笑いながら告げてくるニーナだったが、三人は冒険者の基本通り先に宿屋を確保することにした。
 大都市ともなれば宿屋を確保するにも一苦労だと言われている。現在のジーエフであればニーナの言う通り潜ってからでも確保はできるだろうが、こういうのは地道に体へ慣れさせる必要がある。特に新人であればなおさらだ。

「店主殿、お伺いしたいのだが」

 アリサが宿帳に名前を記している間、トーリはニーナに疑問をぶつけることにした。

「何かしら?」
「こちらのダンジョンは何故これほどに寂れているのでしょうか? ダンジョンがある都市というのは、なんと言いますか、大都市だと想像していたので、これほど寂れていることはないと思うのですが?」
「そうですねぇ……皆様はダンジョンを訪れるのは初めてですか?」

 質問に対して質問を返されたので少しむっとしてしまうトーリだったが、そこは口には出さずに返答する──顔には出ていたが。

「初めてだ。だが、故郷のダンジョンを見たことはある」
「では、故郷の都市は大きな都市だったのね?」
「その通りです。僕達がいた都市はランキング213位のドラゴンテールですから」

 少し自慢げに答えるトーリに、ニーナは笑みを崩さずに頷く。

「そうですか。それでしたら、思い違いをするのも致し方ありませんね」
「思い違い、ですか?」

 自慢げだった表情が、今度は不信感に変わる。
 コロコロと表情を変えるトーリに内心で苦笑をしつつも、ニーナはできたばかりのダンジョンについて教えてあげた。

「できたばかりのダンジョンというのは、その全てがジーエフのように寂れているものですよ」
「そ、そうなのですか?」

 冒険者になるものなら知っていて当然のことなのだが、トーリをはじめカナタとアリサも知らないようで首を傾げていた。

「ダンジョンランキングが上がれば上がるほど、周囲を整える特別なアイテムを与えられて、徐々に大きな都市に発展していくのです。皆様のご出身であるドラゴンテールも、元はこのような荒野や沼地、森の中だった可能性もあるのですよ」

 三人がへぇー、と呟きながら聞いているのを見て、ロンドは同じ新人冒険者として心配になってしまった。
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