異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?

渡琉兎

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ダンジョン開放

心配と監視

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 冒険者登録をする以前からダンジョンについて調べていたロンドは、できたばかりのダンジョンの状況を知っていた。だが、勉強をしている、していないにかかわらず冒険者登録をする時の講習会で習うことである。
 そのことを知らないとなれば、心配するのも当然かもしれない。

「あの、失礼かと思いますが、冒険者登録をする時の講習を受けられましたか?」
「当然だろう。だが、途中で飽きてきてしまったからさっさと切り上げて登録を終わらせた」
「き、切り上げたって、そんなことできるんですか?」
「あー、すまん。トーリって、元貴族なんだよね。それで、わがままが通っちゃったんだよ」
「あんな講習会なんて、無意味だからな」

 天を仰ぎ、右手で顔を覆うロンド。
 講習会の最初は本当に初歩の初歩を教えていくので飽きる人は多い。だが、後半になるにつれ重要な内容が含まれてくる。
 トーリは講習会序盤で早々とリタイア、そして貴族特権を利用して講習会を受けたことにして登録を終わらせたのだ。

「えっと、二人はちゃんと受けたんだよね?」
「あー、そのー、えっとー……」
「……まさか、二人とも受けてないの?」
「トーリ君がさっさと行くぞって言って、私達も講習会を受けずに登録できちゃったんだ」

 一瞬の沈黙の後、ロンドの盛大な溜息が飛び出した。

「貴様! き、客に対して溜息とはなんだ、溜息とは!」
「あー、いえ、その、すいません。僕は従業員ではあるんですけど、本職は冒険者なんです。だから、講習会が大事なんだってことを知っているんです」
「えっ! 君、冒険者なの──うわっ!」

 何故かテンションが上がっているカナタの前にずいっと体を入れてロンドを睨みつけるトーリ。

「冒険者だから何だって言うんだ? 宿屋の従業員なんかやっているくらいだから、さぞ弱いんだろうなあ」
「ちょっと、トーリ君、どうしたの?」
「そうだぞトーリ、お前らしくもない」

 慌てて諌めようとする二人には耳を貸さずに、トーリはまくしたてるようにロンドに詰め寄る。

「俺は見下されるのが大嫌いなんだ! 従業員の分際で、僕を見下すんじゃないぞ!」

 ロンドの心配を見下しだと曲解してしまったトーリは、部屋番号が刻まれた鍵を受取さっさと歩いていってしまう。
 慌ててついて行くカナタとアリサは、すれ違いざまに両手を合わせてごめん、という仕草を見せてくれた。
 ロンドも自分がいらぬ心配をしてしまったと思ったので苦笑を浮かべながら謝っていた。

 三人の姿が見えなくなった後、ロンドはニーナにも謝っていた。

「あら、どうしてロンド君が謝るのかしら?」
「いえ、宿屋の評判が悪くなるんじゃないかと思いまして」
「だけれど、ロンド君はあの三人を心配していたのでしょう?」
「はい」
「それなら、いいではないですか。ロンド君の心配が届くといいですね」
「……はい」

 届いていないような気がする、そう思ったロンドなのだが口にすることはなかった。口にしてしまうと、心配でついていきそうになると分かっていたからだ。
 そんなロンドの思いを知ってか知らずか、心をかき乱す存在が現れた──廻である。

「ちょっとロンド君! 今の子達大丈夫かな? 危なさそうだよね!」
「え、えぇ、そうですね」

 廻も宿屋を手伝うために奥にいて、ロンドの次に出ていく予定だったのだが、トーリがヒートアップしてしまったせいもありタイミングを逸してしまったのだ。
 自分のダンジョンで誰かが死ぬのが嫌な廻は、三人の様子を見て慌てふためいていた。

「……ロンド君、ついて行ってくれない?」
「いや、それでは意味がないかと。彼らは彼らで初めてのダンジョンですからね。他の人の手は借りたくないと思いますよ」
「そ、そうだけどさぁ……」

 廻がオロオロしている姿に苦笑を浮かべていると、奥の方から再びトーリを先頭に三人が現れた。

「早速潜ってきてやる! こんなダンジョン、すぐに制覇してやるさ!」

 強気な発言を残して、三人は宿屋を出ていった。

「…………あ、ああああ、あれは絶対にフラグだよ! 何か起こる前のフラグだって!」
「フラグ? フラグってなんですか?」
「あー、そうだった! 通じないんだったね!」

 ロンドは頭を抱える廻に首を傾げている。
 そこに怪訝な表情でやってきたのはアルバスだ。

「おい、さっきのガキ共はもうダンジョンに行っちまったのか?」
「アルバス様。そうなんですが、少し危ないんですよね」
「あん? どういうことだ?」

 ロンドは先程までのやり取りをアルバスに説明すると──

「そりゃあ死ぬだろうな。確実に」
「あぁー! やっぱりー!」

 熟練の冒険者だったアルバスの言葉を受けて、廻は大きく仰け反りながら頭を抱えてしまった。

「ダンジョンなんてそんなもんだろう。潜る冒険者全員を心配していたらキリがないぞ」
「そうですけどー、あの子達は新人ですしー、最初のダンジョンですしー、ここで死んでほしくないんですよー……はっ!」

 ブツブツ呟く廻だったが、突然ピタリと黙り込んでしまう。
 その様子に三人は顔を見合わせていた。

「……ついて行くのはよろしくないんだよね?」
「ま、まあ、そうですね」
「……あの子達を監視しながら尾行するってのはどうかな?」
「……へっ?」

 予想外の提案にロンドは素っ頓狂な声を出してしまう。
 それでも廻は提案を止めなかった。

「だから、同行するんじゃなくて、尾行して、本当に危ないと思ったら助けに入るのよ!」
「で、でも、それだとまたトーリさんに怒られるんじゃ」
「命あっての物種よ! 助けられたのに怒るようだったら、アルバスさんからガツンと言ってもらうからさ!」
「なんで俺なんだよ!」

 嫌な役回りの時に名前が飛び出したので、アルバスが怒鳴った。

「だって、私が言っても迫力ないんだもの。ニーナさんは優しいおばさまだし、アルバスさんしかいないじゃないですか」
「子守りなんてまっぴらゴメンだね」
「ロンド君も潜るんだから、あの子達の子守りをするというよりは、ロンド君を守る名目でどうかしら?」
「……そこを説明している時点でダメだと思うんだがな」
「そうですか? 理由があれば何でもいいじゃないですか」

 あっけらかんと言い放つ廻に、大きな溜息を漏らすアルバス。
 それでも廻との付き合い方を自分なりに噛み砕いていることもあり、渋々了承した。

「だが、俺はガキ共を助けないからな。ガキ共を助けるのはあくまでも小僧だ」
「そして、ロンド君を助けるのはアルバスさんってことですね」
「……もういい。ったく、女ってのはなんでこうも口が回るのかね」

 ブツブツ文句を言っているが、隻腕は背中に下げている大剣の柄を撫でている。どういった理由であれ、ダンジョンに潜るのは楽しいのだろう。
 ロンドもニーナに断りを入れて、準備をしてくると家に戻っていった。

「おい、小娘。ガキ共の場所は分かるのか?」
「名前で呼んでくださいよ! えぇっと、経営者の部屋マスタールームに戻れば見れますけど、二人がダンジョンに潜った後は通信できませんよ?」
「潜る前にだいたいの場所が分かればなんとかなる」

 頼もしい発言を聞いて廻はすぐに経営者の部屋へ戻っていった。

「アルバス様、おまたせしました!」
「よし、行くぞ」
「二人とも、気をつけてくださいね」

 ニーナの言葉を背に、二人は宿屋を出てダンジョンに向かう。
 その途中、何故か涙目のポポイが近づいてくると──

「わ、私の道具が売れませんでしたー!」

 という訳の分からない嘆きを聞き流し、入口に到着した。

『──あーあー、二人とも聞こえますかー』
「聞こえてるぞ」
『──三人はルーム五、正規ルートを外れて西に向かってるわ』
「なるほどな。壁を伝って進んでいる感じだろう」
「それでは、行き止まりから戻ってくる時にかちあいませんか?」

 思考を巡らせること数秒、アルバスが口を開いた。

「ルーム三の手前通路で様子を見る。小娘、ガキ共の様子はどうだ?」
『──苦戦はしてるけど、問題はなさそうかな』
「一階層で苦戦とか、どれだけお坊ちゃまなんだよ。だがまあ、問題ないなら戻ってくるだろ」
「了解です」

 アルバスの指示にロンドが返答すると、二人はダンジョンの入口から下に続く階段へ視線を向けた。

「さて、今日もダンジョンに潜りますか!」
「はい!」

 舌なめずりをするアルバスと、神妙な面持ちのロンド。対象的な表情を浮かべる二人は慣れた様子でダンジョンへと降りていった。
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