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第2章:新たな出会い
こんなはずでは
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一時の大忙しが過ぎ去ると、ジーエフには再び過疎期が訪れた。
できたばかりのダンジョン。という言葉は宣伝文句としては絶大なのだが、一度訪れた冒険者が何度も潜るかと言われると、それはダンジョンの出来がどうしても関わってきてしまう。
現状、レア度に問題を抱えるジーエフだと継続して潜り続けようとする中級、及び上級の冒険者は少なかった。
そして、悲しいことにレア度が低い割には手応えがあるため新人冒険者が潜るにも難易度が高いダンジョンになってしまっている。
当初はうまくいったと喜んでいた廻なのだが、今現在では──
「あぁー、あれは大失敗だったのかー」
と、宿屋の食堂にある机で突っ伏していた。
「おやおや、相当お疲れのようですね」
「ニーナさーん。ダンジョンが中途半端に難しくなっちゃったよー」
「そうなのですか? それは大変ですね」
両手を伸ばして頬を机にだらしなくくっつけたまま、廻は意味のない嘆きをニーナへぶつけている。
そこに現れたのはアルバスだ。
「だったらもっとモンスターの配置を考えろ!」
「だってー。レアガチャが引けないんじゃあ、レア度の低いモンスターを組み合わせるしかないし、それで現状なんですよ? もうどうしたらいいのか分かりませんよー」
「て、てめえなぁ……はぁ、もういいわ」
ああ言えばこう言う廻に、アルバスも溜息を隠すことをしない。
実際のところアルバスも暇なのだ。だからこそ廻にどうにかするようにと言いに来たのだが、自身もどうするべきか答えを持ち合わせていないため詰め寄ることができなかった。
「神様からの特典で見た目は少しだけマシになったけど……」
「まあ、見た目を良くして人が増えたら苦労はしねえよな」
初めてのダンジョン侵入特典や来訪者数特典、五階層攻略特典などいくつかの特典を手に入れていた廻は、オブジェクトの設置を行っている。
特典の中にガチャ券がなかったのは残念だが、それでも設置する時は楽しく設置していたのだ。それもあり当時はダンジョン経営が上手くいっていると思っていた。
まさか、出だし好調でいきなり人が来なくなるとは夢にも思っていなかった。
「私がダンジョンに潜ってモンスターのレベルを上げる手助けができたらいいんだけどなぁ」
「まあ、小娘なら一瞬で殺されるだろうな。しかもオートのゴブリンに」
「酷い! いや、事実だけどもっと優しく言ってくださいよ!」
「死に直結することを優しくなんて言えるか!」
ごもっともな意見に廻はしゅんと萎れて再び机に突っ伏してしまう。
「あー、どうじよー!」
「……俺がダンジョンに潜れたら早いんだがなぁ」
「うぅぅ、でもアルバスさんには換金所の仕事がありますから、仕方ないですよぉ」
冒険者が来ていなかった前までならアルバスがダンジョンに潜っていても問題はなかったが、今は多少なりとも冒険者が訪れている。
戻ってきた時に換金所が使えないというのが一番あってはならないことなのだ。
「かといってロンド君一人だと心配だしなぁ」
「今の小僧ならジーエフの五階層くらい攻略できそうだがな」
「アルバスさんはそう言いますけど、やっぱり心配なんですよ! 何かあってからじゃ遅いんですからね!」
「道具屋の小娘はどうしたんだ?」
「ポポイさんはそもそも冒険者じゃありません! アルバスさんがいない中でダンジョンに潜らせるなんてできませんよ!」
それもそうかと納得したアルバスは何も言わなかった。
結局、モンスターを昇華や進化させるにもレベルアップが必要だが、それに必要な冒険者がポツポツとしか来てくれなくなっている。
ロンド一人で潜ろうとしても廻が心配してしまい一階層までしか潜らせてくれない。
過保護と言われればそれまでなのだが、アルバスが言う通り死に直結することなのだから過保護になってもいいではないかと廻は思っていた。
「ところで、その小僧はどうしたんだ? いつもなら俺達よりも先に来てるはずだろう?」
「うーん、私も見てないんですよね。ニーナさん、今日ロンド君を見ましたか?」
朝が早いロンドは、二人が食堂を訪れるといつも先に食事を摂っているので気になったのだろう。アルバスの疑問の答えを、廻はニーナに求めた。
「ロンド君ですか? 彼なら普段よりも早い時間に朝食を摂って、そのまま出かけましたよ」
「何処に行くか言ってましたか?」
「いいえ。聞いていませんけど、この辺りには行くところなんてないですからダンジョンに潜っているのではないでしょうか?」
「えっ! ……ま、まさかぁ」
廻はロンドが単独で潜る時には必ず許可を取るようにと言い含めている。それを破るとは思えないのだが──
「小僧ならやりそうだな」
「そうですか? ロンド君ですよ?」
廻の感想とは異なり、アルバスの感想は『やりそう』である。
真面目な性格のロンドが何故言いつけを破ってまでダンジョンに潜るのだろうか。
「この状況をどうにかしたいと小僧なりに考えているんだろう。だったら、モンスターのレベル上げの為に内緒で潜るってのもあるんじゃないか?」
そこまで言われると、廻もあり得るんじゃないかと思い始めてしまう。
「……ちょっと経営者の部屋に戻ります! ア、アルバスさんはここにいてくださいね!」
慌てた様子で目の前から消えてしまった廻を見て、アルバスは深い溜息を漏らす。
「うふふ、アルバスさんも大変ですね」
「……茶化してるんですか? 俺は子守なんてまっぴらごめんなんですけどね」
「それでも放ってはおけないのでしょう?」
心の確信を突くようなニーナの発言に、アルバスは黙ったまま頭を掻いている。
いかに腕っぷしが強いアルバスでも、言葉ではニーナにも廻にも勝てないのだ。
「アルバスさんでできないことは私が受け持ちますから、色々と相談してくださいね」
「……助かる」
性根は優しい性格のアルバスである。言葉は悪くても子供姿の廻やロンド、それに新人冒険者のカナタ達のことは気になっていた。
だからこそ助けたし、これからも手助けしたいと思っているのだが、上手く言葉にできないことが多い分、誤解されることもまた多い。
そんなアルバスを見つめながらニーナが微笑んでいると、廻が食堂に戻ってきた——慌てた表情のまま。
「アルバスさん! い、今すぐにダンジョンに行ってください!」
アルバスの予想通り、ロンドは一人でダンジョンに潜っていたようだ。
「それはいいが、換金所はどうするんだ? 冒険者が少ないとは言っても、いないわけじゃないんだぞ?」
「えっと、それは、あー……あー! 私が受付します!」
「小娘が? できるのか?」
「なんとかします!」
鼻息荒く言い張る廻に苦笑するアルバスは、ダンジョンに移動しながら話を聞いていく。
「小僧は苦戦でもしていたのか?」
「知りません! ただダンジョンにいたから慌てて戻ってきたんですよ!」
「だったら急ぐ必要はなさそうだな」
「なんでですかー!」
両手をブンブンと振りながら大声を上げる廻を気にすることなくアルバスは大股で進んでいく。
「何処まで潜っていたんだ?」
「よ、四階層、です!」
「なんだ、凄いじゃないか」
「凄いですけど、一人で、行き過ぎです! って、アルバスさん速い!」
「なんだ、急いで行ってほしいんだろう?」
「ぐ、ぐぬぬぬぬっ!」
いつもの調子で廻をからかいながらも、普段から背負っている愛剣の柄を撫でながらダンジョンの入り口に到着した。
「もし分からないことがあったら、三〇分以内にアルバスが戻ってくるからって言って待たせておけ」
「えっ! 三〇分ですか?」
驚きの声を上げる廻に対して、アルバスはニヤリと笑って告げる。
「本気を出せば、五階層でレア度2までしかいないダンジョンなんてそんなもんだ」
そう言いながら、アルバスはいつもの大股でダンジョンへと潜っていった。
できたばかりのダンジョン。という言葉は宣伝文句としては絶大なのだが、一度訪れた冒険者が何度も潜るかと言われると、それはダンジョンの出来がどうしても関わってきてしまう。
現状、レア度に問題を抱えるジーエフだと継続して潜り続けようとする中級、及び上級の冒険者は少なかった。
そして、悲しいことにレア度が低い割には手応えがあるため新人冒険者が潜るにも難易度が高いダンジョンになってしまっている。
当初はうまくいったと喜んでいた廻なのだが、今現在では──
「あぁー、あれは大失敗だったのかー」
と、宿屋の食堂にある机で突っ伏していた。
「おやおや、相当お疲れのようですね」
「ニーナさーん。ダンジョンが中途半端に難しくなっちゃったよー」
「そうなのですか? それは大変ですね」
両手を伸ばして頬を机にだらしなくくっつけたまま、廻は意味のない嘆きをニーナへぶつけている。
そこに現れたのはアルバスだ。
「だったらもっとモンスターの配置を考えろ!」
「だってー。レアガチャが引けないんじゃあ、レア度の低いモンスターを組み合わせるしかないし、それで現状なんですよ? もうどうしたらいいのか分かりませんよー」
「て、てめえなぁ……はぁ、もういいわ」
ああ言えばこう言う廻に、アルバスも溜息を隠すことをしない。
実際のところアルバスも暇なのだ。だからこそ廻にどうにかするようにと言いに来たのだが、自身もどうするべきか答えを持ち合わせていないため詰め寄ることができなかった。
「神様からの特典で見た目は少しだけマシになったけど……」
「まあ、見た目を良くして人が増えたら苦労はしねえよな」
初めてのダンジョン侵入特典や来訪者数特典、五階層攻略特典などいくつかの特典を手に入れていた廻は、オブジェクトの設置を行っている。
特典の中にガチャ券がなかったのは残念だが、それでも設置する時は楽しく設置していたのだ。それもあり当時はダンジョン経営が上手くいっていると思っていた。
まさか、出だし好調でいきなり人が来なくなるとは夢にも思っていなかった。
「私がダンジョンに潜ってモンスターのレベルを上げる手助けができたらいいんだけどなぁ」
「まあ、小娘なら一瞬で殺されるだろうな。しかもオートのゴブリンに」
「酷い! いや、事実だけどもっと優しく言ってくださいよ!」
「死に直結することを優しくなんて言えるか!」
ごもっともな意見に廻はしゅんと萎れて再び机に突っ伏してしまう。
「あー、どうじよー!」
「……俺がダンジョンに潜れたら早いんだがなぁ」
「うぅぅ、でもアルバスさんには換金所の仕事がありますから、仕方ないですよぉ」
冒険者が来ていなかった前までならアルバスがダンジョンに潜っていても問題はなかったが、今は多少なりとも冒険者が訪れている。
戻ってきた時に換金所が使えないというのが一番あってはならないことなのだ。
「かといってロンド君一人だと心配だしなぁ」
「今の小僧ならジーエフの五階層くらい攻略できそうだがな」
「アルバスさんはそう言いますけど、やっぱり心配なんですよ! 何かあってからじゃ遅いんですからね!」
「道具屋の小娘はどうしたんだ?」
「ポポイさんはそもそも冒険者じゃありません! アルバスさんがいない中でダンジョンに潜らせるなんてできませんよ!」
それもそうかと納得したアルバスは何も言わなかった。
結局、モンスターを昇華や進化させるにもレベルアップが必要だが、それに必要な冒険者がポツポツとしか来てくれなくなっている。
ロンド一人で潜ろうとしても廻が心配してしまい一階層までしか潜らせてくれない。
過保護と言われればそれまでなのだが、アルバスが言う通り死に直結することなのだから過保護になってもいいではないかと廻は思っていた。
「ところで、その小僧はどうしたんだ? いつもなら俺達よりも先に来てるはずだろう?」
「うーん、私も見てないんですよね。ニーナさん、今日ロンド君を見ましたか?」
朝が早いロンドは、二人が食堂を訪れるといつも先に食事を摂っているので気になったのだろう。アルバスの疑問の答えを、廻はニーナに求めた。
「ロンド君ですか? 彼なら普段よりも早い時間に朝食を摂って、そのまま出かけましたよ」
「何処に行くか言ってましたか?」
「いいえ。聞いていませんけど、この辺りには行くところなんてないですからダンジョンに潜っているのではないでしょうか?」
「えっ! ……ま、まさかぁ」
廻はロンドが単独で潜る時には必ず許可を取るようにと言い含めている。それを破るとは思えないのだが──
「小僧ならやりそうだな」
「そうですか? ロンド君ですよ?」
廻の感想とは異なり、アルバスの感想は『やりそう』である。
真面目な性格のロンドが何故言いつけを破ってまでダンジョンに潜るのだろうか。
「この状況をどうにかしたいと小僧なりに考えているんだろう。だったら、モンスターのレベル上げの為に内緒で潜るってのもあるんじゃないか?」
そこまで言われると、廻もあり得るんじゃないかと思い始めてしまう。
「……ちょっと経営者の部屋に戻ります! ア、アルバスさんはここにいてくださいね!」
慌てた様子で目の前から消えてしまった廻を見て、アルバスは深い溜息を漏らす。
「うふふ、アルバスさんも大変ですね」
「……茶化してるんですか? 俺は子守なんてまっぴらごめんなんですけどね」
「それでも放ってはおけないのでしょう?」
心の確信を突くようなニーナの発言に、アルバスは黙ったまま頭を掻いている。
いかに腕っぷしが強いアルバスでも、言葉ではニーナにも廻にも勝てないのだ。
「アルバスさんでできないことは私が受け持ちますから、色々と相談してくださいね」
「……助かる」
性根は優しい性格のアルバスである。言葉は悪くても子供姿の廻やロンド、それに新人冒険者のカナタ達のことは気になっていた。
だからこそ助けたし、これからも手助けしたいと思っているのだが、上手く言葉にできないことが多い分、誤解されることもまた多い。
そんなアルバスを見つめながらニーナが微笑んでいると、廻が食堂に戻ってきた——慌てた表情のまま。
「アルバスさん! い、今すぐにダンジョンに行ってください!」
アルバスの予想通り、ロンドは一人でダンジョンに潜っていたようだ。
「それはいいが、換金所はどうするんだ? 冒険者が少ないとは言っても、いないわけじゃないんだぞ?」
「えっと、それは、あー……あー! 私が受付します!」
「小娘が? できるのか?」
「なんとかします!」
鼻息荒く言い張る廻に苦笑するアルバスは、ダンジョンに移動しながら話を聞いていく。
「小僧は苦戦でもしていたのか?」
「知りません! ただダンジョンにいたから慌てて戻ってきたんですよ!」
「だったら急ぐ必要はなさそうだな」
「なんでですかー!」
両手をブンブンと振りながら大声を上げる廻を気にすることなくアルバスは大股で進んでいく。
「何処まで潜っていたんだ?」
「よ、四階層、です!」
「なんだ、凄いじゃないか」
「凄いですけど、一人で、行き過ぎです! って、アルバスさん速い!」
「なんだ、急いで行ってほしいんだろう?」
「ぐ、ぐぬぬぬぬっ!」
いつもの調子で廻をからかいながらも、普段から背負っている愛剣の柄を撫でながらダンジョンの入り口に到着した。
「もし分からないことがあったら、三〇分以内にアルバスが戻ってくるからって言って待たせておけ」
「えっ! 三〇分ですか?」
驚きの声を上げる廻に対して、アルバスはニヤリと笑って告げる。
「本気を出せば、五階層でレア度2までしかいないダンジョンなんてそんなもんだ」
そう言いながら、アルバスはいつもの大股でダンジョンへと潜っていった。
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