異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?

渡琉兎

文字の大きさ
66 / 183
ランキング対策

不安

しおりを挟む
「──アルバスさん?」

 突然の地震に、廻は言い知れない不安を感じていた。
 そしてアルバスのことが頭をよぎる。
 何かあったのだろうか。そんなことを考えながら、残り少なくなってきた冒険者の列をさばいていく。
 きっと大丈夫。きっと大丈夫だ。心の中で何度も呟く。
 内心では今すぐにでも経営者の部屋マスタールームに戻ってダンジョン内を確認したいと心底思っていたのだが、アルバスとの約束を破るわけにはいかないと言い聞かせて黙々と対応を続けていく。
 それでも拭えない不安。背中を伝う汗がなぜ止まらないのかが分からない。
 チラリとアークスへ視線を向ければ、あちらはいまだに多くの冒険者が列を作っているので地震にすら気づいていないようだった。

(あと少し、あと少しで終わりなんだ。お願いアルバスさん、無事でいてください!)

 心の中で祈りを捧げながら最後の冒険者の対応を終えた廻はすぐにアークスへ声を掛けた。

「アークスさん! 私は一旦、席を外すので換金希望の冒険者が来たらすぐに戻るって伝えていてください!」
「えっ! あ、分かりました!」

 アークスの返事を聞いた廻は、その場から経営者の部屋へ移動した。
 突然消えた廻にアークスやその場にいた冒険者達も驚きの表情を浮かべていた。

 ※※※※

 慌てた様子で戻ってきた廻に驚いたニャルバンは目をパチクリしながら廻に問い掛けた。

「ど、どうしたんだにゃ?」
「ニャルバン! ダンジョンの様子を見せてちょうだい!」
「ダンジョンにゃ?」
「早く!」
「わ、分かったにゃ!」

 廻の様子を見てニャルバンも慌ててモニターにダンジョンの内部を映し出す。

「……ここじゃない……ここでもない……もしかして、もう一〇階層まで行ったのかな?」
「だ、誰を探しているのかにゃ? ロンドだったら宿屋に──」
「アルバスさんが一人でダンジョンに潜っているのよ!」
「アルバスかにゃ? だったら心配はいらないと思うにゃ」
「私もそう思っているけど……なんだかすごく不安になったの。さっきの地震、ニャルバンは気づいた?」
「地震かにゃ? 僕は経営者の部屋から出られないから分からないのにゃ」

 首を傾げるニャルバンから視線をモニターに戻して一〇階層のボスフロアを映し出した。

「…………嘘、何よ、これ」
「何が起こったのにゃ?」

 一〇階層のボスフロアは壁が黒く焦げ、地面には大きなクレーターが出来上がっている。
 天上からは衝撃に耐えきれなかった破片がパラパラと落ちてきており、爆発の威力がどれほどのものだったのかを物語っていた。

「……ア、アルバスさんは? アルバスさんはどこなの!」
「アルバスがあそこにいるのかにゃ?」
「絶対いるわ! あの人が本気を出したら一〇階層なんて簡単に踏破しちゃうんだから!」

 いまだに残る砂煙のせいでモニター越しでは見えないところも多い。
 それでも廻は目を凝らしてアルバスの姿を探した。

「……待って、嘘、あれってまさか!」

 壁際にできた一際大きな瓦礫の山。
 そこから見えたのはアルバスが愛用している大剣の刀身だった。

「アルバスさん!」
「まさか、アルバスがレア度3にやられたのかにゃ?」
「ちょっとニャルバン! そんな悠長なことを言っている場合じゃないわ! 早く助けにいかないと!」
「メグルは少し落ち着くのにゃ! アルバスはレア度5のモンスターも倒したことのある元冒険者ランキング1位の人間なのにゃ! 絶対にこれくらいで倒れるわけがないのにゃ!」
「だって! でも実際にあそこに……あそこ、に……あ、あれ?」

 モニターを指差しながら怒鳴っていた廻は、瓦礫の山が動いていることに気がついた。
 最初はとても小さい動きだったが徐々に大きくなっていくと、最終的には見えていた刀身が激しく躍動して瓦礫の山を吹き飛ばし、そこにアルバスの姿が現れた。

「…………ア、アルバズざーん!」
「な、何で泣いてるのにゃ!」
「だっで、無事だったんだもん」
「アルバスは大丈夫だって言ったのにゃ」
「うん、うん、ぞうだったね!」

 廻を落ち着かせる為に冷えた水を用意してその手に直接握らせる。

「早く戻って換金所を守るのにゃ! そして戻ってきたアルバスに褒めてもらうのにゃ!」
「うん! ありがとうニャルバン!」

 水を一気飲みした廻はすぐに経営者の部屋から換金所へと移動した。

「なんだか、とても忙しいのにゃ」

 ニャルバンは廻の心配性に呆れながらも、そんな経営者がいてもいいかもしれないと思っていた。

 ※※※※

 廻が換金所に戻ってから三〇分が経った頃、ようやくアルバスが戻ってきた。

「おかえりなさい! アルバスさ……ん?」
「おう、うまくやってたみたいだな」

 廻の言葉が止まったのにはわけがある。
 モニターでアルバスを見ていたのは瓦礫の山から姿を現した時だけで、周囲にはまだ砂煙が舞っていたので見た目がどのようになっているのかなんて分からなかった。
 今のアルバスの姿を見て、廻は青ざめてしまったのだ。

「だ、だだだだ、大丈夫ですか! めっちゃ怪我してるじゃないですか!」
「あん? これくらい怪我ってもんでもないぞ。冒険者をやってた頃はこれ以上の怪我なんて日常茶飯事だったからな」
「はあ? 何言ってんですか! そんなに血を……血を……し、滴らせながら……はうあぁ」
「メ、メグル様!」

 人の血に慣れていない廻がふらりと体を揺らしたので慌ててアークスが両肩を支える。
 その様子を見たアルバスは溜息をつきながら頭を掻いていた。

「あー、そのなんだ、すまんかったな」
「……いえ、無理を言ったのは私ですから、私の方こそすいませんでした」
「……ちょっと体を流してくる。もう少しだけ受付頼むわ」
「……はい」

 アルバスは右腕を肩で回しながら換金所を出て家に向かった。
 その背中を眺めていた廻は再び泣き出しそうになっていたのだが、両肩を支えているアークスの手に力が込められたのを感じて振り返る。

「冒険者は皆があんな感じです。傷つきながらも生きていることを喜び、お酒を飲み交わしてひとしきり楽しんだら、またダンジョンへ潜ります。フェロー様も引退したとはいえ、やはり冒険者ということですよ」
「……うん、ありがとう、アークスさん。もう大丈夫」

 一歩前に踏み出して振り返り、正面からアークスを見つめて頭を下げる。
 経営者がただの住民に頭を下げるなんて考えられなかったアークスは心底驚いていた。

「……やっぱり、経営者が頭を下げるのはおかしいかな?」
「そう、ですね。少なくても俺は見たことがありません」
「そっか。でも私は私なりの経営者を目指そうと思ってるからいいんだ」
「頭を下げることもですか?」
「今日の時点でたくさん頭を下げてますから!」

 冒険者を相手に何度も頭を下げてダンジョンに潜ってくれるようお願いをしていた廻である。
 ただ、今回アークスに対して頭を下げたのはお願いではなく感謝を示す為だ。

「お礼をする時って、普通は頭を下げるよね?」
「えっと、そう、ですかね?」
「そうだよ。だから私は頭を下げるんだ。相手にちゃんと感謝を伝えたいから」
「……俺にも、感謝してくれているんですか?」
「もちろん! 今だって励ましてくれたし、ジーエフに来てくれたこと、二杉ふたすぎに負けないよう一緒になって頑張ってくれていること、全部に感謝してるんだからね」
「……俺も、メグル様や皆さんに感謝しています。問題を運んできてしまった俺なんかの為にこんなにまで動いてくれて、本当にありがとうございます」

 アークスも廻と同じように頭を下げる。

「俺は、ジーエフで鍛冶師として暮らしていきたい。まだまだ迷惑を掛けてしまいますが、どうかよろしくお願いします!」

 そして自分の胸の内を告白した。
 廻を見て、ここで暮らす住民を見て、アークスはジーエフで暮らしていきたいと心の底から思うようになっていた。
 恐る恐る顔を上げたアークスの視界に飛び込んできたのは──

「もちろん! アークスさんはもうジーエフの住民だよ!」

 満面の笑みを浮かべる廻だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

処理中です...