異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?

渡琉兎

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勝負の結果

誤解と和解

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 廻はジーンの言葉と二杉のリアクションを見て、これが事実なのだと判断した。

「二杉さん! ジーンさんのことを大事にしているとか言っておきながら、替え時とはどういうことですか!」
「いや待て! これは何かの誤解だ!」
「誤解ではありません! フタスギ様は確かに仰いました!」
「ジーンも落ち着け! 確かに言いはしたが、それは──」
「言ったんですか! 今確かに言いましたね! 自分の口ではっきり──」
「まずは小娘が黙れ!」

 ──ごちんっ!

 興奮していた廻の脳天にアルバスのげんこつが炸裂した。
 あまりの音に二杉とジーンも目を丸くして廻を見ている。

「い、痛いじゃないですか、アルバスさん!」
「お前が話を引っ掻き回すからだろう! とりあえず二人の話を聞け!」
「で、でも、二杉さんは確かに言ったって──」
「だから話を聞けと言っているだろう! とりあえず黙れ、いいな!」
「……はぃ」

 経営者にげんこつを落としたアルバスにも驚いていたのだが、住民であるアルバスの言葉に従っている経営者の廻にも驚いていた。
 本来ならば経営者が住民に指示を出したり叱り飛ばす立場だからだ。

「……あー、それでだ。そっちの経営者様はどうしてそんなことを言ったんだ? 誤解だと言っていたが、何か理由があるんだろう?」

 アルバスに促されて、二杉は困惑しながらもジーンの誤解を解く為に口を開いた。

「あ、あの時に口にしたのは、ジーンのことでは一切ない」
「……そ、それでは、何を言っていたのですか?」
「あれは──都市の入口に設置している大扉の話だ」
「…………へっ?」
「いや、あれの建付けが悪くなっていただろう? 住民からギーギー音がしてうるさいと。いくら油を差しても直らないし、それならいっそ取り換えてしまった方がいいと思ってだな……」
「……それで、替え時?」
「……すまん、あの時に言う言葉じゃなかったな」

 あの時、というのは二杉が勝負の条件にアークスを戻すということと、アルバスをオレノオキニイリに移住させると言ったからだ。
 ジーンはその際に反発しており、二杉の発言を自身のことと思っても仕方ないと反省していた。

「……えーっと、ということは、これで解決?」
「その通りだ。小娘が引っ掻き回すから変に時間が掛かったがな」
「……す、すいません」
「うふふ、メグルさんはジーンさんのことを心配していたからこそではないですか」
「……私のことを、心配?」

 他の都市の経営者に心配されるなんてことはあり得ない、というのがこの世界に暮らす人間の考え方である。そもそも暮らしている都市の経営者にも心配されることが少ないのだから当然なのかもしれない。

「だって、最初に会った頃からジーンさんの表情があまり冴えなかったから、少し心配で……ごめんね、逆に掻き回しちゃって」

 そしてすぐに謝ってくる経営者もまた新鮮だったのだろう。
 二杉との間には信頼があるから分かるのだが、廻とは敵対していた相手同士なのだ。

「……み、三葉みつば
「……」
「……おい、三葉廻!」
「あっ! 私ですね。名字で呼ばれることがなかったから忘れそうでした」
「……すまなかったな、騒がしてしまって。アルバスにも嫌な思いをさせてしまった」
「俺は別に構わんぞ。小娘にもいい勉強になっただろうしな」
「アルバスさんの言い方はどうかと思いますが、私も気にしていませんから。ジーンさんと仲直りができてよかったですね」

 二人の態度を見て、二杉は次にニーナへ視線を向ける。

「ニーナの言葉も、今になってようやく理解ができた。俺は自分の発言がどれだけの影響を及ぼすのか、それを考えていなかったんだな。本当にすまなかった」
「出過ぎた言葉でした。ですが、あの時の言葉がフタスギ様の中で何かを変えたのなら、言ったかいはありましたね」
「……ここの住民は、皆がこのような人達なのか?」

 敵対していた経営者に掛ける言葉ではない。それにもかかわらずアルバスもニーナも二杉に対して普通に言葉を掛けてくれる。
 廻という経営者がいるからこそなのだが、そのことを二杉はまだ知らない。

「そうですよ。私は住民みんなが笑顔で暮らせる都市を目指しています。私も都市に色々と関わってますし、だからこそ分からなかったことを知ることができました」
「……そうだな。俺もこの世界のことは今でも知らないことが多すぎる」
「知らないなら、知っている人に習えばいいんです」
「……習う、か。そういえば、この世界に来てからは気持ちも大きくなって、聞くことはあっても習うことはなかったかもしれない」
「聞くだけと習うでは大きく違いますからね」

 相手から忠告されたり、こうした方がいいという意見では、ただ聞くだけになることが多い。
 自分の意思で質問し、それに対して答えをもらい、その答えを実行する。
 ただ聞くだけではなく、習い実行することが大事なのだ。

「……あのー、それとですねぇ」
「なんだ、どうした?」
「一応大事なことなので確認なんですけど、アークスさんの移住は問題なく認めていただけるんですよね?」

 廻はアークスのことが一番気になっていた。
 そもそもの勝負のきっかけがアークスの移住だったので、勝負に勝利したとはいえそこは言質を取っておきたかったのだ。

「当然だろう。勝負に負けて、約束を反故にするほど俺も落ちぶれてはいないぞ」
「……よ、よかったー! アルバスさん、やりましたよ!」
「おう。これでジーエフはさらに良くなるだろうな」
「……なあ、俺がこんなことを聞くのはお門違いかもしれないが、アークスはうまくやっているのか?」

 二杉の質問に、廻はアークスがどれだけ優秀であり、アルバスの大剣も研いでみせたことを説明した。
 どれだけ凄いのか二杉にはあまり伝わらなかったが、ボルキュラの名前を聞いて驚いていたジーンの反応から、ようやくアークスの腕前を認識したようだ。

「……俺は、もったいないことをしたみたいだな」
「若い人にも腕の良い鍛冶師はいるんですよ」
「そうだな。都市に戻ったら、鍛冶師達の腕前をもう一度確認するのも悪くないか」

 二杉にも思うところがあったのか、これからの経営に今日の経験を活かす為に考え始める。そして、こんな提案を口にした。

「三葉、俺がこんなことを言える立場じゃないんだが──友好ダンジョン都市を結ばないか?」

 二杉の提案を受けた廻は──

「……友好ダンジョン都市って、なんですか?」

 初めて聞く言葉に首を傾げながらそう答えた。
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