異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?

渡琉兎

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勝負の結果

再びの来訪

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 二人が戻ってくると、アークスはすぐにやってきた。その表情は緊張に強張っているようにも見える。

「メグルさん、どうでしたか?」

 じっと見つめるアークスに対して、廻は右手を突き出してブイサインを作り出した。

「圧勝です!」
「……そ、それは、本当ですか?」
「本当だぞ。オレノオキニイリが997位、ジーエフは960位だ」

 廻とアルバスの言葉を受けて緊張の糸が切れたのか、アークスはその場にへたり込むと目からは自然と涙が零れ落ちた。

「……よかった……本当に、よかった」
「これもアークスさんが頑張ってくれたおかげです、ありがとうございます!」
「お、お礼を言うのは俺の方です! 問題を持ち込んだ俺の事を見捨てずに、必死になって助けてくれて……本当に、本当にありがとうございました!」
「これからは鍛冶屋も造っていくんだ、しっかり働いてもらうからな」
「はい!」

 両手を握りしめて力強く返事をするアークス。
 笑顔で頷いていた廻だったが、一つの疑問が浮かんできてアルバスに向き直る。

「……なんでアルバスさんが仕切ってるんですか!」
「小娘じゃあ無理だろう?」
「む、無理じゃないですよ! ただ、アドバイスが必要なだけです!」
「それを無理って言うんじゃねえのか?」
「違いますよ!」

 結局、最後は廻とアルバスの言い合いになると食堂にいた全員が大爆笑となった。
 これがジーエフだと、廻はとても喜んだ。
 不本意ではあるものの、アルバスもこれが変わり者の経営者が作る都市なんだろうと納得していた。

 しばらくはこの嬉しさを噛みしめていいだろう。アークスは特にそうだ。
 自分のせいでと心の内にずっと思っていたのだから、その想いはひとしおだろう。
 廻自身も今は大いに喜びを伝えている。そうすることで周囲に廻という経営者はこういう人間なんだと知らせることができる。
 だが、すぐに対応するべき案件が迫ってくるだろう。
 そして──それはその日の夕方にやってきた。

「──貴様! いったい何をした!」

 やってきたのはオレノオキニイリの経営者である二杉ふたすぎだった。前回ジーエフを訪れた時に同行していたジーンも一緒である。
 二杉の来訪をニャルバンから教えられていた廻は、アルバスとニーナを伴って入口で待ち構えていたのだ。
 顔を真っ赤にして怒鳴り散らす二杉とは異なり、ジーンの表情はどこか冴えない様子だった。

「何をしたって、みんなと一緒にダンジョンを開放したり、住民を豊かにしただけですよ?」
「ふざけるなよ! オレノオキニイリは村なんだぞ、集落のジーエフに負けるはずないじゃないか!」
「でも、ランキングはもう出てますよ?」

 廻が言う通り、結果は出ているのだ。二杉が何をわめこうとも、その結果が覆されることはあり得ない。

「アークスさんだけじゃありません。他の住民にも満足してもらえる都市作りを私はしています。ランキングにはダンジョンの影響が一番大きいのかもしれませんが、私はそれ以上に住民の満足度を高めています」
「まさか、それだけで俺様が負けるわけがないだろう!」
「そうでしょうね。でも、今言ったのは私の信念です。住民が満足してくれれば笑顔が増えて、ジーエフを訪れる冒険者にも良い雰囲気が伝わり、冒険者から他の都市にジーエフの雰囲気が伝わってくれます。そうなればダンジョンにも冒険者がたくさん来てくれますし、モンスターも成長してくれます。私はそうやって、ランキングを上げました」

 ランドンのことは口にしなかった。
 それは経営者である廻の口から言うべきことではないと分かっているからだが、それ以上に二杉にも分かってほしかった。
 住民を──自身を信頼している人物を満足させてほしいと。

「……二杉さんは、ジーンさんの心を満足させていますか?」
「──!」

 突然名前を出されたジーンは弾かれたように顔を上げて廻を見る。その表情には困惑と同時に何故、という疑問が浮かんでいた。

「貴様、何を言っているんだ? ジーンの心を満足だなんて──」
「二杉さんはジーンさんの言葉をちゃんと聞いたことがありますか? ジーンさんのことを思って言葉を選んだことがありますか? 今のジーンさんの表情を見て、何も感じないんですか?」

 廻の言葉を、ジーンは言い返すこともせずにただ見つめながら聞いている。

「ジーンは俺を信頼してくれている! だから俺がそんなことをする必要なんてないんだよ!」
「それは自己中心的な考え方です! どれだけ信頼を置いていても、相手からの目に見えた信頼がなければ不安にもなりますよ!」
「ジーンのどこが不安だと言うんだ!」
「だったら振り返ってジーンさんの表情を見てください!」
「黙れ! 貴様は何を言って──」

 振り返った二杉は、ジーンの表情を見て言葉を失ってしまった。
 その表情は、まるで泣くのを我慢している子供のように、顔をくしゃくしゃにしていたからだ。

「……ど、どうしたんだ、ジーン?」
「……えっ? な、何がですか? 私は、いつも通り、ですよ?」

 誤魔化そうとするジーンだが、その表情は普段の表情に戻ることはなく、それどころかどんどんと瞳が潤んでいく。
 自分でも感情のコントロールが効かなくなっているのか、ジーンは俯いてしまった。

「二杉さん、ジーンさんのことを大事に思っているんですよね?」
「当然だろう! ジーンは俺が最初に契約した冒険者なんだからな!」
「だったら、そんなジーンさんにそんな顔をさせちゃダメですよね?」
「ぐっ! そ、それは……」

 二杉もジーンの表情に思うところがあるのだろう、今までは何を言っても言い返してきた言葉を引っ込めてジーンのことを見つめている。
 そして、出てきた言葉はジーンを思っての言葉だった。

「ジーン、何か言いたいことがあれば言ってくれ」
「……」
「俺は、お前に何かしてしまったのか? 何かしたなら教えてくれないか?」
「……」
「言ってくれないと、分からないこともあるぞ?」

 そこまで言葉を積み重ねて、ジーンはようやく顔を上げると、ゆっくりと口を開いた。

「……フタスギ様は、私を切り捨てるおつもりですか?」
「……はあ? な、何を言っている?」
「……だって、言っていたではないですか」
「ちょっと待て、俺はそんなこと一言も言っていないぞ!」

 ここで何やら不穏な雰囲気になった二人を見て、廻はアルバスとニーナに振り返ったのだが、二人も困惑顔を浮かべている。
 二杉とジーンの間で何かしらやり取りがあったことは事実なのだが、二杉自身は身に覚えがないようだ。
 だがジーンの表情を見る限りでは相当悩まされていたのだろう、くしゃくしゃになっていた表情は悲壮感漂う表情へと変貌していた。

「フタスギ様はあの時、仰いました!」
「いつのことだ!」
「ジーエフから立ち去る帰り道です! と!」
「なっ!」

 二杉はここまで言われて、初めて事態を把握した。
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