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第3章:外の世界
看板と天職
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連れてこられたボッヘルは、廻から事情を聞いていたものの、力になれそうにないと肩を落としていた。
というのも、やはり固定魔法は持っているが付与魔法は持っていないからだ。
看板をダンジョン内に固定するならば、ボッヘルも一緒にダンジョンへ潜らなければならないのだが、それも難しいと話す。
「……俺、閉所恐怖症なんだよ」
「……なんとまあ、そうでしたか」
廻の力ない返事に、ボッヘルはさらに肩を落としてしまった。
「あわわ、ごめんなさい! 付与魔法が貴重なものだってことは聞いてたから、別に失望しているとかではないんですよ!」
「いや、分かっているんだ。分かっているんだが、ダンジョンに潜れないというのも、やはり男としては恥ずかしいというかね……」
あはは、と苦笑しているボッヘルの肩をアークスが叩いている。
話が振り出しに戻ったこともありどうしようかと廻は思っていたのだが、ボッヘルはただ落ち込みに来たわけではなかった。
「一応、解決策になるかは分からんが、一つ案ならあるぞ」
「なんですか! 教えてください!」
身を乗り出して聞いてきた廻に後退りながら、ボッヘルは驚きの提案を口にした。
「……リリーナも固定魔法を使える。そして、固定魔法なら俺よりも上手い」
「えっ……まさかボッヘルさん、女性のリリーナさんをダンジョンに潜らせるつもりですか!」
「むしろ潜らせてやってほしい」
「……どういうことですか?」
ボッヘルの妙な言い回しに、廻は険しい表情で首を傾げている。
「リリーナは、元冒険者なんだ」
「「「……あぁー、なるほど」」」
その答えを聞いた全員が、納得の表情で頷いていた。
「しかし、どうして元冒険者が大工をやってるんだ?」
「それに、本職だったボッヘルさんよりも固定魔法が上手だなんて」
アルバス、アークスの順で疑問を口にする。
「リリーナは、元々大工の家に生まれたんだよ。それで、本来なら勉強や実践を繰り返して習得する固定魔法を、生まれながらに持っていたんだ」
「なっ! ……それって、天職ってことじゃないのか?」
「……転職?」
「天職な」
廻はイントネーションの違いでアルバスにツッコミを入れられて唇をとんがらせている。
「天職っていうのは、神様がその職業に就きなさい、ていうお告げのようなものなんだ」
「生まれながらに持っていると、どうしてそれが天職なるの?」
「普通はあり得ないからだね」
「そうなんですか?」
「勉強と実践を何度も繰り返して、研鑽を積んで初めて習得できるのが魔法なんだ」
誰でも魔法が使えるわけではないと、廻はこの時に初めて知った。
初めて見た魔法はアリサのファイアボールだった。次にトーリの敏捷強化。
内心では廻も魔法を使えるのではないかと思っていた反面、すぐには使えないのだと知って落ち込んでいた。
「生まれた時から持っているということは、神様から与えられたものと考えられているんです」
「でも、それならどうしてリリーナさんは大工じゃなくて冒険者をやっていたんですか?」
廻の疑問に、その場にいた全員の視線がボッヘルに向かう。
「……リリーナは、あれでも行動派なんだ。決められたレールの上を進んでいくのが大嫌いで、大工以外のこともやってみたいと言って冒険者になったんだ」
「それはまた、大胆な行動ですね」
「よ、よく両親が許しましたね」
「許さなかったさ。だけど、半ば家出みたいに都市を出て、別の都市で冒険者になって戻ってきた時は驚いたけどな」
「それはそうですよね。でも、あんなにほんわか清楚なリリーナさんが冒険者をやっていたなんて、驚きです」
廻だけではなく、アークスやアルバスまでもが驚きを隠せなかった。
「……だが、本当にいいのか? 俺の場合は冒険者を引退しても鍛えていたが、リリーナはそうじゃないだろう」
「いや、あいつも鍛えていましたよ」
「……そ、そうなのか?」
今は大工一筋だと思っていたアルバスは呆れ声である。
というのも、アルバスの場合は冒険者を引退してやることがなかったので鍛えていたのだが、リリーナは大工として大成しているし、天職でもある。
そちらに本腰を入れても十分やっていけるだけに、あり得ないと思ってしまったのだ。
「……本当なら、冒険者を続けたかったと思うんだよな」
「なら、どうして辞めたんだ?」
アルバスの疑問に、ボッヘルは頬を掻きながら口を開いた。
「……えっと、俺の為、だな」
「なんだ、惚気か」
「凄いですね! 愛する人の為に好きなことを辞められるなんて! その決断力、私はリリーナさんを尊敬します!」
「「……んっ?」」
アルバスと廻で大きく反応が異なり、二人は顔を見合わせて首を傾げている。
アークスだけは無言のまま成り行きを見つめていた。
「ま、まあ、そんなところかな。でも、俺としては好きなことを続けて欲しいっていう気持ちもあって、もしダンジョンに潜れる機会があれば潜っていいぞって言ってはいるんだが、なかなかなぁ」
「なるほど。それなら今回の私の思いつきは願ったり叶ったりってことですね」
「たまたまだがな」
「もーっ! どうしてアルバスさんはわざわざ突っかかってくるんですかね!」
「別に突っかかってないんだが?」
「ああ言えばこう言いますね!」
「ちょっと、二人とも、落ち着いてくださいよ」
どうしてこうも言い合いになるのかと、アークスは苦笑しながら間に入る。
ボッヘルは二人の言い合いを頻繁には見ていないので驚きの表情だった。
「とにかく! まずはリリーナさんに意思確認! それで問題なければ看板が出来上がり次第、アルバスさんとロンド君達の誰かと一緒に潜ってください!」
「俺が潜るのか?」
「当然じゃないですか! 万全を期すならアルバスさんは必須です!」
「それは、俺からも頼みたいです」
「……まあ、そのつもりだったからいいんだがな」
ボッヘルにまで言われてしまうと、冷やかすことはできないと素直に返事をする。
その態度に頬を膨らませる廻だったが、ここで時間を費やすわけにはいかないとすぐにボッヘルへと向き直った。
「それじゃあボッヘルさん、リリーナさんのところに行きましょう!」
「そうだな」
「最初からリリーナさんに話をしておけばよかったんじゃないか?」
「ま、まさか元冒険者だったなんて知らなかったんですよ。ボッヘルさんにも移動しながら話していましたから、リリーナさんは知りませんし」
「そうか。話はあっちでするんだろう? なら、俺も行くとしようか」
「俺は看板を作っておきますね。文章はあとからメグルさんが考えてくれるんですよね?」
「うん! どれくらいでできるかな?」
「まあ、ただの看板ですし、夜までにはできると思いますよ。大きさの指定とかありますか?」
アークスの質問に、廻は身振り手振りでサイズ感を伝えると、苦笑しながらアークスは了承した。
「それじゃあ、出来上がったら声を掛けますね」
「夜だったら宿屋にいると思うから、ごめんだけどよろしくね」
「それじゃあ、リリーナさんのところに行くか」
「今は家にいるはずだよ」
アークスと別れた廻達は、そのままジレラ夫妻の自宅へと向かった。
というのも、やはり固定魔法は持っているが付与魔法は持っていないからだ。
看板をダンジョン内に固定するならば、ボッヘルも一緒にダンジョンへ潜らなければならないのだが、それも難しいと話す。
「……俺、閉所恐怖症なんだよ」
「……なんとまあ、そうでしたか」
廻の力ない返事に、ボッヘルはさらに肩を落としてしまった。
「あわわ、ごめんなさい! 付与魔法が貴重なものだってことは聞いてたから、別に失望しているとかではないんですよ!」
「いや、分かっているんだ。分かっているんだが、ダンジョンに潜れないというのも、やはり男としては恥ずかしいというかね……」
あはは、と苦笑しているボッヘルの肩をアークスが叩いている。
話が振り出しに戻ったこともありどうしようかと廻は思っていたのだが、ボッヘルはただ落ち込みに来たわけではなかった。
「一応、解決策になるかは分からんが、一つ案ならあるぞ」
「なんですか! 教えてください!」
身を乗り出して聞いてきた廻に後退りながら、ボッヘルは驚きの提案を口にした。
「……リリーナも固定魔法を使える。そして、固定魔法なら俺よりも上手い」
「えっ……まさかボッヘルさん、女性のリリーナさんをダンジョンに潜らせるつもりですか!」
「むしろ潜らせてやってほしい」
「……どういうことですか?」
ボッヘルの妙な言い回しに、廻は険しい表情で首を傾げている。
「リリーナは、元冒険者なんだ」
「「「……あぁー、なるほど」」」
その答えを聞いた全員が、納得の表情で頷いていた。
「しかし、どうして元冒険者が大工をやってるんだ?」
「それに、本職だったボッヘルさんよりも固定魔法が上手だなんて」
アルバス、アークスの順で疑問を口にする。
「リリーナは、元々大工の家に生まれたんだよ。それで、本来なら勉強や実践を繰り返して習得する固定魔法を、生まれながらに持っていたんだ」
「なっ! ……それって、天職ってことじゃないのか?」
「……転職?」
「天職な」
廻はイントネーションの違いでアルバスにツッコミを入れられて唇をとんがらせている。
「天職っていうのは、神様がその職業に就きなさい、ていうお告げのようなものなんだ」
「生まれながらに持っていると、どうしてそれが天職なるの?」
「普通はあり得ないからだね」
「そうなんですか?」
「勉強と実践を何度も繰り返して、研鑽を積んで初めて習得できるのが魔法なんだ」
誰でも魔法が使えるわけではないと、廻はこの時に初めて知った。
初めて見た魔法はアリサのファイアボールだった。次にトーリの敏捷強化。
内心では廻も魔法を使えるのではないかと思っていた反面、すぐには使えないのだと知って落ち込んでいた。
「生まれた時から持っているということは、神様から与えられたものと考えられているんです」
「でも、それならどうしてリリーナさんは大工じゃなくて冒険者をやっていたんですか?」
廻の疑問に、その場にいた全員の視線がボッヘルに向かう。
「……リリーナは、あれでも行動派なんだ。決められたレールの上を進んでいくのが大嫌いで、大工以外のこともやってみたいと言って冒険者になったんだ」
「それはまた、大胆な行動ですね」
「よ、よく両親が許しましたね」
「許さなかったさ。だけど、半ば家出みたいに都市を出て、別の都市で冒険者になって戻ってきた時は驚いたけどな」
「それはそうですよね。でも、あんなにほんわか清楚なリリーナさんが冒険者をやっていたなんて、驚きです」
廻だけではなく、アークスやアルバスまでもが驚きを隠せなかった。
「……だが、本当にいいのか? 俺の場合は冒険者を引退しても鍛えていたが、リリーナはそうじゃないだろう」
「いや、あいつも鍛えていましたよ」
「……そ、そうなのか?」
今は大工一筋だと思っていたアルバスは呆れ声である。
というのも、アルバスの場合は冒険者を引退してやることがなかったので鍛えていたのだが、リリーナは大工として大成しているし、天職でもある。
そちらに本腰を入れても十分やっていけるだけに、あり得ないと思ってしまったのだ。
「……本当なら、冒険者を続けたかったと思うんだよな」
「なら、どうして辞めたんだ?」
アルバスの疑問に、ボッヘルは頬を掻きながら口を開いた。
「……えっと、俺の為、だな」
「なんだ、惚気か」
「凄いですね! 愛する人の為に好きなことを辞められるなんて! その決断力、私はリリーナさんを尊敬します!」
「「……んっ?」」
アルバスと廻で大きく反応が異なり、二人は顔を見合わせて首を傾げている。
アークスだけは無言のまま成り行きを見つめていた。
「ま、まあ、そんなところかな。でも、俺としては好きなことを続けて欲しいっていう気持ちもあって、もしダンジョンに潜れる機会があれば潜っていいぞって言ってはいるんだが、なかなかなぁ」
「なるほど。それなら今回の私の思いつきは願ったり叶ったりってことですね」
「たまたまだがな」
「もーっ! どうしてアルバスさんはわざわざ突っかかってくるんですかね!」
「別に突っかかってないんだが?」
「ああ言えばこう言いますね!」
「ちょっと、二人とも、落ち着いてくださいよ」
どうしてこうも言い合いになるのかと、アークスは苦笑しながら間に入る。
ボッヘルは二人の言い合いを頻繁には見ていないので驚きの表情だった。
「とにかく! まずはリリーナさんに意思確認! それで問題なければ看板が出来上がり次第、アルバスさんとロンド君達の誰かと一緒に潜ってください!」
「俺が潜るのか?」
「当然じゃないですか! 万全を期すならアルバスさんは必須です!」
「それは、俺からも頼みたいです」
「……まあ、そのつもりだったからいいんだがな」
ボッヘルにまで言われてしまうと、冷やかすことはできないと素直に返事をする。
その態度に頬を膨らませる廻だったが、ここで時間を費やすわけにはいかないとすぐにボッヘルへと向き直った。
「それじゃあボッヘルさん、リリーナさんのところに行きましょう!」
「そうだな」
「最初からリリーナさんに話をしておけばよかったんじゃないか?」
「ま、まさか元冒険者だったなんて知らなかったんですよ。ボッヘルさんにも移動しながら話していましたから、リリーナさんは知りませんし」
「そうか。話はあっちでするんだろう? なら、俺も行くとしようか」
「俺は看板を作っておきますね。文章はあとからメグルさんが考えてくれるんですよね?」
「うん! どれくらいでできるかな?」
「まあ、ただの看板ですし、夜までにはできると思いますよ。大きさの指定とかありますか?」
アークスの質問に、廻は身振り手振りでサイズ感を伝えると、苦笑しながらアークスは了承した。
「それじゃあ、出来上がったら声を掛けますね」
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