異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?

渡琉兎

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第3章:外の世界

ロンドの剣

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 翌日、廻はライガーの親爪と魔石を手に持ち経営者の部屋マスタールームを後にする。
 その足でまずはアークスのところに向かい、手の空く時間があるかを聞いてみた。

「ヤニッシュさんの剣ですか?」
「昨日のダンジョンで欠けちゃったみたいでさ」
「剣が欠けるって……ここにそんな強いモンスターがランドン以外にいるんですか?」

 アークスの疑問に廻がモニター越しに見ていた光景を説明すると、とても大きな溜息を漏らしていた。

「そんなことをしたら、剣が欠けるのも当然ですよ」
「だよねー。作る方としたら溜まったもんじゃないよねー」
「大方、固定魔法の強さを確認したかったんだと思いますけど、ロンドの剣は安価な物だと思いますし、固定魔法を使ったのがリリーナさんじゃあ、結果は目に見えてますよ」

 アークスが使う固定魔法ならロンドでも動かすことはできたかもしれない。だが、天職であるリリーナが使う固定魔法なら無理だとはっきりと口にした。

「アルバスさん、分かってたんじゃないかしら」
「ヤニッシュさんにとってはもらい事故でしたね」

 苦笑しながら話を進める二人だったが、アークスは少し考えるような仕草を見せると、すぐに廻へ向き直る。

「開店準備も終わってますし、今からか……閉店してからなので、それだと夜になっちゃいますね」
「ロンド君も早い方がいいかもしれないから、すぐに確認してくるね! 素材は置いてていいかな?」
「構いませんよ。ところで素材は──」
「これだよ! それじゃあまた後でね!」
「あ、はあ。えっ、魔石! ちょっと、メグルさん! メグルさーん!」

 驚くアークスの呼び掛けに笑顔で手を振りながら、廻はロンドの自宅へと走って行った。

「……これ、何の魔石だろう。それが分からないと、構想が立てられないんだよなぁ」

 見た目だけではライガーの魔石だとは分からず、魔石を使った鍛冶の場合はモンスターのレア度に合わせて作らなければならない。

「……モンスター予想でもしながら待っとこうかな」

 教えてもらってから構想を練るのであれば、開店に間に合わないかもしれない。
 アークスは、ダンジョンのモンスターを思い出しながら、魔石のモンスター予想を始めるのだった。

 ※※※※

 ロンドの家のドアをノックすると、すぐに返事が聞こえてきて開かれる。
 すでに起きていたのだろう、寝癖がついている等はなく、普段の装いをしたロンドが出てきた。

「あれ? メグル様、おはようございます」
「おはよう! ロンド君は朝が早いんだね」
「朝稽古をしてますから。それで、今日は朝からどうしたんですか?」
「昨日話したじゃない。新しい剣だよ!」
「あー、そういえばそうでしたね」

 テンションの高いメグルとは異なり、少し困った顔をしているロンド。
 新しい剣が手に入るのにどうしたのだろうと、廻は首を傾げてしまう。

「その、貴重な素材を使ってもらうのは嬉しいんですが、お金か足りるか心配で。なんだったら、アークスさんが打った既製品でも──」
「お金? いらないいらない。プレゼントするわよ」
「ダ、ダメですよ! 換金した時の金額見ましたよね? 5000ゴルですよ? 給料五ヶ月分の価値があるんですよ!」

 ロンドの言い分はもっともなのだが、廻はお金に頓着するつもりはない。むしろ、住民に還元したいと考えている。

「でも、私が持っていても意味がないし、誰かに使ってもらわないと素材もかわいそうじゃない。それに、ロンド君にはお世話になりっぱなしだから、これくらいわね」
「こ、これくらいって……」
「それに、私がケチったせいでロンド君に何かあったら、それこそ私の気が狂っちゃうわよ。今できる最高の装備をする、それが一番だわ」

 ロンドは、最後の一言に何も言えなくなってしまった。
 アルバスにも言われたことがある。最善の準備をしてダンジョンに挑むべきだ、と。
 廻の言葉は最善の準備に通ずるものがあり、駆け出しとはいえ、やはり冒険者ならば今てにすることができる最高の装備を見逃すわけにはいかないと考え直した。

「……そ、それじゃあ、分割で払いま──」
「いりません! これは、私がロンド君に投資するんです!」
「……投資、ですか?」
「そう、投資。だから、ロンド君は新しい武器でジーエフのためにたくさん働いてもらうんだからね」
「……まあ、それならお返しできる、かな?」

 お返し、という言葉に廻は苦笑したものの、納得してくれたのであればそれでよしとする。

「それじゃあ、アークスさんのところに行こうか」
「はい。……メグル様」
「どうしたの?」
「ありがとうございます」
「……こちらこそ」

 面と向かって言われると照れ臭い。そう感じながらも、廻もロンドの目を見て笑顔で返す。
 二人は少し早足で、アークスの鍛冶屋へ向かった。

 ※※※※

 鍛冶屋に戻ってきたアークスは、開口一番質問を口にした。

「この魔石って、ライガーの魔石ですか?」
「そうだよ」
「えっ、伝えてなかったんですか?」
「うん。……えっ、伝えてた方がよかったの?」

 それほど必要性を感じていなかったことを二人から聞かれたので、廻はたまらず不安になってしまう。

「えっと、できたら教えててほしかったです。モンスターの力が凝縮されたものなので、モンスターによっては適した形だったりがあるんですよ」
「そ、そうだったんだ。ごめんなさい」

 素直に頭を下げる廻の姿に慣れてしまった二人は、そのまま話を進めていく。

「まあ、知ってたらよかった、くらいなので気にしないでください。それに、ライガーの親爪があったので予想はできましたし」
「……ありがとう」

 顔を上げてお礼を言われたので、アークスは軽く微笑み視線をロンドに向ける。

「それじゃあ剣を打っていきたいんだけど、まずはヤニッシュさんの剣を見せてもらえますか?」
「僕の剣ですか? でもこれ、中古の安物ですよ?」

 困惑しながらも、ロンドは剣を抜いてアークスに手渡す。

「武器は使い手のことを語ってくれるからね。言葉を重ねるのも大事だけど、こうして使い込まれた武器を見るのも大事なんだ」

 切っ先を上に向けて刃、刀身、鍔から柄まで、前後左右、角度を変えながらじっくりと眺め、観察していく。
 五分ほどが経過した時、アークスが息を吐き出しながら剣をロンドに返した。

「……うん、とても丁寧に使われているね。手入れもされているし、欠けなければあと一年は問題なく使えただろうね」
「へぇー。そんなことまで分かるんだね」
「鍛冶師ならこれくらいはみんなできますよ。……それと、ヤニッシュさん」
「なんですか?」

 表情を引き締め直し、アークスがロンドに確信を持って質問を口にした。

「これ、だいぶ使い難かったんじゃないですか?」
「えっ? そうなの、ロンド君?」

 何をどう判断したのか分からない廻の視線は、アークスとロンドを行き来している。
 質問を投げ掛けられたロンドは、頬を掻きながら頷いた。

「……そうですね。僕にはちょっと長いかなって思ってました」
「やっぱり。刃の消耗に偏りが見られたから、そうじゃないかと思ったよ」
「偏りですか?」
「鍔に近い部分から中央付近、それと切っ先付近は消耗が激しいんだけだ、中央から切っ先に向けて少しだけなんだけど、刃を使えてない場所がある」
「えっ!」
「たぶん、ヤニッシュさんの使いにくい部分なんだろうね。そういった部分をなくして、無駄なく刃を使えるように打つのが僕の仕事だな」

 たった一振りの剣を見ただけで、アークスはロンドに合った刃長を見極め、その通りに打つと宣言した。

「よ、よろしくお願いします!」
「任せてよ。混ぜる素材も考えているから、結構等級の高い武器に仕上がるはずだ」

 笑顔のアークスは、ライガーの親爪と魔石とは別に、一つの鉱石をカウンターに載せた。
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