異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?

渡琉兎

文字の大きさ
118 / 183
ダンジョン攻略・オレノオキニイリ

一二階層

しおりを挟む
 一二階層のボスモンスターであるレッドホーネットは、目的のモンスターの一匹である。
 四枚翅を震わせて空を飛び、毒針を飛ばして攻撃してくる。
 キラービーが派生進化したモンスターということもあり戦い方は似ているのだが、属性攻撃として炎攻撃を持っている。
 毒針だけではなく針の先端から飛び出す炎攻撃にも注意が必要なモンスターだ。

「僕が先行しますが、相手は空を飛ぶモンスターなので気を抜かないでくださいね」
「はい!」

 一二階層に来るまでの間にロンドとエルーカの関係性には変化が起きていた。
 常に怖がっていたエルーカも積極的にモンスターを倒すようになっており、ロンドの言葉をしっかりと聞くようになっている。
 一方のロンドもエルーカへの声掛けを続けており、自身の知識をフル活用してモンスターの特徴を教えていた。

「キュルルルルッ!」
「毒針来ます!」
「はい!」

 ロンドの合図で左右に分かれた二人が立っていた地面に毒針が突き刺さる。
 キラービーは自らが突っ込んできたのだが、レッドホーネットは毒針を射出することができる。
 そして、体内で即座に毒針が生成されて連続射出も可能になっていた。

「はあっ!」

 横移動から進行方向を一気に変えて直進していくロンド。
 レッドホーネットは迎え撃つ構えで毒針を向けて炎を放出する。
 上方から斜め下に放出された炎に対して、ロンドはさらに加速すると地面すれすれまで態勢を落として駆け抜ける。
 髪の毛を焦がしながらも炎を回避したロンドはライズブレイドを振り下ろす。

「キュララ!」

 接近を許したレッドホーネットは制空権を持っている。即座に上昇してライズブレイドを回避する。

「せいやああああっ!」
「ギュララ!」

 そこに飛び込んできたのはエルーカだった。
 短槍を限界まで突き出すと、穂先がレッドホーネットの外装を捉えてわずかながら傷を付けた。

「ギラアアアアッ!」

 怒りの咆哮を上げたレッドホーネットは天井近くまで上昇すると、毒針の雨を降らせ始めた。
 魔法が無ければレッドホーネットの独壇場となる攻撃手段に、ロンドはとあるアイテムを取り出した。

「これでどうだ!」

 青い液体が入ったガラス瓶をレッドホーネットめがけて投げつける。
 しかし、空を自由に飛び回ることができるレッドホーネットに命中させるのは困難で、簡単に回避されてしまう。
 勢いよく天井にぶつかったガラス瓶が割れると中の液体が外気に触れた。

「凍てつけ──氷柱瓶アイスボトル!」

 ロンドが投げつけたガラス瓶は、ポポイお手製の氷柱瓶だった。
 外気に触れた液体が即座に冷気を発して白い靄を作ったかと思えば、一気に氷へと変化していく。
 白い靄に包まれていたレッドホーネットは異変を察知してなりふり構わず靄から抜け出そうと加速したのだが、無傷で脱出することはできなかった。
 四枚あるうちの一枚の翅が凍結し、空中でバランスを崩してしまう。
 徐々に下降してきたレッドホーネットを見逃す理由はどこにもなく、ロンドは別のアイテムを取り出して地面めがけて投擲。

かげい」
「ギャララッ!」

 地面に落ちてきたレッドホーネットの影めがけて投擲されたのは、こちらもポポイお手製のアイテムである影縫い。
 影を縫い付けて相手の動きを阻害するポポイが開発したジーエフ大人気のアイテムは、レッドホーネットを空中で縫い留めてしまう。
 そこにロンドとエルーカが同時に飛び込んできた。

「「はああああっ!」」

 刃と穂先が同時にレッドホーネットを斬り裂き、貫き、悲鳴を上げる暇もなく白い灰へ変えてしまった。

「……か、勝てた?」
「エルーカさんのおかげです」

 笑みを浮かべてロンドがそう口にすると、エルーカは口を開けたまま呆けてしまった。

「……私の、おかげですか?」
「もちろんです。僕一人ではこうは上手く倒せませんでした。エルーカさんが奇襲を仕掛けてレッドホーネットの警戒心を高めてくれたから、氷柱瓶を使うこともできたんです」
「……私、一二階層には数えるくらいしか来れていないんです。それも、ジーンさんや他の冒険者について行くだけで、自分から何かをしたことなんてありませんでした」

 自分で握りしめる短槍を見つめながらぽつぽつと言葉を落としていく。

「ジーンさんに守られて、みんなに守られて、今度はロンドさんに守られるのかって思ってたんですけど……」
「一緒に協力して、もっと下層へ行きましょう」
「はい!」

 自信をつけてきたエルーカは元気よく返事をすると、深紅の針を拾ってロンドへ手渡した。

「これで、目的のアイテムを一つ手に入れましたね」
「次は一五階層のバラクーダですね」
「……一五階層」

 エルーカの進出階層は一四階層が最高であり、一五階層は当然ながら未踏の地である。
 自信を得たとしても恐怖を無くすことができるはずはない。

「大丈夫ですよ」
「……ロンドさん」
「危なくなったらさっさと逃げる!」
「……へっ?」

 突然の大声にエルーカは素っ頓狂な声を出してしまった。

「命より価値のあるものはない。これが、アルバス様の教えなんです」
「命、ですか?」
「はい。どんな約束をしていても、命を守るためなら破っても構わない。生きて帰ってくることが大事なんだって。だから、危なくなったらさっさと逃げてしまえばいいんですよ」
「でも、それだと素材が……」
「アークスさんも、僕たちが大けがをして手に入れた素材で好きな人にプレゼントを渡すだなんて、嫌だと思いますよ?」

 苦笑しながらそう口にしたロンドに、エルーカも笑みを返す。

「……確かにそうですね。私なら嫌かもしれません」
「そうでしょ? だったら逃げるが勝ちです。その時には他の素材で代用してもらいましょう」
「……ありがとうございます、ロンドさん」

 突然の俺にロンドは首を傾げてしまう。
 だが、その真意をエルーカ語ることなく階段の方へ向かって行く。

「さあ! 早く行きましょう!」
「……そうだね、行こうか」

 ロンドも追及することはなく歩を進めて階段を下りていく。
 それは、今のエルーカを見て良い方向に進んでいるのだと理解することができたから。

 ※※※※

 経営者の部屋マスタールームではジーンが感動のあまりに泣きそうになっていた。
 エルーカの成長を目の当たりにして、ロンドと一緒に潜らせたのが間違いではなかったと安堵もしている。
 それでも、エルーカの成長が一番の要因となっていることに変わりはなかった。

「ジ、ジーン、すごい顔になっているぞ?」
「な、泣いてません、よ?」
「いや、泣いているとは言っていないんだが?」

 そしてジーンと同じように感動しているのが廻だった。
 廻はロンドの成長とエルーカへの気遣いを見て、感動と共にロンドと契約することができて心底良かったと思っていた。

「ロンド君とエルーカちゃんなら、本当に二〇階層まで攻略しちゃいそうですね!」
「うーん、悔しいがこの結果を見せつけられたらなぁ」
「これは、フタスギ様のダンジョン経営を頑張らなければなりませんね」

 腕組みをしながら唸っている二杉だったが、すぐに首を横に振って経営者としての言葉を口にした。

「……いや、もし二〇階層まで行けたとしても、ボスモンスターを倒せるかどうかは分からないだろうな」
「もしかして、レア度4とか?」
「それは到着してからのお楽しみだな」
「……そうですね。でも、ロンドくんとエルーカちゃんなら攻略しちゃうんですからね!」

 どや顔で胸を張る廻だったが、二杉は呆れた表情で口を開く。

「言っておくが、エルーカはこっちの住民だからな? 三葉が威張る理由にはならないと思うんだがな」
「……ま、まあ、いいじゃないですか!」

 あはは、と笑いながらその場をごまかそうとした廻。

「全く、まあいいさ。さすがに進むペースは遅くなったみたいだが、それでも順調に進んでいるな」
「もうそろそろボスフロアですね」
「ロンド君、エルーカちゃん、頑張れ!」

 それぞれが感想を口にしながらモニターに集中する。
 そして――二人はとうとう一五階層に到着した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...