異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?

渡琉兎

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第4章:それぞれの過去

過去の話・アルバス③

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 ゴクリと唾を飲み込んだ廻だったが、アルバスはすぐにいつもの表情に戻ってしまった。

「……どうもしないな」
「……本当ですか?」
「なんだ、復讐でもしてほしかったのか?」
「ち、違いますよ! その、文句の一つくらい言いたいんじゃないかなって思ったんです!」
「文句なら、最初にオウカジパングを出て行った時に言ってやったから安心しろ」

 ふんっ、と鼻息荒くそう言ってのけたアルバスを見て、廻はなぜだかものすごく安心した気持ちになっていた。

「お前は何をそんなに心配していたんだ?」
「だって、アルバスさんが逆上して殴り掛かりでもしたら、相手が死んじゃうんじゃないかって思ったんです」
「俺はどれだけ悪魔なんだよ」
「だって、元冒険者ランキング1位じゃないですか。隻腕になったからって、その実力は健在なわけですし」
「お前は本当にアホだな」
「酷いです!」

 いつものやり取りのように見えるが、今回のアルバスは本当に呆れていた。

「俺が冒険者ランキング1位になった時、そいつらとパーティを組んでいたんだぞ?」
「それがどうしたんですか?」
「……はぁ」
「た、溜息ですか!」
「そりゃ当然だろう。俺が1位になっていたってことは、パーティの奴らも自ずとランキングが上がるってことだ。言っておくが、他の奴らの順位は一桁の奴らばかりだぞ」
「……あっ、そっか」
「そんな奴らが隻腕になった俺に後れを取ると思うか?」
「……でも、可能性はあるんじゃ──」
「いや、ないな。絶対にない。俺の首が飛ぶだけだ」
「く、首が、飛ぶ……」

 アルバスの首が飛ぶ想像をしてしまった廻は、顔を青くしてしまう。

「……いや、殴り掛からないからな? お前、本当にアホだな」
「……はぃ」

 大きく溜息をつき、アルバスは廻の頭をわしゃわしゃと撫でまわす。
 頭をぐらんぐらんさせながら両手をバタバタさせている廻を見て、アルバスは満足したのかその手を放した。

「な、何をするんですか!」
「小娘が無駄な気遣いを見せるからだよ」
「む、無駄とは何ですか、無駄とは!」
「本人が何もしないと言っているのに心配しているんだぞ? それとも、俺のことが信用──」
「してますから!」
「……なら、それこそ無駄な気遣いだな」

 ぐうの音も出ない正論に廻はぐぬぬと唸りながらも、しばらくして大きく息を吐き出した。

「……そうですね、すみませんでした」
「そういうことだ。それに、あいつらがジーエフにやってくるとは思えないな」
「そうですか? ランドンの噂が耳に入ったらやってくる可能性もあると思うんですけど」
「ランドン以上に、レア度5のモンスターを目指している奴らだぞ? ランドンが希少種だからと言って、それだけを目当てには来ないだろうな」
「レア度5ですか……」
「まあ、ジーエフには程遠いレア度だから、今は気にする必要はないだろう」

 アルバスの言葉を受けて、廻は本当に無駄な気遣いだったのかと納得して気持ちを落ち着ける。
 その代わりに一つの提案を口にした。

「アルバスさんは、ジーエフのみんなとパーティを組みたいと思ったことはないですか?」
「あん? なんだ、藪から棒に」
「いえ、冒険者に未練がないということは分かったんですけど、リリーナさんみたいに息抜き程度にはダンジョンに潜りたいんじゃないかって思ったんですよ」
「ダンジョンには潜っているじゃないか」
「そりゃそうですけど、パーティとして本格的にです」
「本格的にって……ジーエフでか? この、ジーエフでか?」
「ぐぬぬっ! そ、その言い方はないと思います! 確かに一五階層以外は手応えがないかもしれませんけど、私だって頑張ってるんですよ!」

 まさかパーティの提案を口にしただけで二つも三つも言い返されるとは思っていなかった。
 ただ、今回は意図的にイジろうとしたわけではないようで、アルバスも頭を掻きながら申し訳なさそうに話を続けた。

「いや、すまん。突然過ぎて本音がな」
「そっちの方が酷いですよ!」
「……だが、他のダンジョンになら潜ってもいいかもな」
「ほ、本当ですか!」

 それでもアルバスの答えに喜びを隠そうとしない廻は椅子から立ち上がりもろ手を挙げて喜んだ。
 とはいうものの、それには大きな問題が一つ浮上する。

「「……ただ、窓口がなぁ」」

 結局はそこに行きついてしまう。
 住民が少なく、窓口に立てる人間がアルバスと廻以外にいない。
 宿屋の接客とは異なり荒くれ者の冒険者を相手にするので並の人間には変わりを務めさせることができない。
 ロンドなら顔見知りの冒険者相手なら可能かもしれないが、すでに宿屋の接客もやってもらっている以上、一人に大きな負担を強いることは廻が許せなかった。

「……ん? ちょっと待て、打ってつけの人物が一人いるじゃねえか!」
「ロンド君じゃないですよね?」
「小僧じゃねえよ。実力は申し分なく、元冒険者ランキングも二桁、それも女性で俺なんかよりも受けがいい奴が!」
「……あ……あぁーっ! いましたね!」

 どうして気づかなかったのだろうか。それも、先ほど廻が名前を口にしていたあの人物を。

「「リリーナ」さん!」

 元冒険者ランキング27位のリリーナならアルバスが言うように受けも良く、さらに冒険者が難癖をつけたとしても実力でねじ伏せることができる。
 問題点としてはリリーナの実力が冒険者に浸透するまでは甘く見られてしまい騒動が頻発する可能性もあるが、そこはアルバスと一緒に窓口に立ってもらいそれとなく実力者なのだと広めていけば解決するだろう。

「そうと決まればリリーナさんに話をしてみます!」
「あぁ。だが、無理強いはするなよ?」
「もちろんですよ! 経営者の命令にならないよう、ちゃんとリリーナさんの意見も聞いて、受けてもらえるならお願いします!」
「おう。ただ、あくまでも一時的な話だ。換金所の窓口専門の人間が来てくれた方が一番いいのは変わらんからな」
「分かってますよ! それじゃあいってきます!」

 窓口を飛び出して換金所の入り口まで走って行った廻だったが、突然立ち止まり振り返る。

「アルバスさん!」
「あん? どうした?」
「話をしてくれてありがとうございました! また、昔話を聞かせてくださいね!」
「これ以上話すことなんてねえよ」
「いやいや、まだジギルさんとの話を聞いてませんからね?」
「ジギルだと? ……あー、止めておけ。それだけは俺の口からは言えねえわ」
「何でですか! 別に変な話じゃないでしょうに」
「……」
「……へ、変な話なんですか!?」
「いいからさっさとリリーナに話をしてこい!」

 頭をガシガシと掻きながら椅子にドカッと腰掛けたアルバスは窓口に突っ伏してしまった。
 こうなってはもう何を言っても話してはくれないだろうと悟った廻は、最後にもう一度お礼を口にして換金所を後にした。

「……元パーティの奴ら、か」

 廻にはああ言ったものの、実際に顔を合わせたらどうなるだろうか。
 恨みがないと言えば嘘になるが、復讐をしようとは本当に思っていない。
 だが、あちらがどう思っているかはアルバスの知るところではないのだ。

「……まあ、なるようになるか。迷惑だけは掛けんようにしないとな」

 誰もいなくなった換金所の中で、アルバスはそんなことを口にするのだった。
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