異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?

渡琉兎

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過去の精算

リッカの答え

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 ──そして、三日が経った。
 答えを聞けないまま三人の出発日となり、廻とロンドは少し心配そうな表情で宿屋の入り口で待っている。

「どのような答えでも、メグルさんやロンド君が顔に出してはいけませんからね?」
「……はい」
「……分かっています」

 頭では理解しているものの、これからのリッカのことを考えると心配でならない。
 ヴィルとクックが説得してくれていることを願いながら待ち続けていると、二階の階段から三人が降りてきた。
 全員が荷物をまとめており、その姿を見た二人は行ってしまうのかとさらに心配の念が強くなってしまう。

「世話になったな」
「迷惑を掛けた俺達を泊めてくれて助かった」
「うふふ、宿屋なのですから当然のことをしただけですよ」

 笑顔でヴィルとクックに対応しているニーナとは異なり、やはり顔に出てしまっている廻とロンドの視線は黙り込んでいるリッカに向いている。
 そのことに気づいたのか、ヴィルが嘆息しながらリッカの背中を押した。

「うわあっ!?」
「お前、言うことがあるんじゃねえのか?」
「その通りであるな」
「……えっ?」

 驚きの声は廻から漏れたものだ。
 リッカの様子を見るに、都合の良いように話が進むわけもなく、お別れの挨拶だろうかと考え直す。
 だが、リッカの口から飛び出した言葉は廻の予想外の内容だった。

「……け、経営者様! わ、私を、ジーエフの冒険者として、移住させてくれませんか!!」
「……ふえっ? ぼ、冒険者として、ですか? 別の仕事ではなくて?」

 リッカが冒険者を辞めるつもりだということをロンドから聞いていた廻は、リッカにできそうな仕事をいくつか考えていた。
 だが、リッカははっきりと冒険者として移住をしたいと言ってきた。冒険者を辞めるつもりがないのだ。

「本当は、冒険者を辞めるつもりでいました。私みたいなダメダメな人間が冒険者を続けても、近いうちに死ぬだけだって分かっています。でも、お姉ちゃんと一緒に冒険をした思い出を捨てるみたいで、怖いんです」

 姉をこの手で殺してしまったリッカだが、それでも一緒に冒険をした日々は大事な思い出になっている。
 冒険者を辞めることが思い出を捨てることではないと分かっていても、できる限り近くでその思い出に寄り添いたいという気持ちの方が強かった。

「ご迷惑になることは重々承知しています。ですが、どうか……どうか! 冒険者として移住することを認めてもらえないでしょうか!!」

 断られる覚悟で伝えてくれたリッカはいきおいよく頭を下げる。
 その姿を見た廻は最初こそ驚いていたものの、ニーナに肩を押されたことで我に返りリッカに声を掛けた。

「リッカちゃん」
「……は、はい!」
「もちろんだよ! 移住のことも、冒険者を続けることも、全く問題ないからね!」

 弾んだ声でそう口にした廻に驚き、リッカは顔を上げてその表情を見る。
 満面の笑みを浮かべた廻の表情がそこにはあり、そして優しく抱きしめてくれた。

「お姉さんとの思い出、大事にしようね」
「……はい!」
「それと、ジーエフで冒険者をやるなら死ぬなんて簡単に言わないこと! 絶対に守ってみせるから、安心してね」
「……はい!」
「ロンド君もいるし、何よりアルバスさんがいるからね」
「……はい!」
「てめえ、助けるのは人任せかよ」
「うぎゃあっ!?」

 突然、この場にいなかった人物の声が頭の上から聞こえてきたのでリッカから手を離して飛び上がってしまう。
 上を向くと、そこには嘆息を漏らすアルバスの顔があった。

「ア、アルバスさん! お、驚かさないでくださいよ!」
「勝手に驚いたのは小娘だろうが」
「あっ! リッカさん、アルバス様に師事したら絶対に大丈夫ですよ?」
「おいっ! 小僧まで何を言ってやがる!」
「カナタ達も受け入れてくれたじゃないですか。一人増えたくらい、問題ないですよね?」
「……小僧、朱髪小僧の時も似たようなことを言ってたよな?」

 ロンドもアルバスの扱いに慣れてきたのか、最初の初々しさは影も形もなくあっけらかんと言い放つ。
 その様子にニーナが笑い、ヴィルとクックが笑い、最後には廻が大笑いしてしまう。

「……ったく、こっちの身にもなれってんだ」
「アルバスもついに子守をする年になったんだな」
「存外、似合っているじゃないか」
「てめえらまで何を言ってやがる!」
「面倒見の良さがアルバスさんの良いところですもんね!」
「こ、小娘まで!!」

 周囲のやり取りに置いてけぼりをくらっていたリッカだったが、廻と目が合い笑みを向けられると、何故だかとてもホッとした気持ちになっていた。

「それじゃあ、準備が整ったらすぐにでもジーエフに来てちょうだいね! 家の準備とか、全部済ませて待ってるからね!」
「……はい、ありがとうございます!」
「その時の護衛なら受けてやってもいいぜ、リッカ」
「そうしたら、一回くらいはまたダンジョンに挑戦してもいいかもしれないな」
「ヴィルさん、クックさん」

 二人から頭を撫でられると、リッカは笑みを浮かべながら涙をこぼしていた。

「しっかし、レインズとライラは大丈夫なのかねぇ」
「だから、アルバスさんは面倒見が良いって言ったんですよ」
「ここであの二人の心配をするのかよ」
「経営者様は良く見ているじゃないか」
「……まあ、どうでもいいか」

 廻だけではなく、ヴィルやクックからもそう言われてしまい、アルバスは考えることをやめることにした。
 腐っても冒険者である。
 自分の身は自分でどうにかするのが冒険者なのだから、他人が心配したところでどうしようもない。

「そんじゃあ、俺達は行くぜ」
「世話になった」
「ま、また来ます! 絶対に来ますから!」
「うん! 待ってるからね、リッカちゃん!」
「はい!」

 大きく手を振って別れた三人は、ジーエフに来た時とは異なり笑顔を浮かべながら去っていった。
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