183 / 183
過去の精算
新たな住人と廻の決意
しおりを挟む
そして、一ヶ月が経過した。
ジーエフを離れたリッカも戻ってきており、ロンドと共に冒険者として活躍している。
時折、宿屋の手伝いをしていることもあったが、ジーエフでは当たり前だと言われて必死に頑張っている。
リッカが宿屋を手伝うようになってからはロンドにも時間が生まれ、アルバスと共にダンジョンへ──ではなく、換金所で仕事をするようになっている。
物覚えが良いロンドはすぐに仕事を覚えてしまい、リリーナも加われば換金所も上手く回るようになっていた。
ただ、そんな中でもロンドには心配事が一つだけある。それは──カナタ達と両親のことだ。
出発してから一ヶ月以上が経ったが、いまだに戻ってきていない。
月日が経つにつれて、何かあったのではと思うようになっていった。
「ロンド君!」
そんなある日、廻が換金所に飛び込んできた。
「ど、どうしたんですか、メグル様?」
「か、帰って、きたよ!」
「帰ってきた?」
「うん! カナタ君達が、帰ってきたのよ!」
その言葉にロンドは目を見開いた。
「行ってこい」
「ここは私達だけで大丈夫ですよ」
ロンドの心情を察し、アルバスとリリーナが声を掛ける。
「……ありがとうございます!」
カウンターを出て換金所を飛び出したロンド。
その背中を追い掛けるようにして廻も走り出す。
向かう先はジーエフの門。
すでに目で見える位置まで近づいている。
まだまだ豆粒くらいにしか見えないが、それでもロンドにははっきりと見えていた。
「……父さん、母さん。それに、アルダ!」
カナタ達からもロンドの姿が見えたのか、カナタが大きく手を振り、トーリとアリサが家族に声を掛けている。
少しずつその姿が大きくなると、ロンドの瞳には自然と涙が浮かんでいた。
「よかったね、ロンド君」
「はい! ありがとうございます、メグル様!」
そして、ロンドは数ヵ月ぶりに家族と対面を果たした。
「父さんも母さんも、久しぶり。それにアルダも……みんな、痩せたね」
ロンドは家族が生活に困ることのないように結構な額の仕送りをしていた。
だが、目の前に立つ家族は以前にもまして痩せてしまっている。
その事実が、廻が懸念していた通りのことになっていたとロンドは反省していた。
「事情はカナタ君達から聞いたわ。ごめんね、ロンド」
「俺がしっかりしていなかったばかりに……すまん」
「そんな、母さんも父さんも謝らないでよ。俺もちゃんと確認をしてなかったんだ」
涙を流す母親を抱きしめ、悔しがる父親に視線を向ける。そして、アルダの頭に手を乗せた。
「……兄、ちゃん」
「……これからは、お腹いっぱい食べさせてあげるからね」
「ありがとう、兄ちゃん!」
アルダは声をあげて泣き出した。
スプリングでの生活は相当に厳しいものだったはずだ。
贔屓はできないが、少しでもヤニッシュ家が安心して暮らせる環境を作らなければならないと心に誓う。
「ロンド君のお父さん、お母さん、アルダ君」
その想いを伝えるべく、廻は一歩踏み出して声を掛ける。
いつものように経営者とは思われないのだろうと考えていたのだが、予想外にヤニッシュ家の三人は片膝を地面に付けて頭を下げてきた。
「ジーエフの経営者様でございますね」
「この度は、我ら三人を受け入れてくださり、誠にありがとうございました」
「で、できることを、全力で取り組みますので」
「「「どうかよろしくお願いいたします!」」」
驚いた廻が顔を上げると、カナタ達が笑顔を浮かべている。
ジーエフまでの道中で、廻という経営者の人となりや、その見た目について説明していたのだ。
廻も笑みを返すと、改めてヤニッシュ家に声を掛けた。
「まだまだ未熟な経営者ではありますが、皆様が心安らかに暮らしていけるような都市にしていきたいと思います。こちらこそ、どうかよろしくお願いします」
廻の言葉に顔を上げたヤニッシュ家の三人は、まるで聖女が微笑んでいるかのように思えただろう。それ程に苦しい生活を送ってきたのだ。
母親やアルダはもちろん、ここまで涙をこらえていた父親の目にも光るものが見える。
「……メグル様。僕も全力でお手伝いさせていただきます。改めてになりますが、どうかよろしくお願いします!」
「こちらこそ。よろしくね、ロンド君!」
こうして、ジーエフはさらに加速的にダンジョンランキングを駆け上がっていくのだった。
終わり
ジーエフを離れたリッカも戻ってきており、ロンドと共に冒険者として活躍している。
時折、宿屋の手伝いをしていることもあったが、ジーエフでは当たり前だと言われて必死に頑張っている。
リッカが宿屋を手伝うようになってからはロンドにも時間が生まれ、アルバスと共にダンジョンへ──ではなく、換金所で仕事をするようになっている。
物覚えが良いロンドはすぐに仕事を覚えてしまい、リリーナも加われば換金所も上手く回るようになっていた。
ただ、そんな中でもロンドには心配事が一つだけある。それは──カナタ達と両親のことだ。
出発してから一ヶ月以上が経ったが、いまだに戻ってきていない。
月日が経つにつれて、何かあったのではと思うようになっていった。
「ロンド君!」
そんなある日、廻が換金所に飛び込んできた。
「ど、どうしたんですか、メグル様?」
「か、帰って、きたよ!」
「帰ってきた?」
「うん! カナタ君達が、帰ってきたのよ!」
その言葉にロンドは目を見開いた。
「行ってこい」
「ここは私達だけで大丈夫ですよ」
ロンドの心情を察し、アルバスとリリーナが声を掛ける。
「……ありがとうございます!」
カウンターを出て換金所を飛び出したロンド。
その背中を追い掛けるようにして廻も走り出す。
向かう先はジーエフの門。
すでに目で見える位置まで近づいている。
まだまだ豆粒くらいにしか見えないが、それでもロンドにははっきりと見えていた。
「……父さん、母さん。それに、アルダ!」
カナタ達からもロンドの姿が見えたのか、カナタが大きく手を振り、トーリとアリサが家族に声を掛けている。
少しずつその姿が大きくなると、ロンドの瞳には自然と涙が浮かんでいた。
「よかったね、ロンド君」
「はい! ありがとうございます、メグル様!」
そして、ロンドは数ヵ月ぶりに家族と対面を果たした。
「父さんも母さんも、久しぶり。それにアルダも……みんな、痩せたね」
ロンドは家族が生活に困ることのないように結構な額の仕送りをしていた。
だが、目の前に立つ家族は以前にもまして痩せてしまっている。
その事実が、廻が懸念していた通りのことになっていたとロンドは反省していた。
「事情はカナタ君達から聞いたわ。ごめんね、ロンド」
「俺がしっかりしていなかったばかりに……すまん」
「そんな、母さんも父さんも謝らないでよ。俺もちゃんと確認をしてなかったんだ」
涙を流す母親を抱きしめ、悔しがる父親に視線を向ける。そして、アルダの頭に手を乗せた。
「……兄、ちゃん」
「……これからは、お腹いっぱい食べさせてあげるからね」
「ありがとう、兄ちゃん!」
アルダは声をあげて泣き出した。
スプリングでの生活は相当に厳しいものだったはずだ。
贔屓はできないが、少しでもヤニッシュ家が安心して暮らせる環境を作らなければならないと心に誓う。
「ロンド君のお父さん、お母さん、アルダ君」
その想いを伝えるべく、廻は一歩踏み出して声を掛ける。
いつものように経営者とは思われないのだろうと考えていたのだが、予想外にヤニッシュ家の三人は片膝を地面に付けて頭を下げてきた。
「ジーエフの経営者様でございますね」
「この度は、我ら三人を受け入れてくださり、誠にありがとうございました」
「で、できることを、全力で取り組みますので」
「「「どうかよろしくお願いいたします!」」」
驚いた廻が顔を上げると、カナタ達が笑顔を浮かべている。
ジーエフまでの道中で、廻という経営者の人となりや、その見た目について説明していたのだ。
廻も笑みを返すと、改めてヤニッシュ家に声を掛けた。
「まだまだ未熟な経営者ではありますが、皆様が心安らかに暮らしていけるような都市にしていきたいと思います。こちらこそ、どうかよろしくお願いします」
廻の言葉に顔を上げたヤニッシュ家の三人は、まるで聖女が微笑んでいるかのように思えただろう。それ程に苦しい生活を送ってきたのだ。
母親やアルダはもちろん、ここまで涙をこらえていた父親の目にも光るものが見える。
「……メグル様。僕も全力でお手伝いさせていただきます。改めてになりますが、どうかよろしくお願いします!」
「こちらこそ。よろしくね、ロンド君!」
こうして、ジーエフはさらに加速的にダンジョンランキングを駆け上がっていくのだった。
終わり
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命
遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる