23 / 64
第23話:反発する生徒
しおりを挟む
「ニア、僕に向けて魔法を放ってくれないかな」
「…………えっ? ええええぇぇええぇぇっ!! わ、私がですか!?」
突然のご指名に悲鳴にも似た声をニアがあげた。
だが、マギスとしてはいたって真面目なお願いであり、彼は表情を変えることなく頷いた。
「実際に見せてあげた方が、カイトにはいいかもしれません」
「で、でも、私がマギスさんに向けて魔法を放つなんて……で、できません!」
「大丈夫です。初級魔法を放ってくれればそれでいいですから」
軽く体をほぐしながらそう口にすると、マギスは先日模擬戦を行った場所へ歩いていく。
その間もニアは本当に魔法を放っていいのか、何かあったらどうしたらいいのか、そのことばかりを考えていた。
「……なんじゃ、マギスよ。魔法を放つのか?」
「ニアがね」
「そのニアはやりたくなさそうじゃぞ?」
「でも、僕が僕に魔法を放っていたら納得してもらえなさそうだし、生徒にやらせるわけにはいかないだろう」
オックスやピピなら説得すればやってくれるかもしれない。
だが、人に向けて魔法を放つというのは思いのほか覚悟のいる行為だ。
それが模擬戦などではなく、直撃を狙うものならなおさらだ。
「ふむ……よし! いいだろう、マギス!」
「んっ? 何がだい、エミリー?」
「我が魔法を使ってやるぞ!」
「……いや、頼んでいないんだけど?」
「遠慮するでない! 我も近頃はあまり強力な魔法を放てずにうずうずしていたところだ!」
マギスはニアに初級魔法を放つようお願いしていた。
しかし、何を勘違いしたのかエミリーは強力な魔法を放つつもり満々で腕をぐるぐると回し始めた。
「いや、初級魔法でいいんだけど? っていうか、エミリーには頼んでいないよ?」
「さて、しっかりと見ておくがいいぞ、皆の者! これがマギスの実力じゃぞ!」
そう力強く言い放ったエミリーが右腕を上に向けると、頭上に巨大な火球が顕現した。
「な、なななな、なんだこりゃああああっ!?」
驚きの声をあげたのはリックだった。
他の面々も口を開けたまま固まっており、ニアに至っては両手で口を覆い隠して動けなくなっている。
「すっごおおおおいっ! エミリーちゃん、すっごおおおおいっ!!」
唯一興奮しているのはティアナで、エミリーの魔法を指差しながら飛び跳ねていた。
「ちょっと待て、エミリー! それはやり過ぎだよ!」
「マギスならこの程度、問題にはならんだろう! さあ、潜り抜けてみせよ!」
マギスが両手をバタバタさせて止めようとしたのだが、エミリーは全く気にすることなく、むしろ楽しそうに目をらんらんと輝かせながら火球を解き放った。
「ったく、これじゃあ潜り抜けても、魔法が高台を吹き飛ばしてしまうだろうが!」
悪態をつきながら駆け出したマギスは、腰に提げていた剣を抜き放つと火球めがけて突進していく。
「きゃああああっ!?」
「危ないって、マギス兄!」
まさかの行動にアリサは悲鳴をあげ、リックは彼の名前を叫んだ。
「……面白い、やってみるがいい、マギスよ!」
「楽しんでいるんじゃないよ、エミリー!」
マギスが何をしようとしているのか理解したエミリーの表情は、自然と笑みを浮かべている。
そのことを見ずとも理解したマギスはため息を漏らしながら、火球めがけて剣を振り抜いた。
「そこだ!」
――ザシュ!
マギスの鋭い一閃が火球を捉える。
すると、火球に飲み込まれるでもなく、爆発するでもなく、その場で単なる魔力の欠片となって霧散してしまった。
「…………えっ? ええええぇぇええぇぇっ!! わ、私がですか!?」
突然のご指名に悲鳴にも似た声をニアがあげた。
だが、マギスとしてはいたって真面目なお願いであり、彼は表情を変えることなく頷いた。
「実際に見せてあげた方が、カイトにはいいかもしれません」
「で、でも、私がマギスさんに向けて魔法を放つなんて……で、できません!」
「大丈夫です。初級魔法を放ってくれればそれでいいですから」
軽く体をほぐしながらそう口にすると、マギスは先日模擬戦を行った場所へ歩いていく。
その間もニアは本当に魔法を放っていいのか、何かあったらどうしたらいいのか、そのことばかりを考えていた。
「……なんじゃ、マギスよ。魔法を放つのか?」
「ニアがね」
「そのニアはやりたくなさそうじゃぞ?」
「でも、僕が僕に魔法を放っていたら納得してもらえなさそうだし、生徒にやらせるわけにはいかないだろう」
オックスやピピなら説得すればやってくれるかもしれない。
だが、人に向けて魔法を放つというのは思いのほか覚悟のいる行為だ。
それが模擬戦などではなく、直撃を狙うものならなおさらだ。
「ふむ……よし! いいだろう、マギス!」
「んっ? 何がだい、エミリー?」
「我が魔法を使ってやるぞ!」
「……いや、頼んでいないんだけど?」
「遠慮するでない! 我も近頃はあまり強力な魔法を放てずにうずうずしていたところだ!」
マギスはニアに初級魔法を放つようお願いしていた。
しかし、何を勘違いしたのかエミリーは強力な魔法を放つつもり満々で腕をぐるぐると回し始めた。
「いや、初級魔法でいいんだけど? っていうか、エミリーには頼んでいないよ?」
「さて、しっかりと見ておくがいいぞ、皆の者! これがマギスの実力じゃぞ!」
そう力強く言い放ったエミリーが右腕を上に向けると、頭上に巨大な火球が顕現した。
「な、なななな、なんだこりゃああああっ!?」
驚きの声をあげたのはリックだった。
他の面々も口を開けたまま固まっており、ニアに至っては両手で口を覆い隠して動けなくなっている。
「すっごおおおおいっ! エミリーちゃん、すっごおおおおいっ!!」
唯一興奮しているのはティアナで、エミリーの魔法を指差しながら飛び跳ねていた。
「ちょっと待て、エミリー! それはやり過ぎだよ!」
「マギスならこの程度、問題にはならんだろう! さあ、潜り抜けてみせよ!」
マギスが両手をバタバタさせて止めようとしたのだが、エミリーは全く気にすることなく、むしろ楽しそうに目をらんらんと輝かせながら火球を解き放った。
「ったく、これじゃあ潜り抜けても、魔法が高台を吹き飛ばしてしまうだろうが!」
悪態をつきながら駆け出したマギスは、腰に提げていた剣を抜き放つと火球めがけて突進していく。
「きゃああああっ!?」
「危ないって、マギス兄!」
まさかの行動にアリサは悲鳴をあげ、リックは彼の名前を叫んだ。
「……面白い、やってみるがいい、マギスよ!」
「楽しんでいるんじゃないよ、エミリー!」
マギスが何をしようとしているのか理解したエミリーの表情は、自然と笑みを浮かべている。
そのことを見ずとも理解したマギスはため息を漏らしながら、火球めがけて剣を振り抜いた。
「そこだ!」
――ザシュ!
マギスの鋭い一閃が火球を捉える。
すると、火球に飲み込まれるでもなく、爆発するでもなく、その場で単なる魔力の欠片となって霧散してしまった。
0
あなたにおすすめの小説
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
社畜の異世界再出発
U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!?
ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。
前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。
けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。
前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!
yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。
だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。
創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。
そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。
湖畔の賢者
そらまめ
ファンタジー
秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。
ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。
彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。
「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」
そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。
楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。
目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。
そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる