異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜

渡琉兎

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第一章

第28話:主との話し合い

「そうだわ、カエデさん。商業ギルドで従魔の主をしている職員への聞き取りなんだけれど、いいかしら?」

 楓とピースの従魔契約が終わったのを頃合いに、セリシャがそう声を掛けた。

「あ! お願いしたいです!」
「それじゃあ私は、材料を渡したら、この辺りでお役御免かしらね」

 本来の目的を思い出した楓が元気よく答えると、ここまでつき合ってくれたティアナがそう口にした。

「ティアナさん、今回はほんっっとうにありがとうございました!」
「また困ったことがあったら声を掛けてちょうだい。料理を報酬に、また受けてあげるからさ」
「そんな、ティアナさんにだったら、何もなくてもまた作ります! まあ、簡単なやつだけですけど」
「本当! それは嬉しいわ! それじゃあ、またね!」

 嬉しそうに笑ったティアナは、集めてきた従魔具の材料をテーブルに取り出し、この場をあとにした。

「……う、うわぁぁ~。すごい量だなぁ~」

 実際にどれくらいの量があるのか、その総量を見ていなかった楓は、テーブル一面が山のような材料で見えなくなってしまい困惑してしまう。

「さすがはティアナさんだわ。これだけあれば、問題はなさそうね」

 一方でセリシャは、これが当たり前だと感じているのか、特に困惑することなく自分の魔法鞄に材料を入れていく。

「これからの聞き取りではさすがに邪魔になってしまうから、いったんは私の魔法鞄に入れてしまうけど、いいかしら?」
「も、もちろんです! お手数おかけします!」

 自分で管理できればよかったのだが、これだけの量では管理どころか、確保しておくことすらできない。
 セリシャには世話になりっぱなしだと考えながら、いつかどこかで恩返ししなければと、楓は内心で考える。

「それじゃあ、最初の一人を呼んでくるから、ここで待っていてくれるかしら?」
「わ、分かりました!」

 楓の返事を聞いたセリシャが一度部屋を出る。

(さ、最初の人って、結構肝心だよね。断られたら、その次の人も断りやすくなっちゃうし……でもでも、無理してほしいわけじゃないから、断わってくれてもいいんだけど……ああぁぁ~! なんだか頭の中がぐるぐるしてきたああぁぁ~!!)

 急に一人になってしまったからか、楓は考えなくてもいいことまで考えてしまい、勝手にテンパってしまう。
 するとそこへセリシャが戻ってくる。

「戻ったわ」
「ひゃい!」
「……だ、大丈夫かしら、カエデさん?」
「……はいぃ~」

 返事を噛んでしまい、楓は泣きながら改めて答えた。

「最初の人は面識のある人の方がいいと思って、エリンを連れて来たわ」
「失礼します」

 受付嬢のエリンが姿を見せたことで、楓は内心で大きく安堵の息を吐いた。

(よかったよおおおお! 知らない人と初めてのことを話し合うだなんて、緊張すると思ってたものおおおお!)

 エリンと仲が良い、というわけではないが、全く知らない人よりかはマシだと楓は考えていた。

(ど、どどどど、どうしよう! き、きききき、緊張してきたよおおおお!!)

 一方でエリンは、受付嬢らしく表情を繕っていたが、内心では盛大に慌てていた。

(ギルマスが直接対応する従魔具職人の方! さらにSランク冒険者のティアナ様とも知り合いだなんて! ……そ、粗相だけはしないようにしなきゃああああ!!)

 職場のトップが直接対応しているだけの人であれば、過去にも対応したことがあったエリン。
 しかし、そこにプラスして冒険者のトップと言われるSランク冒険者とも親し気に接していたのだから、実は楓はどこかの貴族令嬢なのではないかと、エリンは勝手に考えていた。

「エリンは、カエデさんの〈従魔具職人〉のスキルレベルがEXなのは知っているわね?」
「ひゃ、ひゃい!」
「……だ、大丈夫?」
「……大丈夫です~」

 楓と全く同じように返事を噛んでしまったエリン。
 その姿を見た楓は、エリンに親近感を抱くようになっていた。

「今回は、事前に伝えていた通り、従魔に従魔具を与えたいか否か、についてよ」

 それからセリシャは、楓が従魔具職人として大成するための手助けをすることになったこと、ラッシュに初めて従魔具を作ってもらったこと、それを見た他の従魔たちが従魔具を欲しがっていること、等を伝えた。

「……あの、ギルマス? どうして従魔たちが、従魔具を欲しがっていると分かったんですか?」

 当然の疑問を口にしたエリンには、楓が口を開く。

「私のサブスキルである〈翻訳〉が、触れた魔獣の言葉を翻訳するものだったんです」
「……へ? ま、魔獣の言葉を、翻訳?」
「はい。それでラッシュ君が求めている従魔具を作れたし、その従魔具を見た従魔たちも欲しがっていると教えてもらえて、ピースとも心を通わせて従魔になってもらえました」
「キュキュー(やっほー)」

 最後の言葉にはピースが肩の上から右手を上げて鳴いていた。

「でも、いきなりこんなことを言われても信じてもらえないのは分かっています。なので、従魔の主であるエリンさんに、従魔が欲しているのかどうかを判断してもらいたいと思ったんです」

 本当に従魔たちの言葉が聞こえているのかどうかは、楓にしか分からない。
 そして楓は、自分の言葉が商業ギルドの職員たちにいきなり信じてもらえるとは思っていない。
 だからこそ、〈翻訳〉のことを伝えつつ、最終的な判断は主であるエリンたちに任せようと考えた。

「……カエデ様」
「はい」
「従魔たちがラッシュ君の従魔具を見たのは、昨日ですよね?」
「そうです」

 エリンからの質問はそれだけだった。
 それだけの答えを聞き、エリンの表情は真剣な面持ちへと変わる。

「……昨日の帰り道、ハオがいつもより頻繁に声を掛けてくると思っていたんです。とても嬉しそうに、おねだりするみたいに。あれは、そういうことだったんですね」

 エリンにも心当たりがあったのか、嬉しそうにそう口にした。

「押し売りみたいなことはしません。もし従魔具を与えたいという気持ちがあるのでしたら、予算を聞いて、予算内に収まるよう材料を使って、従魔たちが満足いく従魔具を作ってみせます!」

 楓の強い気持ちが伝わったのか、それともエリンの中では既に答えが決まっていたのか。

「お願いいたします、カエデ様! ハオに従魔具を作ってあげてください!」

 エリンは即答で、作ってほしいと答えた。
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