ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした

渡琉兎

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コミカライズ3話更新感謝SS:古代の魔導具、鑑定完了?

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 トーヤたちの活躍により、スタンピードは完全なる終息を迎えた。
 とはいえ、ラクセーナ壊滅の危機だったことも間違いではなく、しばらく都市の中ではスタンピードの話で持ちきりになっていた。
 だが、そんなことには目もくれず、自分の道を突き進む者も中にはいる。

「どうだい、レミちゃん! これなら通信機として完璧な形になったのではないかな!」
「小型化に成功したんですね! おめでとうございます、アリアナさん!」

 商業ギルドの魔導具開発部として、日夜魔導具の開発と研究に没頭している、アリアナとレミである。
 彼女らはトーヤの要望で色々な魔導具を開発する傍ら、とある魔導具の解析も行っている。
 そのとある魔導具とは――トーヤが持ちこんだ古代の魔導具である。
 古代の魔導具が転移魔導具であることまでは調べがついている。
 しかし、この転移魔導具は二つ一組の魔導具だ。故に、一つしかないこのままでは使えない。
 否、使うこと自体は可能だが、転移先はもう片方の場所と決まっており、それがどこにあるのかが分からないのだ。
 使ってしまえばそこは未知の場所、なんてことになりかねないため、使うことができないという状況だった。

「なあ、レミちゃん」
「なんですか、アリアナさん?」
「トーヤ少年から預かっている古代の魔導具なのだが……あれ、どうしたらいいと思う?」

 唐突な質問に、レミは首を傾げてしまう。

「どうしたらいいとは、どういうことですか?」
「うむ。転移魔導具だというところまでは解析できたわけだが、それ以上のことは現状、何も分かっていない。このまま私が持っていても、無意味だと思うのだよ」
「そうですか? ……私はそうは思いませんよ?」

 アリアナは無意味だと言ったが、レミの意見は違った。
 それはアリアナが開発した魔導具に理由がある。

「トーヤさんに頼まれて作った通信機、これは古代の魔導具を解析していたからこそ、作ることができた魔導具ですよね?」

 レミの言う通り、通信機の構造には転移魔導具の解析結果が流用されていた。
 通信機で最も重要とされるだろう声を伝える技術。ここに転移魔導具の技術が流用されたのだ。

「声を転移させて、もう一方の通信機に声を届ける、というものだね」
「その通りです! もしかしたら今後、同じような魔導具を開発する時が来るかもしれませんよ!」
「確かにそうかもしれないが……通信機に流用した技術であれば、既に私の頭の中に入っているのだよ。ならば、古代の魔導具自体はトーヤ少年に返しても問題ないのではないか?」

 今後も古代の魔導具を解析して、新たな結果と技術を得られるのであれば話は別だが、現時点でそのめどは立っていない。
 古代の魔導具の所有者はトーヤなわけで、アリアナはずっと持ち続ける理由がなくなっていた。

 ――コンコンコン。

 するとここで、魔導具開発部の扉がノックされた。

「はーい!」

 レミが元気よく返事をしながら歩き出し、扉を開いた。

「お疲れ様です。レミさん、アリアナさん」

 現れたのは、話題の中心にいたトーヤだった。

「おぉ! いいところに来てくれたよ、トーヤ少年!」

 するとアリアナがそう口にしたので、トーヤは中に入りながら問い掛ける。

「何かありましたか?」
「実はレミちゃんと、古代の魔導具をトーヤ少年に返すべきかどうかの話をしていたのだよ!」
「古代の魔導具をですか? それはまたどうして?」

 ここでアリアナは、先ほどレミと話をしていた内容をトーヤにも説明した。

「――というわけで、現状は解析が進みそうもないので、一度返した方がいいのではないかと思っていたのだよ」
「なるほど、そういうことでしたか」

 アリアナの説明を聞いたトーヤも、納得顔で頷いた。

「そういうことでしたら、私の方で引き取りましょう」
「本当にすまないね、トーヤ少年」
「とんでもない。転移魔導具だと知れただけでも、ありがたいことですから」

 トーヤの言葉を聞きながら、アリアナは転移魔導具を部屋の奥にある金庫から取り出した。

「なんと。金庫に入れていたのですね」
「これはこの場にある魔導具の中で、最も貴重なものだからね。預かりものでもあるし、当然さ」

 笑いながらそう口にしたアリアナは、そのままトーヤへ古代の魔導具を手渡した。

(そういえば、スキルが叡智の瞳になってからは、まだ古代の魔導具を鑑定していませんでしたね。試しにやってみましょうか)

 久しぶりに古代の魔導具を手にしたトーヤは、思いつきで鑑定を行ってみた。

(……あ…………これは、マズいですね)

 するとここで、予想外の鑑定結果が表示されてしまう。

「ん? どうしたんだね、トーヤ少年?」
「何かありましたか?」
「え? あ、いや、なんでもありません! あは、あははー! それでは、失礼いたします!」

 古代の魔導具をアイテムボックスに入れながら、トーヤは慌てて魔導具開発部をあとにする。
 そんな姿を見たアリアナとレミは、顔を見合わせると首を傾げることしかできなかった。

 ◆◇◆◇

(……うーん、どうしましょうか。これは間違いなく、ジェンナ様に相談が必要な内容ですね)

 トーヤが慌てて魔導具開発部を出て行った理由、それは――古代の魔導具を鑑定することができたからだ。
 アリアナが解析したように、転移魔導具であることに間違いはなかった。
 ただ、欠けているもう一つの魔導具の行方まで分かってしまったのだ。

(場所は王都の王城の中。つまりは、王家が所有しているということですよね?)

 仮にアリアナが興味本位で古代の魔導具を起動していたなら、彼女は王城へ許可なく侵入していたことになる。
 見つかれば間違いなく、極刑に処されることだろう。

(本当に、アリアナさんが興味本位で起動していなくてよかったです)

 そんなことを考えながら、トーヤはジェンナの部屋へと向かう。

「あら。どうしたの、トーヤ?」
「実はご相談がありまして……古代の魔導具についてなのですが……」

 それからトーヤが鑑定結果について説明をすると、ジェンナは盛大にため息を吐きながら、顔を覆ってしまう。

「……それ、誰かに話したかしら?」
「誰にも話しておりません!」
「それはよかったわ。……この件に関しては、わたくしがどうにかするので、それまでは絶対に誰にも話してはダメよ? いいわね?」
「か、かしこまりました」

 古代の魔導具がいったいどうなるのか……今はただ、黙っていることしかできないトーヤなのだった。
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