門番として20年勤めていましたが、不当解雇により国を出ます ~唯一無二の魔獣キラーを追放した祖国は魔獣に蹂躙されているようです~

渡琉兎

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第一章:不当解雇

第4話:従魔との会話と間引き

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 問題なく宿屋を取る事もできたので、俺は荷物を下ろしてから声を掛ける。

「国を出ようと思っているが、お前もそれでいいのか――デン」
『当然だろう。我はお主の従魔なのだからな、レインズ』

 この部屋には誰もいない。
 だが、俺の影の中には存在しており、返答も影の中から聞こえてきている。

「ここには誰もいないから、出てきてもいいぞ?」
『む? では、失礼して』

 俺の許可が出たからだろうか、デンは影の中からその身を踊り出させた。
 白銀の体毛を持ち、ジーラギ国では一番の美しさと強さを併せ持つ魔獣、シルバーフェンリル。
 本来であれば俺なんかが従魔にできるレベルの魔獣ではないのだが、これも魔獣キラーのおかげで従える事ができている。
 正直、魔獣キラーに感謝した事といえば、デンを従魔にできた事くらいだろうか。

「……ふぅ。ん? ここは、いつもの部屋ではないのだな」
「あぁ。すでに兵士寮を追い出されたからな」
「ほほう? あやつらは、我を従えるレインズを追い出したのか? そのせいでお主は国を出ると? ほほおおおおぉぉう?」
「おいおい、怒るな怒るな。そこは怒るところではないからな」
「怒るところであろうが!」

 ……そうか?
 まあ、最初は多少の憤りもあったけど、考えれば考える程に納得の結果なんだよな。

「……俺がこの国では中の下である事に、変わりはないからな」
「……全く。お主は住み難い国に生まれたものだのう。魔獣キラーという、破格のスキルを与えられた者のくせして」
「今回に関しては、デンの言う通りだな」

 苦笑する俺に対して、デンはその顔を悲しそうに歪めている。

「寛容というか、鈍感というか、お主は掴みどころがないのう」
「まあまあ、そう怒るなよ。とりあえず、間引きは今日が最後だ。夜には大量の魔獣を狩る事になるから、気を引き締めてくれよ」
「この状況でまで間引きをするのか。……はぁ、お主は本当にお人好しじゃのう」

 人間のようなため息をつきながら、デンは再び俺の影の中に消えていった。

「……さて、それじゃあ夜まで時間を潰すか」

 予定外にジストの森へ足を運んだせいか、少しばかり疲れてしまった。
 兵士寮よりもギシギシと鳴るベッドへ横になると、俺は仮眠をとることにした。

 ◆◆◆◆

 そして、満月が綺麗なその日の夜。
 俺はデンの背に乗ってジストの森へと向かった。
 日の高い時間帯でヘビーベアが親子で現れたのだから、魔獣が活発化しているという証拠でもある。
 その事に統括長が気づいているかどうかは知らないがな。
 エリカが報告はしているだろうけど、ちゃんと報告できているかが問題だけど。

「怒り狂ってなきゃいいけどなぁ」

 そんな事を呟きながら、俺は目の前に飛び出してきた昼のヘビーベアよりも二倍の大きさを誇るヘビーベアを易々と両断していく。

「デンは大丈夫か?」
「ふん! この程度の魔獣、我が苦戦するはずないだろう!」

 魔獣には、その実力に合わせてランクが設定されている。
 ランクには最弱のFランクから、強くなるにつれてE、D、C、B、A、S、SS、SSSと続く。
 ヘビーベアのランクがDランクに設定されている中、デンの――シルバーフェンリルのランクはといえば――

「我は、SSSランクの魔獣であるぞ!」

 遠吠えを放てばほとんどの魔獣がその場から逃げ出し、相対する事になれば一秒と持たずにその命は絶たれる。
 シルバーフェンリルの相手ができる魔獣といえば、同じSSSランクしかおらず、ジラギースにはそのSSSランクは存在しない。
 となればまあ、俺が心配するのも意味がないって事なんだが。

「それにしても、やっぱり数が多いな」

 こちらにやって来ていたヘビーベアを一通り倒し終わると、俺は剣を肩に担いで思案する。
 昨日、一昨日ではここまで多くはなかったはずだ。
 今日になって急に増えたって事になるんだけど、その事に気づいているのはきっと俺だけだ。

「……仕方がない、明日は忠告と一緒に二人へ教えておくか。いや、これも忠告になるのか?」

 そんな事を考えながら、こちらに新しくやって来たヘビーベアめがけて剣を振るう。
 軽く振るっただけにもかかわらず、ヘビーベアの肉体はここでも易々と両断された。
 これだけの異常な威力を誇るスキル、俺だったらありがたく使わせてもらうんだけどな。

「お主、まーた変な事を考えているのだろう」
「別に変な事ではないだろう。便利なものは使わせてもらう、それだけの話だ」
「……本当に、お主は生まれ落ちる国を間違えたな」
「だな」

 ニヤリと笑った俺は、デンと一緒に周辺の魔獣を一掃した後に宿屋へと戻っていった。
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