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第一章:不当解雇
第5話:ジラギース出発
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翌日、俺は早朝から宿屋を後にしてジラギースの門へと向かう。
すると、そこには伝えていた通りにエリカがガジルさんと一緒に待っていてくれた。
「おはようございます。ガジルさん、エリカ」
「ったく、こんな朝早くから呼び出すんじゃねえよ」
「レインズ先輩。本当に、行ってしまうんですか?」
全く異なる反応に苦笑しながら、俺は二人の問いに答える。
「すみません、ガジルさん。すぐにでも伝えておきたい事があったので。それとな、エリカ。俺が解雇されたのは紛れもない事実なんだよ」
「で、でも……」
「すまんな、レインズ。俺も結局、何もできなかった」
うーん、こんなにも辛気臭い見送りは希望していないんだがなぁ。
「……二人とも、時間は? よければ少し歩きませんか?」
「私は大丈夫ですけど」
「俺も大丈夫だ」
不思議そうにこちらを見ているエリカとは違い、ガジルさんは思い当たる節があるようで平静を装っている。
そのまま門を潜り、俺は今日の担当門番に会釈をしたのだが。
「……」
「……」
……どちらからも、返事はなしか。
「お前たちなぁ」
「も、門番長!?」
「お、おはようございます!」
「俺には挨拶するのかよ! あからさまだな、お前たちも!」
豪快に笑いながらガジルさんは進んでいくが、俺は門番の二人から睨まれてしまう。
……これ、絶対に俺のせいじゃないよな。まあ、今日でいなくなるから別にいいんだけど。
「……む、ムカつきますね! 何なんですか、あいつらは!」
「そう怒るなって、エリカ。俺にこうして話し掛けてくれるのは、ガジルさんとお前くらいなんだから」
他はまあ、朝の朝礼で顔を合わせるくらいだったしな。
「んで、レインズ。俺とエリカを呼んだ理由、聞かせてくれるんだろう?」
「えっ? 理由、ですか?」
ジラギースからある程度離れ、話し声も聞こえない場所までやって来たことで、ガジルさんからそう問い掛けられる。
「……二人は、ジラギースに残る理由ってあるか?」
「「……ジラギースに残る理由?」」
突然の問いに、二人とも顔を見合わせて考え込んでいる。
まあ、唐突な質問だった事は否定しないし、すぐに答えが返ってくるとは思っていない。
「俺は、特にないかな」
「……えっ? そうなんですか?」
しかし、ガジルさんからの答えは予想外にもすぐに返ってきた。
「ジラギースに友人はいるが、そいつらのために残っているわけでもねえしな。家族も他界してるし、恋人もいねえからな」
「……寂しい人生だったんですね」
「うるせえな! てめえだっていねえだろうが!」
……ぐうの音も出ないな。
「……わ、私も、特にありません!」
「でも、エリカには家族がいるだろう。ガジルさんと違って若いし」
「おい、いきなり人をバカにすんじゃねえぞ?」
「確かに私は門番長よりも若いですけど」
「お前もかよおい!」
ガジルさんの対応は放っておくとして、俺はエリカの答えに再度質問を口にする。
「それで、家族は?」
「……私は、孤児ですから。たまたま戦闘系のスキルを与えられたから仕事に就けましたけど、それがここに残る理由にはなりませんから」
「んな事よりも、お前の方は大丈夫なのか? 俺とさほど年齢は変わらないだろう?」
「俺は35歳です! ガジルさんは43歳でしょう!」
「お前、俺の年齢まで知ってるのかよ!」
ガジルさんには世話になっていたからな。誕生日を軽く祝うとかもやってたし、知ってるに決まっているだろう。
「わ、私は21歳です!」
「うおっ! ……一回り以上も違うのかよ」
「子供だって言っても問題ない年齢じゃないですか」
「「絶対に違うから!」」
そこまで必死に否定しなくてもいいじゃないかよ。
「んで、お前はどうなんだ?」
「そうですよ! レインズ先輩の家族はどうなさっているんですか?」
「俺の家族はジーラギ国にいないから、問題はない」
「……ジラギースにじゃなくて、ジーラギ国にいないのか?」
俺の両親は剣の修行だとか言って、俺が門番に就職した次の日には国を出てしまった。
まあ、戦う事が大好きな両親だったし、俺と同じでジーラギの国民性とは異なる思考を持っていたから、当然の結果とは言えるけど。
「というわけで、俺もジーラギ国を出るのになんの躊躇いもないって事だ」
「そうなんですね」
「……それで、なんでそんな話をしたんだ?」
おっと、話が少し逸れてしまったが、本題はそこではない。
「可能であれば、二人には早い段階でジラギースを……いえ、ジーラギ国から出て欲しいんです」
「えっ! でも、どうして私たちまで?」
驚きの声をあげたエリカだったが、この答えを予想していただろうガジルさんは腰に手を当てて大きく息をついた。
「それは、お前が間引いていた魔獣が関係しているのか?」
「えぇ、その通りです。その辺りの説明は、後ほどお願いできますか?」
「あぁ、任されたよ」
「えっと、あの、どういう事ですか?」
エリカは俺のスキルについてはもちろん知っているが、俺が何をしていたのかまでは分からない。
ガジルさんの説明を聞いたら、きっとジーラギを離れる事を決断できるかもしれない。
「……それじゃあ、俺はもう行きますね」
「ったく、言いたい事を伝えたら、すーぐこれだ」
「先輩! あの、私は、先輩の事が――」
「達者でな。しっかりと考えて決断してくれよ!」
これ以上は時間がもったいない。
それに、二人だってやる事があるだろうし。
俺は快活な笑みを浮かべると、その場を駆け足で去っていった。
すると、そこには伝えていた通りにエリカがガジルさんと一緒に待っていてくれた。
「おはようございます。ガジルさん、エリカ」
「ったく、こんな朝早くから呼び出すんじゃねえよ」
「レインズ先輩。本当に、行ってしまうんですか?」
全く異なる反応に苦笑しながら、俺は二人の問いに答える。
「すみません、ガジルさん。すぐにでも伝えておきたい事があったので。それとな、エリカ。俺が解雇されたのは紛れもない事実なんだよ」
「で、でも……」
「すまんな、レインズ。俺も結局、何もできなかった」
うーん、こんなにも辛気臭い見送りは希望していないんだがなぁ。
「……二人とも、時間は? よければ少し歩きませんか?」
「私は大丈夫ですけど」
「俺も大丈夫だ」
不思議そうにこちらを見ているエリカとは違い、ガジルさんは思い当たる節があるようで平静を装っている。
そのまま門を潜り、俺は今日の担当門番に会釈をしたのだが。
「……」
「……」
……どちらからも、返事はなしか。
「お前たちなぁ」
「も、門番長!?」
「お、おはようございます!」
「俺には挨拶するのかよ! あからさまだな、お前たちも!」
豪快に笑いながらガジルさんは進んでいくが、俺は門番の二人から睨まれてしまう。
……これ、絶対に俺のせいじゃないよな。まあ、今日でいなくなるから別にいいんだけど。
「……む、ムカつきますね! 何なんですか、あいつらは!」
「そう怒るなって、エリカ。俺にこうして話し掛けてくれるのは、ガジルさんとお前くらいなんだから」
他はまあ、朝の朝礼で顔を合わせるくらいだったしな。
「んで、レインズ。俺とエリカを呼んだ理由、聞かせてくれるんだろう?」
「えっ? 理由、ですか?」
ジラギースからある程度離れ、話し声も聞こえない場所までやって来たことで、ガジルさんからそう問い掛けられる。
「……二人は、ジラギースに残る理由ってあるか?」
「「……ジラギースに残る理由?」」
突然の問いに、二人とも顔を見合わせて考え込んでいる。
まあ、唐突な質問だった事は否定しないし、すぐに答えが返ってくるとは思っていない。
「俺は、特にないかな」
「……えっ? そうなんですか?」
しかし、ガジルさんからの答えは予想外にもすぐに返ってきた。
「ジラギースに友人はいるが、そいつらのために残っているわけでもねえしな。家族も他界してるし、恋人もいねえからな」
「……寂しい人生だったんですね」
「うるせえな! てめえだっていねえだろうが!」
……ぐうの音も出ないな。
「……わ、私も、特にありません!」
「でも、エリカには家族がいるだろう。ガジルさんと違って若いし」
「おい、いきなり人をバカにすんじゃねえぞ?」
「確かに私は門番長よりも若いですけど」
「お前もかよおい!」
ガジルさんの対応は放っておくとして、俺はエリカの答えに再度質問を口にする。
「それで、家族は?」
「……私は、孤児ですから。たまたま戦闘系のスキルを与えられたから仕事に就けましたけど、それがここに残る理由にはなりませんから」
「んな事よりも、お前の方は大丈夫なのか? 俺とさほど年齢は変わらないだろう?」
「俺は35歳です! ガジルさんは43歳でしょう!」
「お前、俺の年齢まで知ってるのかよ!」
ガジルさんには世話になっていたからな。誕生日を軽く祝うとかもやってたし、知ってるに決まっているだろう。
「わ、私は21歳です!」
「うおっ! ……一回り以上も違うのかよ」
「子供だって言っても問題ない年齢じゃないですか」
「「絶対に違うから!」」
そこまで必死に否定しなくてもいいじゃないかよ。
「んで、お前はどうなんだ?」
「そうですよ! レインズ先輩の家族はどうなさっているんですか?」
「俺の家族はジーラギ国にいないから、問題はない」
「……ジラギースにじゃなくて、ジーラギ国にいないのか?」
俺の両親は剣の修行だとか言って、俺が門番に就職した次の日には国を出てしまった。
まあ、戦う事が大好きな両親だったし、俺と同じでジーラギの国民性とは異なる思考を持っていたから、当然の結果とは言えるけど。
「というわけで、俺もジーラギ国を出るのになんの躊躇いもないって事だ」
「そうなんですね」
「……それで、なんでそんな話をしたんだ?」
おっと、話が少し逸れてしまったが、本題はそこではない。
「可能であれば、二人には早い段階でジラギースを……いえ、ジーラギ国から出て欲しいんです」
「えっ! でも、どうして私たちまで?」
驚きの声をあげたエリカだったが、この答えを予想していただろうガジルさんは腰に手を当てて大きく息をついた。
「それは、お前が間引いていた魔獣が関係しているのか?」
「えぇ、その通りです。その辺りの説明は、後ほどお願いできますか?」
「あぁ、任されたよ」
「えっと、あの、どういう事ですか?」
エリカは俺のスキルについてはもちろん知っているが、俺が何をしていたのかまでは分からない。
ガジルさんの説明を聞いたら、きっとジーラギを離れる事を決断できるかもしれない。
「……それじゃあ、俺はもう行きますね」
「ったく、言いたい事を伝えたら、すーぐこれだ」
「先輩! あの、私は、先輩の事が――」
「達者でな。しっかりと考えて決断してくれよ!」
これ以上は時間がもったいない。
それに、二人だってやる事があるだろうし。
俺は快活な笑みを浮かべると、その場を駆け足で去っていった。
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