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第一章:不当解雇
第26話:自警団の訓練
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弁当を食べ終えた俺たちは、丘を下りながら話をしていた。
――キンッ! キンキンッ!
その時、金属同士がぶつかり合う甲高い音が聞こえてきた。
「この音は?」
「自警団が訓練をしているんだと思います。ただ、人数は少ないですけどね」
「そうなのか?」
話を聞くと、数年前の魔獣討伐において多くの若い命が失われてしまい、今では自警団の数も少なくなってしまったのだとか。
当時の自警団の隊長もその時に命を失い、ギレインはなし崩し的に隊長へ任命されたらしい。
「魔獣狩りで生計を立てているという割に実力が俺より劣っていたのは、そういう理由があったのか」
「レインズさんは普通に強いと思いますよ?」
そんな事はない。
何度も言うが、俺はジラギースでは中の下の実力しか持っていないのだから。
「少し寄ってもいいか?」
「もちろんです! ギレインさんも喜ぶと思いますよ!」
いきなり模擬戦を挑まれなければいいけどな。
そんな事を考えながら足を進め、俺たちは自警団が訓練を行っている村の外れにやって来た。
そこではギースがギレインに打ち込みを行っている。
ギースの打ち込みには一撃の重さはあるものの、鋭さはない。
相手の狙いが分かれば受け流す事は容易く、ギレインは苦も無くギースの一撃を回避し、背中に軽い打ち込みを決めていた。
「痛いっ!」
「だからー! 力任せに剣を振っても意味がねえって言ってるじゃねえか!」
「そうだけど、もっとこう、ちゃんとしたアドバイスとかないのかよ!」
「まずは基礎だよ、基礎! 俺だってそうだったんだからな!」
……うーん、言っている事は間違いないんだが、ちゃんと指導する事も大事なんだけどなぁ。
ギースの動きを見るに、その基礎が間違っているように思えてならない。
「……よし、ギレインさーん!」
「えっ? ちょっと、リムル!?」
訓練の邪魔にならないようにと遠くから見ていたのだが、何故だかリムルが声を掛けてしまった。
「んあ? なんだ、リムルにレインズじゃねえか」
「レインズさん!」
「ちょっと、ギース君。リムルさんにも挨拶!」
二人の打ち合いをミリルも見ていたようだ。
……というか、自警団の訓練だと聞いていたのだが、この場には三人しかいないんだが。
「あの、他の自警団の方々は?」
「いねえよ。残りの七名は見回りと魔獣狩りに行ってる」
「七名って事は、全員で十名って事ですか?」
「そうなるな」
ウラナワ村の規模なら、それも普通なのかな。
……まあ、ジラギースと比べるのはさすがに申し訳ないか。
「リムルさん、どうしてこっちに?」
「レインズさんが、打ち合いの音を聞いてね。寄りたいって言ったから」
「なあなあ、レインズさん! 俺に剣を教えてくれよ! 親父の許可は貰ったからさ!」
「えっ? そうなんですか、ギレイン?」
実の息子の指導を他の者に任せてもいいのかと、俺は念のために確認を取る。
「俺よりもレインズの方が強いからな。強い相手から教わりたいって気持ちは、俺もわかるからよ」
「ですが……」
「それに、俺は物を教えるのが苦手でな。そもそも、隊長の器でもないんだよなぁ」
頭をガシガシと掻きながら、ギレインは苦笑いを浮かべる。
まあ、お互いに納得しているなら問題はないだろう。
「わかったよ、ギース。ただし、最初に言った通り、言葉使いには気をつけてもらうぞ」
「はい、師匠!」
「てめえ、俺には師匠とか言わなかったじゃねえか!」
「親父は親父じゃねえか! レインズさんは師匠だから――痛いっ!」
全く、言葉使いには気をつけろって言ったばかりだろうに。
「な、なんで師匠が拳骨!?」
「目上の者には敬語。これは基本中の基本だ」
「だけど、親父だ――痛いっ!」
「親父だろうがなかろうが、目上の者だろう。それに、ギレインはギースからしたら上司に当たるわけだ。なら、敬意を払うのは当然だ」
二度の拳骨で若干涙目になっているが、俺の言いたい事が伝わったのかギースはすぐにギレインに向き直ると、頭を下げていた。
「……す、すみませんでした、隊長!」
「あー、いや、俺の方こそすまんかったな。ちゃんと指導できなくて」
……まあ、最初だしこれくらいにしておくか。
っていうか、もしかしてリムルはこうなって欲しかったから声を掛けたのだろうか。
そう思ってリムルに視線を向けると――
「うふふ」
……うん、目が合って笑みを向けられてしまった。
これは完全に狙った結果のようだ。
「ありがたい事だけど、なかなか馴染めないなぁ」
俺の人生の中で、今のような動きがあると良い事があった試しがない。
まあ、女性運がなかったと言えばそれで終わりなのだが、それもこれもジーラギ国にいた頃の話である。
サクラハナ国に来て、さらにウラナワ村にいる間は、その時のような事が起こるとは思わない。
「……それじゃあ、ギース。早速だが、アドバイスをさせてもらってもいいか?」
「は、はい!」
となれば、俺は俺にできる事をやるだけだな。
――キンッ! キンキンッ!
その時、金属同士がぶつかり合う甲高い音が聞こえてきた。
「この音は?」
「自警団が訓練をしているんだと思います。ただ、人数は少ないですけどね」
「そうなのか?」
話を聞くと、数年前の魔獣討伐において多くの若い命が失われてしまい、今では自警団の数も少なくなってしまったのだとか。
当時の自警団の隊長もその時に命を失い、ギレインはなし崩し的に隊長へ任命されたらしい。
「魔獣狩りで生計を立てているという割に実力が俺より劣っていたのは、そういう理由があったのか」
「レインズさんは普通に強いと思いますよ?」
そんな事はない。
何度も言うが、俺はジラギースでは中の下の実力しか持っていないのだから。
「少し寄ってもいいか?」
「もちろんです! ギレインさんも喜ぶと思いますよ!」
いきなり模擬戦を挑まれなければいいけどな。
そんな事を考えながら足を進め、俺たちは自警団が訓練を行っている村の外れにやって来た。
そこではギースがギレインに打ち込みを行っている。
ギースの打ち込みには一撃の重さはあるものの、鋭さはない。
相手の狙いが分かれば受け流す事は容易く、ギレインは苦も無くギースの一撃を回避し、背中に軽い打ち込みを決めていた。
「痛いっ!」
「だからー! 力任せに剣を振っても意味がねえって言ってるじゃねえか!」
「そうだけど、もっとこう、ちゃんとしたアドバイスとかないのかよ!」
「まずは基礎だよ、基礎! 俺だってそうだったんだからな!」
……うーん、言っている事は間違いないんだが、ちゃんと指導する事も大事なんだけどなぁ。
ギースの動きを見るに、その基礎が間違っているように思えてならない。
「……よし、ギレインさーん!」
「えっ? ちょっと、リムル!?」
訓練の邪魔にならないようにと遠くから見ていたのだが、何故だかリムルが声を掛けてしまった。
「んあ? なんだ、リムルにレインズじゃねえか」
「レインズさん!」
「ちょっと、ギース君。リムルさんにも挨拶!」
二人の打ち合いをミリルも見ていたようだ。
……というか、自警団の訓練だと聞いていたのだが、この場には三人しかいないんだが。
「あの、他の自警団の方々は?」
「いねえよ。残りの七名は見回りと魔獣狩りに行ってる」
「七名って事は、全員で十名って事ですか?」
「そうなるな」
ウラナワ村の規模なら、それも普通なのかな。
……まあ、ジラギースと比べるのはさすがに申し訳ないか。
「リムルさん、どうしてこっちに?」
「レインズさんが、打ち合いの音を聞いてね。寄りたいって言ったから」
「なあなあ、レインズさん! 俺に剣を教えてくれよ! 親父の許可は貰ったからさ!」
「えっ? そうなんですか、ギレイン?」
実の息子の指導を他の者に任せてもいいのかと、俺は念のために確認を取る。
「俺よりもレインズの方が強いからな。強い相手から教わりたいって気持ちは、俺もわかるからよ」
「ですが……」
「それに、俺は物を教えるのが苦手でな。そもそも、隊長の器でもないんだよなぁ」
頭をガシガシと掻きながら、ギレインは苦笑いを浮かべる。
まあ、お互いに納得しているなら問題はないだろう。
「わかったよ、ギース。ただし、最初に言った通り、言葉使いには気をつけてもらうぞ」
「はい、師匠!」
「てめえ、俺には師匠とか言わなかったじゃねえか!」
「親父は親父じゃねえか! レインズさんは師匠だから――痛いっ!」
全く、言葉使いには気をつけろって言ったばかりだろうに。
「な、なんで師匠が拳骨!?」
「目上の者には敬語。これは基本中の基本だ」
「だけど、親父だ――痛いっ!」
「親父だろうがなかろうが、目上の者だろう。それに、ギレインはギースからしたら上司に当たるわけだ。なら、敬意を払うのは当然だ」
二度の拳骨で若干涙目になっているが、俺の言いたい事が伝わったのかギースはすぐにギレインに向き直ると、頭を下げていた。
「……す、すみませんでした、隊長!」
「あー、いや、俺の方こそすまんかったな。ちゃんと指導できなくて」
……まあ、最初だしこれくらいにしておくか。
っていうか、もしかしてリムルはこうなって欲しかったから声を掛けたのだろうか。
そう思ってリムルに視線を向けると――
「うふふ」
……うん、目が合って笑みを向けられてしまった。
これは完全に狙った結果のようだ。
「ありがたい事だけど、なかなか馴染めないなぁ」
俺の人生の中で、今のような動きがあると良い事があった試しがない。
まあ、女性運がなかったと言えばそれで終わりなのだが、それもこれもジーラギ国にいた頃の話である。
サクラハナ国に来て、さらにウラナワ村にいる間は、その時のような事が起こるとは思わない。
「……それじゃあ、ギース。早速だが、アドバイスをさせてもらってもいいか?」
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