門番として20年勤めていましたが、不当解雇により国を出ます ~唯一無二の魔獣キラーを追放した祖国は魔獣に蹂躙されているようです~

渡琉兎

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第一章:不当解雇

第30話:初めての見回り

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 翌日の明朝、俺は村長と一緒にウラナワ村の門にやって来ていた。
 門番の休憩所を直す……わけではない。

「あれ? どうして村長とレインズさんがいるの?」

 声を掛けてきたのはメリースさんだ。
 話を聞くと、村の見回りは朝、昼、夜と分かれており、実際に魔獣を見て情報を集めるならば朝の方がいいだろうと村長は口にした。
 そして、見回りに出る自警団がこの時間に門へと集まるという事でやって来たのだ。

「今日は、レインズ殿も一緒に連れて行ってくれんか?」
「魔獣の情報を得たいんです」

 俺が理由を口にすると、メリースさんは二つ返事で頷いてくれた。

「そろそろカリーが来るはずだから……っと、ちょうど来たみたいね」

 そう口にしながらメリースさんが手を振ると、門の内側から一人の女性が遠慮がちに手を振りながら近づいてきた。

「おはようございます、村長。それにメリースも。そちらは、レインズさんですね?」
「はい。では、あなたが?」
「カリーと申します。模擬戦で審判をしていた、クランキーの妻です」

 簡単な挨拶を終えてから俺がここにいる理由を説明すると、カリーさんもすぐ同行に頷いてくれた。

「レインズさんのスキルについては聞いています。頼りにしていますね」
「あら、カリー。それは、私が頼りないって言っているのかしら?」
「メリースは考えなしに突っ込んでいくから、心配なんですよ。ギレインと同じでね」

 どうやら、ギレインとメリースさんは似たもの夫婦なのかもしれないな。
 そんな事を考えていると、見回りの時間がやって来たようだ。

「それじゃあ、向かいましょうか!」
「そうですね」
「よろしくお願いします」
「気をつけて、いってらっしゃいませ」

 村長に会釈を返し、俺たちは見回りに出た。

 ウラナワ村の周囲にはCランク以上の魔獣はいない。
 それは魔獣キラーを持つ俺にとっては楽な狩りとなり、見回りに慣れた二人がいれば観察も容易になる……そう思っていた。

「ねえねえ! レインズさんはリムルの事、どう思ってるのよ!」
「どうとは、どういう事ですか?」
「もう! わかってるくせにー!」
「ちょっと、メリース。レインズさん、困ってるじゃないですか」
「でもでもー! 気になるじゃないのよー! それで、どう思ってるのよ!」

 ……ずっと、こんな感じなんだ。
 周囲に魔獣の気配がないからといって、こうも無駄な話をしていていいのかと心配になってしまう。それくらいに、ずっとこの感じが続いているのだ。

「……デン、どうにかしてくれ」
『我に頼るな。自分でどうにかしろ』
「そうそう! デン君は関係ない! 私はレインズさんに聞いてるんだからね!」
「ちょっと、メリース!」

 カリーさんはなんとか止めようとしてくれているのだが、メリースさんが止まる気配はない。
 むしろ、時間が経つにつれて加速しているように思える。

「カ、カリーさん。この辺りの魔獣は少ないんですか?」

 というわけで、俺はカリーさんに話を振って話題を変える事にした。

「ちょっと、レインズさん! 私と話をしてた――」
「え、えぇ、そうですね。普段から魔獣狩りをしているので、この辺りは少ないです。山向こうから魔獣がやって来たら、それを報告して狩るといった感じでしょうか」

 そして、カリーさんも俺の話題に乗ってくれた。

「確かに、魔獣はだいぶ遠くにいるみたいですけど……」
「えっ? い、いるんですか? メリース、わかる?」
「……」
「……ちょっと、拗ねないでよ!」
「……はぁ。私が察知できる範囲にはいませんよーだ!」

 見回りで魔獣の存在を口にされ、それでなお拗ねるって、大丈夫なんだろうか。
 だが、ここからだと一日以上かかるだろうし、あちらもウラナワ村の存在に気づいていないようだから問題はないだろう。

「これも、スキルの効果なのですか?」
「まあ、そんな感じ……ん?」
「何、どうしたの?」

 ……おかしい。
 俺の察知できる範囲には確かに存在しなかった気配が、突然現れた?

『……匂うな』
「デンも気づいたか?」
『あぁ。だが、これはあまり良い匂いではない』
「だろうな。突然現れたみたいだ」

 デンも俺と同意見のようで、すぐに二人に状況を報告する。

「ここから2キロほど先に、魔獣が現れました」
「に、2キロですって!?」
「魔獣によってはすぐに到達する距離じゃないですか!」
「突然現れたように感じます。それに、この気配は……」

 すぐに引き返してギレインに報告するべきか、それとも魔獣を討伐するべきか。
 Cランク以上が現れないと思っていた矢先にこれでと、報告に戻らせるべきかもしれない。

「……おそらく、Bランク以上の魔獣がいます! 二人はこの事をギレインさんに!」
「なあっ! Bランク以上だって!」
「レ、レインズさんはどうするおつもりなんですか?」

 どうするも何も、俺がやるべき事は一つしかない。

「俺とデンで、魔獣を討伐します! いけるな、デン!」
『我を誰だと思っておる。無論、容易い』

 言うが早いか、デンが影から姿を現すと、俺はその背に跨って真っすぐに魔獣の方へと駆け出した。
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