門番として20年勤めていましたが、不当解雇により国を出ます ~唯一無二の魔獣キラーを追放した祖国は魔獣に蹂躙されているようです~

渡琉兎

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第一章:不当解雇

第31話:VS Bランク魔獣

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 デンのスピードをもってすれば、魔獣の場所まで3分も掛からないだろう。
 その間にもできる事をしておかなければならない。

「デン」
「なんだ?」
「お前は、魔獣の気配に気づいていたか?」
「いいや、気づかなかった。何やら、突如として現れたように感じたが」
「俺も同意見だ」

 そう、今回の魔獣はその場所に忽然と気配を現したのだ。
 元から気配を消して移動していたという可能性も否定はできないが、それにしても突然過ぎた。
 漏れ出た気配を察知したわけではなく、本当に忽然と現れた。まるで、今まさに生まれ落ちたかのような感じなのだ。

「ひょっとしたら、ウラナワ村周辺の魔獣が進化したのか?」
「可能性はあるだろうな。昨日の村長の話では、相当数の魔獣を狩ってきているだろうからな」

 もしそうだとしたら、タイミングが悪すぎる。
 今のウラナワ村では前隊長が亡くなり、獣キラー持ちと多くの若者が村を去っている。あまりにも戦力が足りなさ過ぎた。

「もしかすると、村長はこうなる事を悟って移住者を集めていたのかもしれないな」
「進化の周期なんて、そうそうわかるものではないだろう」
「普通はそうだ。だが、ウラナワ村では魔獣狩りで生計を立てているのだろう? ならば、過去に起きた魔獣の進化について調べている者がいれば、ある程度の予測を立てる事はできるのではないか?」

 デンの言っている事にも一理ある。
 その事を知っている者がどれくらいいるのかはわからないが、もしそうだとしたら間一髪だったかもしれないな。

「なら、俺もすぐに役に立てるかもしれないな」
「お主ならば、Bランク魔獣なんぞ物の数にも入らんだろう」
「警戒はすべきだけどな」
「ふん! SSSランクの我を従えておいて、よく言うわ」

 少しだけデンが不機嫌になった気もするが、そのうち元に戻るだろう。
 何せ、デンも魔獣と相対する時には気を抜くなと昔は言ってくれていたからな。
 ……しかし、最近はどうして言わなくなってしまったんだろうか。後で聞いてみるかな。

「そろそろ見えてくるぞ」
「わかった。数は三匹だから、俺が右の二匹をやる。デンは左の一匹を」
「喰らってしまってもいいのか?」
「問題ない。こっちの魔獣を村長に見せるから」

 俺の言葉に、デンは久しぶりに獰猛な笑みを浮かべる。
 本当ならそのまま食わせてやりたいが、魔獣がいたという証拠を提出したいし、これが素材になるなら金にもなるからな。

『グルオオオオアアアアアアアアッ!』
「角付き、二足歩行の人型魔獣が三匹か」
「名前は」
「こいつは……オーガと出たな」

 これも魔獣キラーの効果の一つ。
 相手が魔獣であれば、その名前や特徴を瞬時に知識として知る事ができる。
 初見の魔獣でもそうなのだから、本当にありがたいスキルだ。

「ジーラギ国の人たちが妬む気持ちも、わからなくはないか」
「ない物ねだりであろう、あいつらのは」

 おっと、心の声が漏れてしまったか。
 とにかく、まずはオーガを仕留めてしまおう。
 俺は走るデンから飛び降りると、着地と同時に手前にいたオーガへ駆け出して間合いに納める。
 そして、剣の柄に手を掛けるのとほぼ同時に抜き放つ。

 ――ザンッ!

 邂逅して1秒ほど、一匹目のオーガの首が宙を舞った。

『グ、グルオオアアアアァァッ!』
「うおっと! さすがに、もう一匹は反撃に出たか!」

 同族が死んだからか、それとも魔獣としての本能か、オーガは真っ赤な瞳でこちらを睨みつけながら腕を振り抜いてきた。
 軽く飛び退いて回避するとともに距離を取り、剣を構えて視界の中にオーガの全身を捉える。

「……額、首、左胸か。急所は人間とほとんど変わらないな」

 俺の視界の中には、オーガの急所となる部分が黒い靄として浮かび上がっている。
 Bランク以上の魔獣からは魔石を回収する事もできるので、なるべくなら魔石を傷つける事なく仕留めてしまいたい。
 この魔石、結構な値段で売買されるからな。

「左胸に魔石があると考えると、狙うなら首か額だな」

 しかし、急所がわかったからといって、そう簡単に狙えるはずもない。
 オーガだって自分の急所は理解しており、そこを重点的に守ってくるからな。
 あちらから飛び込んできてくれたらカウンターを狙って首を落とせそうだが、なかなか警戒心の高い魔獣だ。

『グルルルルゥゥ』
「……仕方ない。こちらからいくか!」

 俺はその場で剣を振り抜くとバードスラッシュを放つ。
 腕を盾にしてくれたらよかったのだが、オーガは危険を察知したのか素早い動きで回避してしまう。
 魔獣キラーの効果が上乗せされているから、腕くらいなら両断できたものを。

「だが、回避するならこっちだよなあっ!」
『グルアッ!?』

 俺はオーガの動きを先読みし、飛び退いた先へとバードスラッシュ放ってから即座に移動していた。
 間合いに飛び込んできたオーガに対して、俺は剣を振り抜いた。
 首を守る左腕を落とし、次いで額を守る右腕を斬り飛ばす。
 眼前に映し出された驚愕の表情を見つめながら三度剣を振り抜くと、俺はオーガの首を刎ねて血を振り払う。

「よし! デンは――」
「呼んだか?」
「どわあっ!?」

 振り返ったすぐ先にデンの顔があり、俺は変な声をあげながら驚いてしまう。

「……ったく、驚かせるなよな」
「勝手に驚いたのはお主であろう。しかし、オーガは不味いのう。こんなもんを腹いっぱい食べたくはないわ」

 その言葉を口の周りに血をたっぷり付けて言うのかよ、お前は。

「まあ、無事ならそれで構わな――!」

 オーガは討伐した。
 しかし、俺の背後から突如として現れた気配に全身から汗が噴き出した。
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