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第一章:不当解雇

第48話:移住希望の目的

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 村長の屋敷では、レジーナさんとリムルも同席しての話し合いになった。
 何故リムルがいるのかと言えば、何を言っても帰ってくれなかったからだ。
 いったい何をそんなに心配しているのか、さっぱりわからない。

「ふむ。ではお二人は、レインズ殿の助言に従ってジーラギ国を出たという事なのですな?」
「はい。レインズが解雇された翌日には希望退職者の募集が出たので、それに乗っかる形で退職し、そのまま国を出ようと」
「え? という事は、二人はあの後すぐに国を出る決断をしたって事か? エリカも?」

 ガジルさんは残る理由はないと即答していたから理解できるが、エリカまで?

「そうですよ。先輩を蔑ろにした兵士しかいない場所に、私が留まる理由なんてありませんから!」

 ……ものすごくどうでもいい理由だったな。

「ですが、生まれてから一度も国を出た事がないものですから、どうせ出るならばレインズがいる場所に行ってみてもいいかと考えたんです」
「そちらのお嬢さんも同じ考えですかな?」
「私ですか? えっと、私は……その……」

 おいおい、どうしてそこで言い淀むんだよ。変に疑われるのは良くないんだがな。

「あなた」
「ん? どうした、レジーナ?」
「あまり深入りしては可哀想ですよ」
「可哀想? ……あぁ、なるほど。そういう事じゃったか」

 そういう事って、どういう事だ? どうして村長もレジーナさんも、俺を見て微笑んでいるんだ?

「まあ、退職するための書類が上までいくのに時間が掛かってしまいまして、結局は今になってしまったんですが」
「そういう事でしたか。わかりました。であれば、我々はお二人を迎え入れたいと思います」
「むしろ、大歓迎ですよ。よろしくお願いしますね、ガジルさん、エリカさん」

 疑問が解消される前に視線は二人に向かい、村長もレジーナさんも頷いた。

「ありがとうございます。自分たちにできる事があれば、なんでも申し付けてください」
「わ、私も! 恩返しさせてください!」
「ほほほ。そこまで気負わなくても大丈夫ですよ。じゃが……もしよろしければ、情報を頂けませんかな?」

 ん? 村長の雰囲気が柔らかいものから、突然張りつめたものに変わった。

「情報と言うのは、ジーラギ国についてですか?」
「その通りです。レインズ殿からも話は聞いていましたが、もしジーラギ国が魔獣によって滅ぼされてしまった場合、魔獣が海を越えて他国に流れてくるかもしれません。そして、それはサクラハナ国も例外ではない」
「……確かに、その通りですね。でしたら、自分たちが国を出る直前までの情報でよろしければ、お伝えいたします」

 そして、ガジルさんから数日前のジーラギ国の状況について説明が口にされた。

 大体は俺の助言通りに事が動いていたらしく、間引きのおかげで数日は魔獣の脅威はなかったらしい。
 しかし、ある日を境にジストの森から大量の魔獣が溢れ出したのだとか。
 最初こそ兵士だけで対処ができていたようだが、その数は日を重ねるごとに増えていき、城を守る騎士まで動員されることになった。

「自分たちはその時すでに退職しており、身を守りながら港町のアクアラインズまで移動した、という流れになります」
「なあ、ガジルさん。兵士たちは魔獣との戦闘に慣れていたよな? ……多少は」
「多少はな。だが、俺たち以外はレインズの言葉に耳を貸さなかっただろう? 俺たちを基準にするんじゃないぞ?」

 言われて気づいた事だが、確かに二人以外の兵士は俺の言葉に耳を貸さなかった。
 どうすれば魔獣を倒しやすいのか、魔獣それぞれの弱点なども聞いてくれなかった。
 声を掛けようものなら、言葉の暴力をもって返されていた。

「……確かに、二人を基準にしたらダメだな。しかし、そうなると騎士はどうなんだ? 魔獣との戦闘経験は?」
「それなりにあったみたいだな。遠目からしか見ていないが、十分戦えていたように見えた」
「騎士になるような人たちは、元々の実力が高いからね。それなりに順応したんじゃないかしら」

 ……そうなると、まだしばらくは大丈夫かもしれないな。

「そうでしたか。貴重な情報、ありがとうございます」
「本日はこちらの屋敷に泊まっていってください。夜にはお二人を歓迎する祝いをいたしますね」
「そんな! 祝いだなんて、食料もばかにならないでしょう?」
「いえいえ。実は先日、レインズ殿の活躍で村が救われたばかりでして。魔獣の肉ならば大量にあるのですよ」
「えっ? 先日と言うのは?」

 そこからはハイオーガエンペラーが現れた魔獣討伐の話になり、ガジルさんとエリカが呆れ顔をこちらに向けてくる。
 だが、その表情には嬉しさのようなものが含まれていたように見えた。

「そうか。……うん、よかったな、レインズ」
「何が良かったんですか?」
「えぇっ!? 先輩のスキルが褒められたんですよ! もっと喜んでくださいよ!」
「あ、あぁ、そうだな……そうなのか?」
「「なんでわからないのかなあ!?」」

 いや、魔獣キラーを心配してくれているのはありがたいんだけど……そこまでか?

「……」

 ……うーん、それよりも今は気になる事があるから、とりあえず曖昧に笑っておこうかな。
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