門番として20年勤めていましたが、不当解雇により国を出ます ~唯一無二の魔獣キラーを追放した祖国は魔獣に蹂躙されているようです~

渡琉兎

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第一章:不当解雇

第49話:二人の歓迎の宴

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 その日の夜、メリースさんが言った通りに二人の歓迎の宴が行われた。場所は俺の時と同じで中央広場だ。
 これまた前回と同じだが、すでにギレインが酔っぱらいと化している。
 主役である二人は村長とメリースさんに改めてお礼を口にすると、他の住民たちへの挨拶回りに行ってしまった。
 ちなみに、デンはまたしても子供たちに乗っかられている。
 最初は助けを求めるようにこちらを見ていたが、今では慣れたものなのか上手くあしらっていた。

「……それじゃあ、俺は俺のやるべき事をするか」

 松明の側に立って一人で酒を飲んでいたのだが、目的の人物を見つけたのでそちらに移動する。

「リムル」
「あ……楽しんでますか、レインズさん」

 うーん、やはり何か元気がないな。
 ガジルさんとエリカが来てからずっとだし、二人が何か関係しているのだろうか。

「元気がないな。何かあったのか?」
「いいえ、何もありませんよ? そんな風に見えましたか?」
「ものすごく。俺以上に顔に出ているんじゃないか?」
「レインズさん以上に? ……うふふ、それって自分を貶していませんか?」
「む、そうか? そんなつもりはなかったんだがな」
「そうなんですか?」

 うんうん、やはり女性は笑っている方が似合っているな。
 だが、まだ本調子ってわけでもなさそうだ。

「……気になっている事があるなら、聞くぞ?」

 俺の言葉に、リムルはまた表情を硬くしてしまった。
 だが、今回はだんまりと言うわけではなく、口を開いてくれた。

「私、バカなんです」
「……えっ?」
「バカでバカで、本当にしょうがないバカなんです」

 ……これは、どういう状況なんでしょうか?

「勝手にエリカさんに嫉妬して、悔しくなって、だけど何も言えなくて。……本当の本当に、バカなんです」
「いや、別にリムルはバカではないと思うぞ?」
「違うんです! ……そうじゃ、ないんです」

 ……待て待て、おいおい! そこで泣かれると俺が泣かしたみたいじゃないか! いや、事実俺が泣かしたようなもんだけどさあっ!?

「いよーし! ガジル、俺と模擬戦をするぞ!」
「いいぜ! 自警団隊長様の実力、確かめてやるぜ!」

 あっちはあっちでなんか盛り上がってるし! こっちを助けて欲しいんですが!

「……レインズさんは、どんな女性が好みなんですか?」
「……へっ?」
「女性の好みです!」

 と、唐突になんて質問をしているんだ、リムルは!?

「えっと、そ、そうだなぁ……せ、誠実でー、優しい人が、いいかなー!」
「誠実で、優しい人、ですか?」
「あ、あぁ! そうだな!」

 こ、これで落ち着いてくれれば――

「それじゃあ、誠実で優しい人に心当たりはありますか?」

 まだ続くのねこの質問!

「あー、えっとー、い、今はまだ、心当たりはないかなー」
「……そうですか」

 ぐぬっ! 今の返事はマズかったのか? どうして落ち込んでしまったんだ?

「レーイーンーズーせーんーぱーい!」
「エ、エリカ! 良いところに――ぶふっ!?」

 振り返った先から突っ込んできたのは、まさかの柔らかな感触の胸だった。
 こいつ、普段は胸当てをしていて気づかなかったが意外と……って、今はそういう状況じゃないから!

「は、離れろバカ!」
「えぇー! 酷いですよー、せんぱーい!」
「……お前、相当酔ってるだろ?」
「これくらい、酔ったに入りませんってばー!」
「ったく、ガジルさんもお前も飲み過ぎだっての。リムル、すまんがこいつの看病を……えっ?」

 ……ま、待て待て待て待て! マジで待ってくれ!
 え、笑顔の奥にものすごい怒気を孕んでいるように見えるのは、俺の気のせいなのか? 気のせいだよな!

「…………レインズさん?」
「は、はい!」
「……私、負けませんからね!」
「負けないって、何に――どわあっ!」

 言葉の半ばで左腕を引っ張られた俺は、その腕をギュッとリムルが抱きしめてきた。
 こちらにも柔らかな感触が伝わってきてしまい、どうしたらいいのかわからず硬直してしまう。

「あぁー! リムルさん、ずるいですよー! 私だって、えーい!」

 そして、俺が硬直しているのをいい事に、今度はエリカが右腕にしがみついてきた。

「お、お前は悪酔いが過ぎるぞ!」
「でもでもー、リムルさんだって酔ってますよー?」
「あぁ? リムルが酒を飲んでるとか……飲んでる、とか……え、飲んでるの?」
「…………えへへ~。これ、とってもおいひいんれすよ~」

 マジかよ! さっきまでのしっかりした会話は何だったんだ!

「……しょうぶれすよ、エリカしゃん!」
「……お互い、後腐れなくやりましょう!」

 最終的には俺の目の前で握手までしてくれている。
 その時にでも、腕を離してくれたら逃げ出せたのに。

「うおっ!」
「ガハハハハッ! こんなんじゃあ魔獣にあっさりと殺されるぞ、自警団隊長殿!」
「親父! あっさり負け過ぎだろう!」
「よーし! これで酒代がごっそり浮いたわ!」

 ……くっ! 俺もそっちに交ざりたいぜ!
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