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第二章:護衛依頼
第53話:予期せぬ遭遇
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ガジルさんとの模擬戦も終わり、俺たちは自警団本部に足を運んだ。
気の昂りも収まり、十分に体を動かせた。
まだまだガジルさんには敵わないと実感もできたし、これからも精進は必要だな。
「あれ? リムル?」
「レインズさん?」
まさか自警団本部でリムルと顔を合わせるとは思っておらず、堪らず声を漏らしてしまった。
だが、この状況を見ればリムルがいるのも頷ける。
「ギースの手当てをしていたのか?」
「はい」
「掠り傷だからいいって言ったんだけど、ミリルの奴がリムル姉を呼んできたんだよ」
「傷は放っておいたら悪化するのよ! すぐに治さなきゃダメなの!」
「ミリルの言う通りだな。それにギース、お前がミスをしたってエリカから聞いたぞ?」
「うぐっ!」
「なんだ、そうなのか、ギース?」
俺の問い掛けに反応を示したのはギレインだった。
まあ、ギースの父親だし、子供のせいで仲間が危険に晒されたとなれば反応したくもなるか。
「……」
「何をしたんだ?」
「……えっと、その」
「……なんだ?」
「…………くしゃみ」
……あー、それはダメだろ。
「お前はバカか! バカなんだな! 魔獣を前にしてくしゃみとか、どれだけ気を抜いてるんだよ!」
「べ、別に気を抜いていたとかじゃないって! 我慢ができなくなっちまって――」
「そんな言い訳が立つか! それでメリースやミリル、エリカが死んだらどうするんだこらあっ!」
さすがにこれは庇い切れない。圧倒的にギレインの意見が正論だ。
というわけで、ギースへの説教は師匠の俺ではなく父親のギレインに任せてしまおう。
「それで、治療は終わったのか?」
「もう終わりました」
「あの、ありがとうございました、リムルお姉ちゃん」
「いいのよ、ミリルちゃん」
リムルは優しくミリルの頭を撫でながら微笑んだ。
「それじゃあ私は行きますね」
「待ってくれ、リムル。俺も行くよ」
「は、はい!」
少しだけゆっくりするつもりだったが、ギレインの様子を見るにそれはできなさそうだ。
俺はガジルさんに断りを入れると、そのままリムルと一緒に歩き出した。
中央広場までやって来ると、ベンチに腰掛けて一休みする。
そもそも、ゆっくりするために自警団本部に行ったのだから当然の事だろう。
「お疲れ様でした、レインズさん」
「リムルの方もな。回復魔法を使うのに疲れとかあるのか?」
魔法に関しては俺の門外漢だ。
使う者を見た事はあるが、詳しい事は全く知らない。
「精神力を使います」
「精神力?」
「はい。それが高い者は何度も魔法を使えるらしいのですが、私は一日に十回使えるかどうかといった感じで、まだまだなんです」
「へぇ、そんな感じなのか」
「エミリー先生やレジーナさんは私なんかよりもたくさん使えますし、回復できる傷の度合いも大きいんですよ」
確か、治療院自体はレジーナさんが造っていて、それを引き継いだのがエミリー先生だったか。
先生の先生がレジーナさんだって事なら、相当凄い回復魔法を使えるんだろうな。
「俺もリムルもまだまだ精進が必要だって事だな」
「レインズさんは十分お強いと思いますよ?」
「今日の模擬戦でガジルさんに負けたよ。俺もまだまだだ」
「ガジルさんも、とてもお強いのですね」
「いまだに一本も勝たせてもらえていないからな」
どうにか勝とうと策を講じても、全てを看破され負かされてしまう。
俺の顔に何か書かれているのかと思ってしまうくらいに全てを見透かされてしまうのだ。
「エリカには勝てるんだがなぁ。ガジルさんにはどうしても――」
「レ、レインズさん?」
「ん? どうしたんだ、リムル?」
突然どうしたんだろうか。
何やら恥ずかしそうにしているが、聞きたい事でもあるのか?
「……その、エリカさんとは、やはり深い関係なのでは?」
「深い関係?」
深い関係って、何の事だ?
「エリカとは同僚だが?」
「……本当に、それだけですか?」
「あぁ。まあ、同僚の中でも唯一話ができた相手だし、一番深い関係だったと言えばそうなるのかもしれないが……」
別に恋仲だったとか、そういう関係ではない。
剣で語り合い、俺の事を理解してくれた唯一の同僚。
ガジルさんは上司だから同僚とは違うかもしれないけど、二人が俺にとってかけがえのない存在である事に変わりはないが……って、おいおい。
「どうしてそんなに悔しそうな顔をしているんだ?」
「な、なんでもありません!」
「……いや、絶対に何かあるだろ! 何だよ、その顔は!」
「だからなんでもないんですってば!」
まだまだ短い付き合いだが、わかった事もある。
こうなったリムルと止める事はできないという事だ。
「……はぁ」
「あぁー! ため息をつきましたね! 酷いですよ、レインズさん!」
「だから、その悔しそうな顔の理由を教えてくれないか?」
「お、教えられないんですよ!」
「……はああああぁぁ」
「ひ、酷いですってば! レインズさーん!」
……俺にはもう、どうしようもないわ。
気の昂りも収まり、十分に体を動かせた。
まだまだガジルさんには敵わないと実感もできたし、これからも精進は必要だな。
「あれ? リムル?」
「レインズさん?」
まさか自警団本部でリムルと顔を合わせるとは思っておらず、堪らず声を漏らしてしまった。
だが、この状況を見ればリムルがいるのも頷ける。
「ギースの手当てをしていたのか?」
「はい」
「掠り傷だからいいって言ったんだけど、ミリルの奴がリムル姉を呼んできたんだよ」
「傷は放っておいたら悪化するのよ! すぐに治さなきゃダメなの!」
「ミリルの言う通りだな。それにギース、お前がミスをしたってエリカから聞いたぞ?」
「うぐっ!」
「なんだ、そうなのか、ギース?」
俺の問い掛けに反応を示したのはギレインだった。
まあ、ギースの父親だし、子供のせいで仲間が危険に晒されたとなれば反応したくもなるか。
「……」
「何をしたんだ?」
「……えっと、その」
「……なんだ?」
「…………くしゃみ」
……あー、それはダメだろ。
「お前はバカか! バカなんだな! 魔獣を前にしてくしゃみとか、どれだけ気を抜いてるんだよ!」
「べ、別に気を抜いていたとかじゃないって! 我慢ができなくなっちまって――」
「そんな言い訳が立つか! それでメリースやミリル、エリカが死んだらどうするんだこらあっ!」
さすがにこれは庇い切れない。圧倒的にギレインの意見が正論だ。
というわけで、ギースへの説教は師匠の俺ではなく父親のギレインに任せてしまおう。
「それで、治療は終わったのか?」
「もう終わりました」
「あの、ありがとうございました、リムルお姉ちゃん」
「いいのよ、ミリルちゃん」
リムルは優しくミリルの頭を撫でながら微笑んだ。
「それじゃあ私は行きますね」
「待ってくれ、リムル。俺も行くよ」
「は、はい!」
少しだけゆっくりするつもりだったが、ギレインの様子を見るにそれはできなさそうだ。
俺はガジルさんに断りを入れると、そのままリムルと一緒に歩き出した。
中央広場までやって来ると、ベンチに腰掛けて一休みする。
そもそも、ゆっくりするために自警団本部に行ったのだから当然の事だろう。
「お疲れ様でした、レインズさん」
「リムルの方もな。回復魔法を使うのに疲れとかあるのか?」
魔法に関しては俺の門外漢だ。
使う者を見た事はあるが、詳しい事は全く知らない。
「精神力を使います」
「精神力?」
「はい。それが高い者は何度も魔法を使えるらしいのですが、私は一日に十回使えるかどうかといった感じで、まだまだなんです」
「へぇ、そんな感じなのか」
「エミリー先生やレジーナさんは私なんかよりもたくさん使えますし、回復できる傷の度合いも大きいんですよ」
確か、治療院自体はレジーナさんが造っていて、それを引き継いだのがエミリー先生だったか。
先生の先生がレジーナさんだって事なら、相当凄い回復魔法を使えるんだろうな。
「俺もリムルもまだまだ精進が必要だって事だな」
「レインズさんは十分お強いと思いますよ?」
「今日の模擬戦でガジルさんに負けたよ。俺もまだまだだ」
「ガジルさんも、とてもお強いのですね」
「いまだに一本も勝たせてもらえていないからな」
どうにか勝とうと策を講じても、全てを看破され負かされてしまう。
俺の顔に何か書かれているのかと思ってしまうくらいに全てを見透かされてしまうのだ。
「エリカには勝てるんだがなぁ。ガジルさんにはどうしても――」
「レ、レインズさん?」
「ん? どうしたんだ、リムル?」
突然どうしたんだろうか。
何やら恥ずかしそうにしているが、聞きたい事でもあるのか?
「……その、エリカさんとは、やはり深い関係なのでは?」
「深い関係?」
深い関係って、何の事だ?
「エリカとは同僚だが?」
「……本当に、それだけですか?」
「あぁ。まあ、同僚の中でも唯一話ができた相手だし、一番深い関係だったと言えばそうなるのかもしれないが……」
別に恋仲だったとか、そういう関係ではない。
剣で語り合い、俺の事を理解してくれた唯一の同僚。
ガジルさんは上司だから同僚とは違うかもしれないけど、二人が俺にとってかけがえのない存在である事に変わりはないが……って、おいおい。
「どうしてそんなに悔しそうな顔をしているんだ?」
「な、なんでもありません!」
「……いや、絶対に何かあるだろ! 何だよ、その顔は!」
「だからなんでもないんですってば!」
まだまだ短い付き合いだが、わかった事もある。
こうなったリムルと止める事はできないという事だ。
「……はぁ」
「あぁー! ため息をつきましたね! 酷いですよ、レインズさん!」
「だから、その悔しそうな顔の理由を教えてくれないか?」
「お、教えられないんですよ!」
「……はああああぁぁ」
「ひ、酷いですってば! レインズさーん!」
……俺にはもう、どうしようもないわ。
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