門番として20年勤めていましたが、不当解雇により国を出ます ~唯一無二の魔獣キラーを追放した祖国は魔獣に蹂躙されているようです~

渡琉兎

文字の大きさ
69 / 107
第二章:護衛依頼

第64話:素材の売却

しおりを挟む
 商談が終わりバルスタッド商会を出ると、そこにはすでに馬車が待機していた。
 どうやら執事の方がタイミングよく移動させてくれたようだ。

「どうでした? ねえ、中はどうでしたか?」

 そして、合流早々にバルスタッド商会の中の確認は止めて欲しい。

「気になるならお前も入ればよかったじゃないか、エリカ」
「えぇ~? それはさすがに……緊張しちゃいますから」
「なら聞くな」
「酷いですよ! レインズ!」
「私も聞きたいな!」
「……お、俺も」
「お前らなぁ……はぁ。まあ、豪華だったよ。以上だ」
「「「……ええええぇぇ~? それだけ~?」」」

 こいつら、外だからって気持ちの切り替えが早すぎるだろう!

「ったく。ヒロさん、次はどこに行きますか?」
「冒険者ギルドにお願いします」
「あー……すみません、ヒロさん。その、やっぱり冒険者ギルドへの登録は……」

 ヒロさんとルシウスさんの話を聞いていくうちに、やっぱり登録は止めておこうと思った。
 ランクを上げるのも面倒そうだし、何より俺はウラナワ村の門番なのだ。
 それに、身分証のためだけに冒険者になるのは現役の冒険者に申し訳が立たない。

「あぁ、説明が足りませんでしたね。冒険者ギルドには、魔獣の素材を売りに行くんですよ」
「魔獣の素材ですか? ……そういえば、バルスタッド商会には売ってませんでしたね」

 大きな商会だから持ち込んだ商品は全て売却するのだと思っていたが、すっかり忘れていた。

「バルスタッド商会でも取り扱ってはいるんですが、魔獣素材は本職ではないのですよ。それに数が数ですから、ルシウスのところだけではお金の用立てが難しいかと思いましてね」
「……貴族家でも用立てできないくらいの金額になるんですか?」
「いえいえ、すぐには難しいという意味ですよ」

 いや、それでも十分に凄い金額になる気がするんだが。

「冒険者ギルドでは、登録していない者でも持ち込みで買い取ってくれます。手数料は取られますが、適正価格で買い取ってくれますから」
「直接別のお店に持ち込んでもいいんですか?」
「少量であれば可能ですが、素人では買い叩かれる事の方が多いでしょうね」

 うん、俺には商談なんて無理だな。もし小銭稼ぎで魔獣を狩ったなら、冒険者ギルドにお世話になろう。
 そうなると、やはり登録した方がいいのか? 売るにしても登録していたら何か特典のようなものがあるのだろうか。

「気になってきましたか?」
「……えっと、少しですが」
「もしかして、レインズは冒険者ギルドに登録するんですか?」
「えっ! そうなのか、師匠?」
「まだ考え中だ。ヒロさん、身分証になり得るものをウラナワ村で手に入れる事はできないんですか?」
「できはしますが……難しいと思います」

 どういう事か話を聞くと、他国からやって来た者であれば移住先の長がその土地の領主へ報告し、領主から王政府へ報告が上がり、そこで認可されれば領主へ知らせが入り、そこで発行される身分証を長が受け取り、移住者へ手渡すという流れになるらしい。
 正規の手順を踏むと一ヶ月、もしかするとそれ以上掛かる事もあり、さらに言えばほとんどの者がこのような面倒な手順を踏む事をしないので申請をしても忘れさられる可能性の方が高いのではないか、というのがヒロさんの見解だ。

「王政府は当然ですが、各地領主も暇ではありませんからね。むしろ、長が領主へ報告しに行ったところで門前払いを受ける可能性が一番高いです」
「……正規の手順なんて、あってないようなものですね」
「だからこそ、手軽に身分証を手に入れる事ができる冒険者ギルドは重宝されているのですよ。戦力の確保にもつながりますからね」
「でも、自己責任って事ですよね?」
「そういう事です」

 冒険者ギルドとは違って、商業ギルドの場合は店を持つにも定住する事がほとんどなので、登録はとても厳しい審査が必要にいなってくるのだとか。
 そうなると、最終的には冒険者ギルドに登録するという結論に至りそうだ。

「ちなみに、私は商業ギルドに登録しています」
「凄腕の革職人で、凄腕の商人ですからね」
「それも、永久会員です」
「……何ですか、それは?」
「ある一定の功績を残した場合、更新に必要な業績が無くとも失効しないというものですね」
「……さすがと言うべきですか?」
「過去の自分に感謝ですね」

 そんな話をヒロさんとしていると、御者台に乗り出してきたエリカとギースが声をあげた。

「私も登録したいです!」
「お、俺も!」

 おいおい、エリカは移住組だからわかるとして、ギースもか?

「ギースは必要ないだろう。身分証も持っていたし」
「身分証とか関係なく、冒険者には憧れがあるんですよ!」
「だが、一年に一回は依頼をこなさないと失効するらしいぞ? ウラナワ村の自警団であるギースには厳しいんじゃないか?」

 今回は馬車の中に潜り込んでいたからここにいるが、本来ならばいない存在だ。
 次にヒロさんがシュティナーザに来る時の護衛だって、俺かエリカになる可能性は高いし、そうなるとギースが依頼を達成する事はできない。
 結果として、あっという間に失効というわけだ。

「ギースがウラナワ村を出る時があれば、その時に登録しろ。一度失効すると、再登録は大変らしいぞ?」

 俺がそう説明すると、ギースはスゴスゴと荷台の方へ移動してしまった。
 だが、隣に移動してきたエリカは満面の笑みを浮かべている。
 ……こいつは、登録する気満々だな。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...