門番として20年勤めていましたが、不当解雇により国を出ます ~唯一無二の魔獣キラーを追放した祖国は魔獣に蹂躙されているようです~

渡琉兎

文字の大きさ
70 / 107
第二章:護衛依頼

第65話:冒険者ギルド

しおりを挟む
 到着した冒険者ギルドはバルスタッド商会程ではないが二階建ての石造り、大きくも頑丈な造りをした建物だ。
 ……ちょっと待て、冒険者ギルドってのは一商会よりも大きな組織だと思っていたんだが、それよりも大きい建物で商売をしているバルスタッド商会ってヤバくないか?
 俺のそんな気持ちなど知る由もなく、ヒロさんは慣れた様子で冒険者ギルドへ入っていく。

「私たちも行きましょう、レインズ!」
「お、俺は……」
「ギースとエリカはバージルと一緒に馬車を見ていてくれ」
「……はい」
「えっ! わ、私も行きたいんですけど!」
「お前の仕事は護衛だろう。エリカが行くなら俺が残るが、どうする?」

 俺たちの仕事は護衛であり、護衛対象はヒロさんとバージルの二人。
 一人が残るなら俺とエリカのどちらかは残らなければならないのは当然だろう。

「……私が残りますよ!」
「あぁ、頼む」

 バージルに視線を向けながらそう言っていたが、護衛対象の動きを観察するのは大事な事だ。

「ギースも頼むな」
「……少しくらい中を見るのもダメかな?」
「……はぁ。まあ、お前は護衛対象ではないからいいのか?」
「ギース君! 卑怯だよ!」
「うえぇっ!?」
「というわけで、ギースも残っておけ。しばらくはシュティナーザに滞在するんだから、顔を出す機会もあるだろう」

 落ち込むギースの肩を軽く叩くと、俺は場所を下りてヒロさんを追い掛ける。
 中に入ると老若男女、多くの人が建物内を行き交っていた。
 剣を腰に下げた者や屈強な肉体を晒している者、見た目で魔法師だと分かる者など、様々な衣装の者がいる。

「……凄い人だかりですね」
「これが普段の冒険者ギルドですよ。買取の窓口は一番奥ですから、壁際から向かいましょう」

 よく見てみると、人だかりができているのは受付の前の方で壁際は比較的空いている。
 この人だかりの中に迷うことなく入っていくヒロさんを見ていると、足が悪いという事を忘れてしまいそうになる。
 長い付き合いなんだろうと思うが、護衛するこちらとしてはハラハラしないわけでもない。

 ――ドンッ。

「おっと」
「大丈夫ですか、ヒロさん?」
「えぇ。すみません、レインズ君」

 そして、予想通りというか、肩が冒険者にぶつかってしまいよろけてしまった。
 周囲に人がいなかったのと、壁際だったこともありすぐに体を支えることができた。
 一方の冒険者は体がぶつかるのが普通なのだろう、特に気にした様子もなく歩き去ってしまう。

「いやはや、いつもの事とはいえ、やはりここは大変ですね」
「一緒に行きましょう。幸い、奥の方は空いているようですし」

 奥に進むにつれて人だかりは少なくなってきている。
 俺はヒロさんの手を取ると、それでも他の冒険者の邪魔にならないよう壁際からゆっくりと歩いていき、時間を掛けて買取の窓口に到着した。

「お疲れ様です。本日は買取ですか?」
「はい。村で討伐した魔獣の素材になるのですが、数が多かったのでこちらで買取りをお願いしたい」
「では、身分証をご提示いただけますか?」

 ふむ、素材の買取りにも身分証は必要になるのか。
 まあ、身分のはっきりしない者から素材を買い取る事にはリスクもあるだろうし、当然と言えば当然か。
 ヒロさんが商業ギルドのギルドカードを提示すると、受付嬢の表情が明らかに変わり、すぐに奥の部屋に案内されてしまった。

「こちらの個室は安全ですが、レインズ君はどうしますか?」
「俺がいなくても大丈夫なんですか?」
「お金の話をするだけですからね」
「それじゃあ、少しゆっくり見させてもらいます」

 ヒロさんから許しを得て、俺は少しの間だが別行動をする事にした。
 とはいえ、同じ建物内にいるのでヒロさんの気配に集中しておけばすぐに駆け付ける事も可能な距離は保っておこう。
 そんな感じで人の動きに目を向けると、何となくだが冒険者ギルドの仕組みが分かってきた。
 入口に近い窓口が冒険者が依頼を受ける窓口で、数も一番多い。
 次の窓口は恐らくだが依頼人が依頼を出す窓口だろう。並んでいる人は明らかに冒険者というか、非戦闘員といった感じの人ばかりだからだ。
 その次に並んでいる人たちは比較的に若く、緊張した面持ちを浮かべている者が多い。
 買取り窓口の隣なので良く見えるが、ここは冒険者ギルドの登録窓口なんだろうが、ここに35歳の俺が並んでたらバカにされるんだろうかと気になってしまう。
 窓口とは異なるが、入口から左に向かったところに広いスペースがあり、そこは食事処……じゃないな、酒場になっているようだ。
 明るい内から酒を飲んでいる冒険者もいるのかと驚いたが、よくよく考えるとジラギースでも昼間から隠れて飲んでいた兵士もいたし、こういった輩はどこに行っても少なからずいるという事だろう。

「――あれ? レインズかい?」

 そんな事を考えていると、突然後ろから声を掛けられた。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...