96 / 107
第二章:護衛依頼
第89話:凄惨の光景
しおりを挟む
ラコスタ討伐。
これにより緊急依頼は完了となり、この首を持っていけば報酬も得られるはずだ。
だが……冒険者の末路といえば話は完結するのだろうが、これはさすがに酷い光景だな。
「上半身が吹き飛んだ死体に、体がボロボロで誰なのかも分からない死体が四つか」
「……酷いね」
隣に立ったエリカも俺と同じ気持ちのようだ。
「そうかしら? 魔獣に食われて死んだ事すら分からない奴もいるし、ザックやこいつらはまだいい方なのよ?」
「「……え、そうなの?」」
「そうよー。まあ、死んだ事がギルドに伝わったところで何かがあるわけじゃないけど、親しかった冒険者くらいは弔いの酒くらいは準備してくれるんじゃないかしら?」
……冒険者って、大変なんだなぁ。
「まあ、ザックに親しい冒険者がいたかどうかは分からないけどねー!」
「……あ、明るいんだな」
「まあねー。……最期を看取ったあたいたちくらいは、明るく見送りたいじゃない? 明日は我が身って可能性もあるしね」
……あぁ、そういう事か。
レミーはザックを明るく見送ろうと、わざと明るく見せているのか。きっと自分が死んだ時もそうしてもらいたいと思っているんだろうな。
「……レミーは死なないだろう?」
「そんなもん分からないさ。低ランクの魔獣に奇襲を受ける可能性だってあるんだ、冒険者なんてもんはいつ死ぬかなんて分からないのさ」
「そんな……」
エリカはレミーを見つめながら悲しそうな顔を浮かべている。
だが、冒険者というものはそういうものなのだろう。命の危険がある事を承知で冒険者ギルドに登録をしている者ばかりだからな。
しかし、こいつらは違ったのだろう。魔獣を目の前にして止めろと口にし、死を怖がっていた。
死を怖がるのは理解できる、俺だって死ぬのは怖い。だが、生き残るために足掻く事を止めてまで口にする必要はないはずだ。
彼らには覚悟が足りなかった。だから最後の最後で動けなくなり、命乞いをした。
相手が人であったなら効果はあるかもしれない。だが、今回の相手は魔獣だったのだから全くの無意味だ。
「……やっぱり、俺は門番でいいかな」
「なんだい、死ぬ覚悟がないってのかい?」
「まあな。できる限りの事はするが、無理はしない。門番としてウラナワ村で生活ができればありがたいさ」
「……私も、無理だな。死にたくないもの」
「……そうかねぇ?」
何やらレミーは疑いの眼差しをこちらに向けているが、俺はできる事しかしない。
まあ、ハイオーガエンペラーの時には少しだけ無茶をしたがあれは必要な無茶だ。ラコスタに関しては倒せると踏んだから受けただけだからな。
二人が残っていると聞いた時は焦ったが、それでもこうして生きているのだから問題はないだろう。
「それじゃあ……レインズ! エリカ! さっさと戻って残党狩りだよ!」
「あっ! そっか、逃げた魔獣がシュティナーザに!」
「それはフリックさんが冒険者をまとめて防いでいるはずだ」
「フリック? ……あいつ、張り切りやがったねぇ」
とはいえ、戦域は大きく広がっているはずだ。
Eランク以下の冒険者が残っているとはいえ、悠長に時間を無駄にしている場合ではないか。
「分かった、急ごう!」
「はい!」
「ここからは蹂躙さね!」
俺はエリカに死んだ冒険者が使っていた剣を手渡した。使いたくないかもしれないが、武器もなしに魔獣の群れに突っ込ませるわけにはいかないからな。
「こうなるなら、先に昨日の剣を貰っておくんだったなぁ」
「あの時はまだハルクさんの移住は決まってなかったからな、仕方ないさ」
「レミーも槍は回収できたな!」
「はいよ!」
それぞれ武器を手にし、俺たちは森を引き返して残党狩りへと向かった。
森を抜けると冒険者たちと魔獣の戦いが続いていた。
だが、魔獣の数は見た目にも減っており、ラコスタの気配が消えたのを感じた魔獣から森の方へ引き返している。
それでも襲い掛かってくる魔獣だけを相手にしているような状況のようだ。
これならば時間の問題だろうと判断し、俺たちは散開して魔獣が多くいるところへ各自の判断で向かい各個撃破へと移っていく。
――しばらくして魔獣の咆哮が消えると、本当の意味でシュティナーザに平和が訪れたのだった。
これにより緊急依頼は完了となり、この首を持っていけば報酬も得られるはずだ。
だが……冒険者の末路といえば話は完結するのだろうが、これはさすがに酷い光景だな。
「上半身が吹き飛んだ死体に、体がボロボロで誰なのかも分からない死体が四つか」
「……酷いね」
隣に立ったエリカも俺と同じ気持ちのようだ。
「そうかしら? 魔獣に食われて死んだ事すら分からない奴もいるし、ザックやこいつらはまだいい方なのよ?」
「「……え、そうなの?」」
「そうよー。まあ、死んだ事がギルドに伝わったところで何かがあるわけじゃないけど、親しかった冒険者くらいは弔いの酒くらいは準備してくれるんじゃないかしら?」
……冒険者って、大変なんだなぁ。
「まあ、ザックに親しい冒険者がいたかどうかは分からないけどねー!」
「……あ、明るいんだな」
「まあねー。……最期を看取ったあたいたちくらいは、明るく見送りたいじゃない? 明日は我が身って可能性もあるしね」
……あぁ、そういう事か。
レミーはザックを明るく見送ろうと、わざと明るく見せているのか。きっと自分が死んだ時もそうしてもらいたいと思っているんだろうな。
「……レミーは死なないだろう?」
「そんなもん分からないさ。低ランクの魔獣に奇襲を受ける可能性だってあるんだ、冒険者なんてもんはいつ死ぬかなんて分からないのさ」
「そんな……」
エリカはレミーを見つめながら悲しそうな顔を浮かべている。
だが、冒険者というものはそういうものなのだろう。命の危険がある事を承知で冒険者ギルドに登録をしている者ばかりだからな。
しかし、こいつらは違ったのだろう。魔獣を目の前にして止めろと口にし、死を怖がっていた。
死を怖がるのは理解できる、俺だって死ぬのは怖い。だが、生き残るために足掻く事を止めてまで口にする必要はないはずだ。
彼らには覚悟が足りなかった。だから最後の最後で動けなくなり、命乞いをした。
相手が人であったなら効果はあるかもしれない。だが、今回の相手は魔獣だったのだから全くの無意味だ。
「……やっぱり、俺は門番でいいかな」
「なんだい、死ぬ覚悟がないってのかい?」
「まあな。できる限りの事はするが、無理はしない。門番としてウラナワ村で生活ができればありがたいさ」
「……私も、無理だな。死にたくないもの」
「……そうかねぇ?」
何やらレミーは疑いの眼差しをこちらに向けているが、俺はできる事しかしない。
まあ、ハイオーガエンペラーの時には少しだけ無茶をしたがあれは必要な無茶だ。ラコスタに関しては倒せると踏んだから受けただけだからな。
二人が残っていると聞いた時は焦ったが、それでもこうして生きているのだから問題はないだろう。
「それじゃあ……レインズ! エリカ! さっさと戻って残党狩りだよ!」
「あっ! そっか、逃げた魔獣がシュティナーザに!」
「それはフリックさんが冒険者をまとめて防いでいるはずだ」
「フリック? ……あいつ、張り切りやがったねぇ」
とはいえ、戦域は大きく広がっているはずだ。
Eランク以下の冒険者が残っているとはいえ、悠長に時間を無駄にしている場合ではないか。
「分かった、急ごう!」
「はい!」
「ここからは蹂躙さね!」
俺はエリカに死んだ冒険者が使っていた剣を手渡した。使いたくないかもしれないが、武器もなしに魔獣の群れに突っ込ませるわけにはいかないからな。
「こうなるなら、先に昨日の剣を貰っておくんだったなぁ」
「あの時はまだハルクさんの移住は決まってなかったからな、仕方ないさ」
「レミーも槍は回収できたな!」
「はいよ!」
それぞれ武器を手にし、俺たちは森を引き返して残党狩りへと向かった。
森を抜けると冒険者たちと魔獣の戦いが続いていた。
だが、魔獣の数は見た目にも減っており、ラコスタの気配が消えたのを感じた魔獣から森の方へ引き返している。
それでも襲い掛かってくる魔獣だけを相手にしているような状況のようだ。
これならば時間の問題だろうと判断し、俺たちは散開して魔獣が多くいるところへ各自の判断で向かい各個撃破へと移っていく。
――しばらくして魔獣の咆哮が消えると、本当の意味でシュティナーザに平和が訪れたのだった。
3
あなたにおすすめの小説
自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる