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第二章:護衛依頼
第96話:森の異常
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「――レインズ! ようやく戻ったか!」
門の前でそう口にしたのはガジルさんだった。
その表情は焦燥しており、それだけで何かが起きたのだと誰もが理解した。
「どうしたんですか、ガジルさん?」
「森に問題が発生した。まずは村長の屋敷に……って、頭のそいつはなんだ?」
すぐに俺を連れて行こうとしたガジルさんだったが、頭の上でリラックスしているスノウを見て困惑顔を浮かべている。
「卵から孵りました。でも、今は急ぎなんですよね?」
「あ、あぁ、そうだったな」
「エリカは一緒に来てくれ。ギースは準備ができ次第二人と一緒に!」
「わ、分かりました!」
ギースの返事を聞き届けた俺は、ガジルさんとエリカと一緒に村長の屋敷へ駆け出した。
到着すると、そこには村長だけではなくギレインや自警団の主要な者、リムルまで集まっている。
だが……どうしてここにお前がいないんだ?
「ご無事で戻られて何よりです、レインズ殿」
「ありがとうございます。……ですが、前置きはなしにして本題に入りましょう。それに、デンはどこに?」
デンの名前を出すと、この場にいる全員が渋い顔をしてしまう。
そんな中で口を開いたのは、やはり村長だった。
「……申し訳ございません、レインズ殿」
「いったい何があったんですか?」
「実は……森に異常が起きた事は聞きましたか?」
「簡単にですがガジルさんから聞いています」
「そうですか。デン殿はいち早く森の異常に気づいてくれて、儂らに教えてくれました。その後、ギレインやガジル殿を中心に森を調べていたのですが……」
そこで一度黙ってしまったが、しばらくすると意を決したかのように口を開いた。
「……そんな中、突如としてデン殿は一人で森に行くと言い出して、姿を消してしまったのです」
「デンが一人で? 姿を消した?」
「ちょっといいか、レインズ」
村長との会話に手を上げてギレインが口を挟んできた。
「もちろんだ」
「デンなんだが、その時だけはいつもと雰囲気が違っていたんだ。俺やガジルがついていくと言っても頑なに断って来た。最終的には軽く脅されたくらいだ」
「その通りだ。もしかしたらデンは、森の中に何かを感じ取っていたのかもしれない」
二人の言葉を受けて、俺は意識的に気配察知の範囲を広げてみた。
ここから感じられる中では特段おかしなところは見当たらない。……いや、それ自体がおかしな事なのかもしれない。
「……魔獣が、姿を消している?」
俺の呟きに村長が重々しく頷いた。
「デン殿が森に向かってからしばらくして、森の魔獣が跡形もなく姿を消してしまったのです」
「レインズはジーラギ国で魔獣を間引いていたんだろ? 魔獣が姿を消すなんて現象を見た事はないか?」
「いや、俺もそんな事は見た事も聞いた事もない」
「そうか。……くそっ! 脅されたくらいで引き下がるんじゃなかった。無理やりにでもついていくべきだったんだ!」
ギレインが拳を床に叩きつけて怒りを露わにしている。
ガジルさんも悔しそうな表情をしているが、俺としては二人がついていかなくて安堵していた。
「いや、デンの指示に従ってくれてよかったです」
「ですが、レインズ殿。そのせいでデン殿は戻ってきていないのですよ?」
「二人であっても危険だと判断した何かが森の奥にいたんだと思います。そして、その何かのせいでデンは戻ってこられない」
「……まさか、その何かを抑え込むために、デンは戻ってこられないって事か?」
ギレインの推測に俺は無言で頷いた。
「しかしだレインズ。他の魔獣まで姿を消したのはどういう理屈だ?」
「……それは俺にも分からないよ、ガジルさん。だから、確かめに行くんだ」
「確かめにって……お前、まさか!」
ガジルさんが目を見開いて声を張り上げた、これは当然の決断だ。何せ、デンが森の奥で俺を待っているはずだからな。
「もちろん、デンを助けに行くんですよ。俺以外に最適な人物、いないでしょう?」
「危険過ぎる! お前が行くなら俺も行くぞ!」
「私も行きます! レインズだけに任せていられません!」
「俺だってそうだ! お前たちには何度も助けられているんだ、それなのに生え抜きの俺が行かないなんてあり得ねえだろう!」
ガジルさん、エリカ、ギレインと声をあげてくれるが、俺は誰も連れて行くつもりはない。
SSSランクであるデンが危険だと判断したところへ行くなんて、自殺行為と言われても仕方がないはずだ。
「ダメだ。今回は俺一人で行く」
「レインズ!」
「デンが危険だと判断した場所に、ギレインたちを連れては行けない」
「……それなら、俺たちが勝手についていくのはありなのか?」
「ガジルさん。それとこれとは話が違います! 命の危険があるし、俺も守り切れるとは言い切れませんよ!」
「自分の身は自分で守ります! だからレインズ、私たちを連れて行ってちょうだい!」
「エリカ、お前まで……」
俺は、どうしたらいいんだ。
みんなの気持ちは嬉しいが、命の危険があるところに連れて行っていいのだろうか。デンのように脅してでも残ってもらうべきなのだろうか。
「わ、私も行きます!」
……おいおい、そこでどうしてお前がそれを口にするかね――リムル?
門の前でそう口にしたのはガジルさんだった。
その表情は焦燥しており、それだけで何かが起きたのだと誰もが理解した。
「どうしたんですか、ガジルさん?」
「森に問題が発生した。まずは村長の屋敷に……って、頭のそいつはなんだ?」
すぐに俺を連れて行こうとしたガジルさんだったが、頭の上でリラックスしているスノウを見て困惑顔を浮かべている。
「卵から孵りました。でも、今は急ぎなんですよね?」
「あ、あぁ、そうだったな」
「エリカは一緒に来てくれ。ギースは準備ができ次第二人と一緒に!」
「わ、分かりました!」
ギースの返事を聞き届けた俺は、ガジルさんとエリカと一緒に村長の屋敷へ駆け出した。
到着すると、そこには村長だけではなくギレインや自警団の主要な者、リムルまで集まっている。
だが……どうしてここにお前がいないんだ?
「ご無事で戻られて何よりです、レインズ殿」
「ありがとうございます。……ですが、前置きはなしにして本題に入りましょう。それに、デンはどこに?」
デンの名前を出すと、この場にいる全員が渋い顔をしてしまう。
そんな中で口を開いたのは、やはり村長だった。
「……申し訳ございません、レインズ殿」
「いったい何があったんですか?」
「実は……森に異常が起きた事は聞きましたか?」
「簡単にですがガジルさんから聞いています」
「そうですか。デン殿はいち早く森の異常に気づいてくれて、儂らに教えてくれました。その後、ギレインやガジル殿を中心に森を調べていたのですが……」
そこで一度黙ってしまったが、しばらくすると意を決したかのように口を開いた。
「……そんな中、突如としてデン殿は一人で森に行くと言い出して、姿を消してしまったのです」
「デンが一人で? 姿を消した?」
「ちょっといいか、レインズ」
村長との会話に手を上げてギレインが口を挟んできた。
「もちろんだ」
「デンなんだが、その時だけはいつもと雰囲気が違っていたんだ。俺やガジルがついていくと言っても頑なに断って来た。最終的には軽く脅されたくらいだ」
「その通りだ。もしかしたらデンは、森の中に何かを感じ取っていたのかもしれない」
二人の言葉を受けて、俺は意識的に気配察知の範囲を広げてみた。
ここから感じられる中では特段おかしなところは見当たらない。……いや、それ自体がおかしな事なのかもしれない。
「……魔獣が、姿を消している?」
俺の呟きに村長が重々しく頷いた。
「デン殿が森に向かってからしばらくして、森の魔獣が跡形もなく姿を消してしまったのです」
「レインズはジーラギ国で魔獣を間引いていたんだろ? 魔獣が姿を消すなんて現象を見た事はないか?」
「いや、俺もそんな事は見た事も聞いた事もない」
「そうか。……くそっ! 脅されたくらいで引き下がるんじゃなかった。無理やりにでもついていくべきだったんだ!」
ギレインが拳を床に叩きつけて怒りを露わにしている。
ガジルさんも悔しそうな表情をしているが、俺としては二人がついていかなくて安堵していた。
「いや、デンの指示に従ってくれてよかったです」
「ですが、レインズ殿。そのせいでデン殿は戻ってきていないのですよ?」
「二人であっても危険だと判断した何かが森の奥にいたんだと思います。そして、その何かのせいでデンは戻ってこられない」
「……まさか、その何かを抑え込むために、デンは戻ってこられないって事か?」
ギレインの推測に俺は無言で頷いた。
「しかしだレインズ。他の魔獣まで姿を消したのはどういう理屈だ?」
「……それは俺にも分からないよ、ガジルさん。だから、確かめに行くんだ」
「確かめにって……お前、まさか!」
ガジルさんが目を見開いて声を張り上げた、これは当然の決断だ。何せ、デンが森の奥で俺を待っているはずだからな。
「もちろん、デンを助けに行くんですよ。俺以外に最適な人物、いないでしょう?」
「危険過ぎる! お前が行くなら俺も行くぞ!」
「私も行きます! レインズだけに任せていられません!」
「俺だってそうだ! お前たちには何度も助けられているんだ、それなのに生え抜きの俺が行かないなんてあり得ねえだろう!」
ガジルさん、エリカ、ギレインと声をあげてくれるが、俺は誰も連れて行くつもりはない。
SSSランクであるデンが危険だと判断したところへ行くなんて、自殺行為と言われても仕方がないはずだ。
「ダメだ。今回は俺一人で行く」
「レインズ!」
「デンが危険だと判断した場所に、ギレインたちを連れては行けない」
「……それなら、俺たちが勝手についていくのはありなのか?」
「ガジルさん。それとこれとは話が違います! 命の危険があるし、俺も守り切れるとは言い切れませんよ!」
「自分の身は自分で守ります! だからレインズ、私たちを連れて行ってちょうだい!」
「エリカ、お前まで……」
俺は、どうしたらいいんだ。
みんなの気持ちは嬉しいが、命の危険があるところに連れて行っていいのだろうか。デンのように脅してでも残ってもらうべきなのだろうか。
「わ、私も行きます!」
……おいおい、そこでどうしてお前がそれを口にするかね――リムル?
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