【休載中】マジエ王国育成計画

ルリコ

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1章 召喚先でも仲良く

009 前夜祭

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 いつもはすぐ出ていくはずの時間帯、大広間には熱気が籠っていた。

 長いテーブルに端から端まで所狭しと料理がおかれ、成長期真っ只中の少年少女たちがパクパクと威勢よく食べている。
 料理が下げられて暇になったタイミングでAが言った。

「明日は体育祭だね!2回目だ~」

 今ここでは体育祭の前夜祭が行われている。
 異世界まで来てどこから前夜祭なんて情報が漏れているのか疑問である。

「前回はどんな感じだったの?」

 サクラが問う。

「今日から3日間どんちゃん騒ぎさ。体験すれば分かる」

 中佐さんが霹靂へきれきしたように答える。
 それよりも中佐さんが持っているグラスの中身、色合いがワインに近いのだが。未成年じゃなかったか?

「しかもハロウィンパーティーまでこみだしね」
「ふ~ん」
「前夜祭、僕が行ってた中学はなかったな~」

 暇柱がはしを振り回す。

「僕もなかった」
「………前夜祭って全寮制だけじゃない?」
「できるわ。昼間でも前日に行われれば前夜祭というのよ」

 Anneの説明を聞いて英華は食べながら頷いた。

「ていうかさ、万象いないね」

 夜久が辺りを見回した。

「ああ。確かに」
「万象くんは実行委員だから仕事があるのよ」

 僕はすっかり忘れていたが万象は体育祭の実行委員だった。

「のりおせんべいくんもいないよ?」
「それを言うならビフテキもいないよー」
「前夜祭の間、補佐官は外すって。聞いてなかった?」
「そういえばそうだった」
「みんなの補佐官たまには見せてよ」

 ピザを2人で割りながらAが言う。

「特に面白くないよ?」
「のりおせんべいくんは兎も角、うちのは面白くない」
「逆に面白い気が………」
「じゃあ体育祭の次の代休、ボクの部屋に集合!見せ合いっこ。わかった?」
「………仕方ないわね」
「流石夜久!」

 Aが夜久に抱きつく。

「暑い」
「僕もいいよ」
「暇柱!」
「わかったわ」
「Anne~」
「俺もりょーかい」
「サクラ~」

[以下同文]

「本当ありがとう!」

 Aは人たらしである。


「お前ら、スペシャルゲストの登場だぞ」
「彼女、忙しいはずなのに。よく連れてきたものね」

 誰のことだろう。

「それではスペシャルゲストの登場です! ライアン・シャルロア=マジエ女王陛下です!」

 万象の声が響き渡った。


 拍手に包まれながら女王が入場した。
 女王はマイクに近づけた口を少し開閉してボソッと何か言うと、スマートウォッチがキーキーと音を出した。
 なんだろうと思って女王を見ていると突然声が響いた。
 響いた____これはマイクを通して、という意味ではない。
 頭に“ダイレクトに響いた”という意味だ。


〈皆さん私の声が聞こえますか? 驚かないでください。魔法をかけてあなたの母国語で私の話が聞けるようにしたのです〉

 女王はやはり魔法をかけたらしい。

〈さて、明日に控えた体育祭の説明を始めます。
 生徒は全員強制参加です。
 体育祭は9時から第1体育館で行われます。午前8時半に第1体育館前に集合しなさい。
 持ち物は飲み物を入れる容器とタオルとパンフレットです。
 体育祭のパンフレットは今日貰っているはずです。貰っていない者は今すぐ補佐官にメールで知らせること〉

 僕は、女王の威圧感に首を傾げたくなった。
 前会ったときはそんな感じはなかった。
 それともこれが素で、前回は初対面だったから態度を和らげたのか。

〈質問は補佐官が受け付けます。各自疑問点があれば解消しておくように。
 ………説明ばっかりでも面白くないでしょう。前夜祭なのですから楽しんでください。ご馳走もありますし〉

 楽しんで、と少しばかり強張った顔で締めて女王は一礼した。
 話の前と同程度の拍手がおこった。

 そうか、女王として考えるなら今のように高圧的な態度が正しいのだ。僕らは爵位を持っているわけではなく、しかも他国民だ。
 どのような態度を取ろうが問題にはならない。


 女王が退出して、大広間にはやっと活気が戻った。

「君主ってストレス溜まると思うよ。国王の子として産まれたからって強制的に国の長にされるんだ」

 暇柱はそう指摘した。

「女王は国のトップなんだから高圧的になるのは仕方ないんじゃないの」

 いつも毒舌の夜久が珍しく思考を放棄したような言い方をした。

「でもさ、国民に慕われるのも王族の仕事だと思う」
「いや、俺たちは彼女にとって自国民ではない。問題はない」
「今日たまたま不機嫌なだけなのかもよ?」

 中佐さんは僕が考えていたことを言った。
 続けるように、一度女王の会話を聞いたことがある身として彼女を庇った。

「それはそうなのかもしれないけど」
「人間は完全じゃないのよ?」

 Anneは宥めるように言った。

「「「………」」」
「そもそもなんで僕たちが女王の心配しなきゃなんないの。関係ないでしょ」
「そうね、英華もいいこと言う」
「でも、ここに住んでる以上、多少は気にしたほうがいいんじゃないかな?」
「多少は気にしたほうがいいと思うけど」

 大きな動きはするべきではないが。

「俺も同意見だ。もしこの制度の反対している王族が即位したら、俺たちがどうなるか分からない。把握しておくべきだ」

「だからんですか?」
「「はっ!?」」

 宣浩が中佐さんを追及する。嗅ぎ回ってるってどういう?

「それ、どこで聞いたんだ? それこそお前もをしているという証明にしかならないだろう」
「ソースは開かせませんが、らしきことをやっているとか」
「その情報源、当てにならないんじゃないか?」
「いえそのようなことは」

「お2人方。そういうのはやってくださいね」

 Anneが制止の声を上げる。そこはかとなく、静かな怒りを感じる。まさか本気で怒ってる………?
 フォローしたほうがいいだろうか。怖いし。

「食べようか。冷めちゃうし」
「そうね」

 ちょうどタッタッタと足音が隣で止まった。

「あれ、まだ食ってないのか?オレ、腹空いたのに」

 万象が戻ってきた。

「呑気なもんだ」

 暇柱が乾いた笑いを上げる。

「早く食べてね。引き継ぎがまだ残っているわ」
「分かったあ。いただきます」

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