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1章 召喚先でも仲良く
011 体育祭② 〜大玉転がし〜
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「夜久と宣浩、最初に出るって言ったよな」
万象は目を細めて訊ねた。
「言ってたね」
〈それではスタート3秒前!〉
Anneのアナウンスがカウントダウンを始めた。
「みんな!始まっちゃうよ!」
「そうだよ!」
Aと暇柱があまりにも急かすので、僕はグラウンドに目を向けた。
〈位置に着いて。ヨーイドン!〉
合図とともに音楽が大音量で流れてきた。
いま始まったのは大玉転がしだ。
夜久と宣浩とビフテキくんが出る。
玉の色によって4つにグループ分けされている。
夜久と宣浩は赤で、ビフテキくんは黄色。
玉を押して地面に引かれたホワイトラインを完全に超えたときのタイムを競うものだ。
かなり徒競走に似ていると思う。
「よっ!」
耳元で急に声が聞こえてビクッと震えてしまった。
驚かした張本人は、そんな僕を見てレアだの何だのと喜んでいる。
失礼では?
「なんなんだよ………サクラ」
「疲れた顔してるから。俺が元気づけてあげようと思ってさ」
「だって僕が出る競技は終わったし」
「あなたの補佐官が出てるじゃないか」
「みんなが応援してるだろ?」
「冷たいなあ」
彼は生活に密着しているが自称執事以上でも以下でもない。
彼にとってもそうだろう。
「歳を重ねると分かることも増えるのだよ」
「歳って言っても高校生でしょ?」
「まあね。だって僕、あんなに体力ないし」
体力おばけか何かなのか。時折不安になる。
「それは俺もそうだよ。正直、盛り上がりすぎてると思わない?」
「激しく同意」
「ははっ。近所のおばさんの気持ちになっちゃうよ」
「笑いごとじゃないけどな。人生100年時代だっていうのに」
「別に寿命が長くなったところで………って思うことはあるよ。好きなことをして生きていたいけどそんなことばっかり言ってられないしね」
「よく分かってるじゃないか」
〈勝敗が決定しました!〉
「あ、決定したってよ」
「ああ」
Anneは渡されたストップウォッチを確認した。
〈赤チーム45.78秒、青チーム50.18秒、緑チーム51.2秒、黄色チーム45.9秒。
よって赤チームの勝ち!〉
彼女が宣言した途端わっと歓声が沸いた。
Aと暇柱と万象はピョンピョンと跳ね回った。
教師枠のビフテキくんはどうだったかというと。
夜久と宣浩も帰ってきたので9人で応援した。
僕はAnneの舌戦術に舌を巻いていた。
どんどん白熱させていくその手腕、才能があるのではないだろうか。
〈赤チーム44.8秒、青チーム45.1秒、緑チーム43.28秒、黄色チーム43.5秒でした。
よって緑チームの勝利です!〉
あとちょっとだったのになー。
「惜しかったねー」
「それな。どっちが勝ったか分からなかった」
「ふああ」
夜久があくびする。
寝ていなかったのか、先程から彼女はあくびを連発している。
「腹減ったー。大広間行くぞ」
万象が告げる。確か屋内に戻ってゆっくり昼食を摂るという話だった。
*選手宣誓の回想*
注:万→万象が言ったこと An→Anneが言ったこと 2→2人が言ったこと
〈それでは選手宣誓です。体育祭実行委員のAnneさん、森羅万象さんよろしくお願いします〉
2〈はい〉
2人は国旗を育成所長に掲げた。
万〈僕たち〉
An〈私たちは〉
2〈このリカメンテ育成所体育祭において全力を尽くすことを誓います〉
国旗が育成所長に手渡されると拍手が巻き起こった。
それと同時に音楽が流れ始めた。ヒューヒューと口笛が聞こえるな、と思って隣を見るとAが吹いていた。
「A………口笛吹けるの?」
「うん」
ある一軒家の子供部屋。そこで事件がおきた。
「兄さん、僕は譲ってくれって言ってるだけじゃないか!それのどこが嫌なの!?」
「譲れと言われても困る。俺が告られたんだ」
「でも僕は知ってる。兄さんが付き合う人は大概好きじゃないってね!」
中学生になったばかりの弟が少年に指を指す。
「それがなんだっていうんだ。向こうが頼んできたからOKしただけだろ」
「だけって言うな! 僕は彼女が好きなんだ!」
「ならお前が頼めばいいだろ。………無理か。普通の人なら断るよな」
「笑うな!」
子供部屋は静かになった。
急に静かになった弟の様子で少年の背に悪寒が走ったが、それはおくびにも出さず睨むことをやめない。
ただしそれも時間の問題で、だんだん少年の自慢の美形が醜く崩れて、「煽りすぎたか」と内心後悔していた。
弟はその頃、外には見せずに苛立ちのまま少年をどうするか考えていた。
ふと弟はあることを思い出す。
__実は両親を含め人がいなかったのだ。
「………いいさ、譲ってくれないなら。
血が繋がっている兄弟だけど、そんなことは関係ないよね。
仕方ない。彼女のためならば」
悪寒は正しかったのだと証明するが如く、少年は人生で初めて脳内の警鐘を聞いた。
「待ってくれ、お前なにをする気で」
「大丈夫だよ兄さん。僕は殺さない。正確に言うと、いまのところは殺す気はない」
「いや全く安心できないが」
「嫌だなあ、そんなことも分からないの? 僕に従えば殺さないって言ってるんだよ」
小馬鹿にした口調で弟が脅す。
「………分かったから、俺はどうすればいいんだ」
「この家から出てくれないかなぁ?」
「………は?」
「知らぬうちにのだれ死んでほしいんだ」
1週間後、捜索願いが出されていた少年(13)が川で溺死していたのが発見された。
万象は目を細めて訊ねた。
「言ってたね」
〈それではスタート3秒前!〉
Anneのアナウンスがカウントダウンを始めた。
「みんな!始まっちゃうよ!」
「そうだよ!」
Aと暇柱があまりにも急かすので、僕はグラウンドに目を向けた。
〈位置に着いて。ヨーイドン!〉
合図とともに音楽が大音量で流れてきた。
いま始まったのは大玉転がしだ。
夜久と宣浩とビフテキくんが出る。
玉の色によって4つにグループ分けされている。
夜久と宣浩は赤で、ビフテキくんは黄色。
玉を押して地面に引かれたホワイトラインを完全に超えたときのタイムを競うものだ。
かなり徒競走に似ていると思う。
「よっ!」
耳元で急に声が聞こえてビクッと震えてしまった。
驚かした張本人は、そんな僕を見てレアだの何だのと喜んでいる。
失礼では?
「なんなんだよ………サクラ」
「疲れた顔してるから。俺が元気づけてあげようと思ってさ」
「だって僕が出る競技は終わったし」
「あなたの補佐官が出てるじゃないか」
「みんなが応援してるだろ?」
「冷たいなあ」
彼は生活に密着しているが自称執事以上でも以下でもない。
彼にとってもそうだろう。
「歳を重ねると分かることも増えるのだよ」
「歳って言っても高校生でしょ?」
「まあね。だって僕、あんなに体力ないし」
体力おばけか何かなのか。時折不安になる。
「それは俺もそうだよ。正直、盛り上がりすぎてると思わない?」
「激しく同意」
「ははっ。近所のおばさんの気持ちになっちゃうよ」
「笑いごとじゃないけどな。人生100年時代だっていうのに」
「別に寿命が長くなったところで………って思うことはあるよ。好きなことをして生きていたいけどそんなことばっかり言ってられないしね」
「よく分かってるじゃないか」
〈勝敗が決定しました!〉
「あ、決定したってよ」
「ああ」
Anneは渡されたストップウォッチを確認した。
〈赤チーム45.78秒、青チーム50.18秒、緑チーム51.2秒、黄色チーム45.9秒。
よって赤チームの勝ち!〉
彼女が宣言した途端わっと歓声が沸いた。
Aと暇柱と万象はピョンピョンと跳ね回った。
教師枠のビフテキくんはどうだったかというと。
夜久と宣浩も帰ってきたので9人で応援した。
僕はAnneの舌戦術に舌を巻いていた。
どんどん白熱させていくその手腕、才能があるのではないだろうか。
〈赤チーム44.8秒、青チーム45.1秒、緑チーム43.28秒、黄色チーム43.5秒でした。
よって緑チームの勝利です!〉
あとちょっとだったのになー。
「惜しかったねー」
「それな。どっちが勝ったか分からなかった」
「ふああ」
夜久があくびする。
寝ていなかったのか、先程から彼女はあくびを連発している。
「腹減ったー。大広間行くぞ」
万象が告げる。確か屋内に戻ってゆっくり昼食を摂るという話だった。
*選手宣誓の回想*
注:万→万象が言ったこと An→Anneが言ったこと 2→2人が言ったこと
〈それでは選手宣誓です。体育祭実行委員のAnneさん、森羅万象さんよろしくお願いします〉
2〈はい〉
2人は国旗を育成所長に掲げた。
万〈僕たち〉
An〈私たちは〉
2〈このリカメンテ育成所体育祭において全力を尽くすことを誓います〉
国旗が育成所長に手渡されると拍手が巻き起こった。
それと同時に音楽が流れ始めた。ヒューヒューと口笛が聞こえるな、と思って隣を見るとAが吹いていた。
「A………口笛吹けるの?」
「うん」
ある一軒家の子供部屋。そこで事件がおきた。
「兄さん、僕は譲ってくれって言ってるだけじゃないか!それのどこが嫌なの!?」
「譲れと言われても困る。俺が告られたんだ」
「でも僕は知ってる。兄さんが付き合う人は大概好きじゃないってね!」
中学生になったばかりの弟が少年に指を指す。
「それがなんだっていうんだ。向こうが頼んできたからOKしただけだろ」
「だけって言うな! 僕は彼女が好きなんだ!」
「ならお前が頼めばいいだろ。………無理か。普通の人なら断るよな」
「笑うな!」
子供部屋は静かになった。
急に静かになった弟の様子で少年の背に悪寒が走ったが、それはおくびにも出さず睨むことをやめない。
ただしそれも時間の問題で、だんだん少年の自慢の美形が醜く崩れて、「煽りすぎたか」と内心後悔していた。
弟はその頃、外には見せずに苛立ちのまま少年をどうするか考えていた。
ふと弟はあることを思い出す。
__実は両親を含め人がいなかったのだ。
「………いいさ、譲ってくれないなら。
血が繋がっている兄弟だけど、そんなことは関係ないよね。
仕方ない。彼女のためならば」
悪寒は正しかったのだと証明するが如く、少年は人生で初めて脳内の警鐘を聞いた。
「待ってくれ、お前なにをする気で」
「大丈夫だよ兄さん。僕は殺さない。正確に言うと、いまのところは殺す気はない」
「いや全く安心できないが」
「嫌だなあ、そんなことも分からないの? 僕に従えば殺さないって言ってるんだよ」
小馬鹿にした口調で弟が脅す。
「………分かったから、俺はどうすればいいんだ」
「この家から出てくれないかなぁ?」
「………は?」
「知らぬうちにのだれ死んでほしいんだ」
1週間後、捜索願いが出されていた少年(13)が川で溺死していたのが発見された。
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