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1章 召喚先でも仲良く
013 体育祭④ 〜障害物競走〜
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次は障害物競走だ。
Aと暇柱が出る。Aが2番手で暇柱はアンカーだ。
障害物は、跳び箱とハードルとカラーコーンだという。
「そういえばさーA」
暇柱が問う。
「何?」
「とび箱飛べないんじゃなかった?」
「え?」
Aの反応からすると本当に跳べないみたいだ。
こんな直前に言ってくれるなという話である。
「いやいやいや………今更それ言う?」
「なんでそれに気付かなかったの?」
「全く跳べないわけじゃないし」
Aが言い訳する。
「でも苦手なのは事実なんだろ? 誰かに変わってもらえたっけ」
「できないわ。変更できたのは先週までよ」
望みもなくなる。
「呆れた。自己管理がなってないのね」
「聞くけど障害物は何段なの?」
「4段よ」
「A、跳べる?」
全員から睨むような視線を受けてアタフタし始めるが、それも許さぬ気迫に押されて小さく告げた。
「10回跳べば………7回は成功する………と思う」
「つまり成功率は7割だと?」
「は、はい。ソウデス」
「「「はあ」」」
「す、すみません………」
いま怒っても意味はないどころか、逆に悪影響を与えるかもしれない。
Aのやる気を下げたらもっと跳べる確率が下がるからだ。
「まあまあそれぐらいにしようよ。そろそろ行かないといけないじゃない?」
「あぁ神よ………!」
「Aを庇ったわけじゃないから。さっさと行こうか」
大人気ないことにちょっとカチンと来た。
「コウスケくんありがとう! A、頑張ってこう!」
「おー!」
2人がいなくなってから英華が僕に問うた。
「コウスケくん、Aを庇ったわけじゃないってどういうこと?」
「だってさ、いま叱ってもメリットがデメリットを上回るんだ」
「うふふなるほど」
笑みが少し怖かった。
〈中学生は全学年各3チーム、高校生は人数が少ないため合同で全4チーム編成で戦います。
1人グラウンド半周分走ります。
障害物は計3種類あり、リレー形式でアンカーがゴールしたそのタイムが最も早かったチームの勝利です。
それでは中学1年生の皆さん、位置についてください〉
雲が広がり気持ち涼しくなったころ。
時計を見ると13時45分。
〈では、次は中学2年生です。位置についてください〉
何処か丁寧さが目立つ低めの女声が響いた。
夜久が「暇柱って意外と速いんだよね~」と言っていた。50m走7秒台の彼女が『速い』というのだから彼も7秒台なのだろう。
「Anneは50m走何秒台なの?」
何気なく隣にいたAnneに聞いてみた。
「………9秒くらい」
彼女は小声で教えてくれた。
「誰にでも得意・不得意はあるよ。僕は8.5秒だし」
「うん。ありがとう」
アナウンスがカウントダウンを始めた。
3、2、1、スタート。
「「頑張れー!」」
前夜祭で障害物競走において同じグループであることを知ったため、隣のグループと一緒に声援を送る。
現在、A&暇柱チーム(=黄色チーム)は2番目で、そろそろ先頭ランナーからAにバトンが渡るところだ。
赤色チームが1番で丁度その2番手が走り始めた。
半拍おかずに黄色チームの先頭ランナーがAにバトンを渡そうとしたとき。
彼の手にバトンが触れたか触れていないかというタイミングで先頭ランナーが転んだ。
というより躓いた。
「あっ」
誰かから声が漏れた。
ギリギリAがバトンを握りしめて落ちなかったが、やはり減速したから3番目の緑チームに追いつかれてしまった。
そのままの順位でアンカーの暇柱にバトンが渡る。けど心配には及ばない。
流石夜久が速いと言った人だ。緑チームを突き離して2番目に復帰した。
あ、青チームはどうかって? 僕らの勝負には全く関係ない。
最後のカラーコーンをほど近いところで周り暇柱はラストの直線に入った。
ラストスパートだが直線は約50m。追い越すには短い。
だけど少しずつ赤チームに近づいていく。
フィニッシュテープを切るという瞬間2人は並んだ。
〈中学2年生の障害物競走が終わりました。赤色チームと黄色チームがとても接戦だったのでビデオ判定をします。少々お待ちください〉
「ここ、リカメンテ育成所には何かあると見て間違いない。これは確かだ」
中佐さんが呟いた。
「ですよね。違和感ならありますもんね」
①前夜祭のライアン女王のスピーチ。
異常に威圧感を感じさせるものだった。
不機嫌が滲み出ていた。
②ビデオ判定。
普通体育祭でビデオ判定などしない。
勝敗を決定するためならば魔法でも使えるだろう。
「女王のスピーチの件なら、前夜祭の前に何らかのトラブルが起こったのだと思うが………」
「気持ちを隠すための教育を受けているはずの君主が、思わず僕らに見せてしまうほどのトラブル、ですか。
………変に関わりがないといいですけど」
「関わりならあると思うぞ」
「え? 何か知ってるんですか?」
中佐さんをマジマジと見つめて語調を強く問うた。
彼は、目を逸らしはあとため息を吐いた。
「………口が滑った。忘れてくれ」
「忘れられるわけないじゃないですか」
仕方なさそうに目を伏せ、まっすぐ見つめられた。
風も声援も、あらゆる音が消え去り、静寂に殴られた思いだった。
中佐さんは本気の顔つきで、告げた。
「忠告しておく。こっちの世界のことには絶対に関わるな。素人のお前には生き残れない」
〈ビデオ判定が終了しました。黄色チームが先にラインを踏んだことが確認されました。
なので黄色チームが1位、赤色チームが2位、青色チームが3位、緑色チームが4位です!
黄色チームの皆様おめでとうございます!〉
聴覚が無理矢理引き戻されても、思考は忠告のことでいっぱいだった。
中佐さんはすくっと立ち上がり視界から消えた。
Aと暇柱が出る。Aが2番手で暇柱はアンカーだ。
障害物は、跳び箱とハードルとカラーコーンだという。
「そういえばさーA」
暇柱が問う。
「何?」
「とび箱飛べないんじゃなかった?」
「え?」
Aの反応からすると本当に跳べないみたいだ。
こんな直前に言ってくれるなという話である。
「いやいやいや………今更それ言う?」
「なんでそれに気付かなかったの?」
「全く跳べないわけじゃないし」
Aが言い訳する。
「でも苦手なのは事実なんだろ? 誰かに変わってもらえたっけ」
「できないわ。変更できたのは先週までよ」
望みもなくなる。
「呆れた。自己管理がなってないのね」
「聞くけど障害物は何段なの?」
「4段よ」
「A、跳べる?」
全員から睨むような視線を受けてアタフタし始めるが、それも許さぬ気迫に押されて小さく告げた。
「10回跳べば………7回は成功する………と思う」
「つまり成功率は7割だと?」
「は、はい。ソウデス」
「「「はあ」」」
「す、すみません………」
いま怒っても意味はないどころか、逆に悪影響を与えるかもしれない。
Aのやる気を下げたらもっと跳べる確率が下がるからだ。
「まあまあそれぐらいにしようよ。そろそろ行かないといけないじゃない?」
「あぁ神よ………!」
「Aを庇ったわけじゃないから。さっさと行こうか」
大人気ないことにちょっとカチンと来た。
「コウスケくんありがとう! A、頑張ってこう!」
「おー!」
2人がいなくなってから英華が僕に問うた。
「コウスケくん、Aを庇ったわけじゃないってどういうこと?」
「だってさ、いま叱ってもメリットがデメリットを上回るんだ」
「うふふなるほど」
笑みが少し怖かった。
〈中学生は全学年各3チーム、高校生は人数が少ないため合同で全4チーム編成で戦います。
1人グラウンド半周分走ります。
障害物は計3種類あり、リレー形式でアンカーがゴールしたそのタイムが最も早かったチームの勝利です。
それでは中学1年生の皆さん、位置についてください〉
雲が広がり気持ち涼しくなったころ。
時計を見ると13時45分。
〈では、次は中学2年生です。位置についてください〉
何処か丁寧さが目立つ低めの女声が響いた。
夜久が「暇柱って意外と速いんだよね~」と言っていた。50m走7秒台の彼女が『速い』というのだから彼も7秒台なのだろう。
「Anneは50m走何秒台なの?」
何気なく隣にいたAnneに聞いてみた。
「………9秒くらい」
彼女は小声で教えてくれた。
「誰にでも得意・不得意はあるよ。僕は8.5秒だし」
「うん。ありがとう」
アナウンスがカウントダウンを始めた。
3、2、1、スタート。
「「頑張れー!」」
前夜祭で障害物競走において同じグループであることを知ったため、隣のグループと一緒に声援を送る。
現在、A&暇柱チーム(=黄色チーム)は2番目で、そろそろ先頭ランナーからAにバトンが渡るところだ。
赤色チームが1番で丁度その2番手が走り始めた。
半拍おかずに黄色チームの先頭ランナーがAにバトンを渡そうとしたとき。
彼の手にバトンが触れたか触れていないかというタイミングで先頭ランナーが転んだ。
というより躓いた。
「あっ」
誰かから声が漏れた。
ギリギリAがバトンを握りしめて落ちなかったが、やはり減速したから3番目の緑チームに追いつかれてしまった。
そのままの順位でアンカーの暇柱にバトンが渡る。けど心配には及ばない。
流石夜久が速いと言った人だ。緑チームを突き離して2番目に復帰した。
あ、青チームはどうかって? 僕らの勝負には全く関係ない。
最後のカラーコーンをほど近いところで周り暇柱はラストの直線に入った。
ラストスパートだが直線は約50m。追い越すには短い。
だけど少しずつ赤チームに近づいていく。
フィニッシュテープを切るという瞬間2人は並んだ。
〈中学2年生の障害物競走が終わりました。赤色チームと黄色チームがとても接戦だったのでビデオ判定をします。少々お待ちください〉
「ここ、リカメンテ育成所には何かあると見て間違いない。これは確かだ」
中佐さんが呟いた。
「ですよね。違和感ならありますもんね」
①前夜祭のライアン女王のスピーチ。
異常に威圧感を感じさせるものだった。
不機嫌が滲み出ていた。
②ビデオ判定。
普通体育祭でビデオ判定などしない。
勝敗を決定するためならば魔法でも使えるだろう。
「女王のスピーチの件なら、前夜祭の前に何らかのトラブルが起こったのだと思うが………」
「気持ちを隠すための教育を受けているはずの君主が、思わず僕らに見せてしまうほどのトラブル、ですか。
………変に関わりがないといいですけど」
「関わりならあると思うぞ」
「え? 何か知ってるんですか?」
中佐さんをマジマジと見つめて語調を強く問うた。
彼は、目を逸らしはあとため息を吐いた。
「………口が滑った。忘れてくれ」
「忘れられるわけないじゃないですか」
仕方なさそうに目を伏せ、まっすぐ見つめられた。
風も声援も、あらゆる音が消え去り、静寂に殴られた思いだった。
中佐さんは本気の顔つきで、告げた。
「忠告しておく。こっちの世界のことには絶対に関わるな。素人のお前には生き残れない」
〈ビデオ判定が終了しました。黄色チームが先にラインを踏んだことが確認されました。
なので黄色チームが1位、赤色チームが2位、青色チームが3位、緑色チームが4位です!
黄色チームの皆様おめでとうございます!〉
聴覚が無理矢理引き戻されても、思考は忠告のことでいっぱいだった。
中佐さんはすくっと立ち上がり視界から消えた。
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