綺麗な嘘

真世中深夜

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綺麗な嘘

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夏の暑さも徐々に消え、夜には秋の虫が鳴くようになった。
少し前までは外にいるだけで嫌になっていたのに、今では気持ちよく部活動に精を出すことができる。
夕方まで居眠りを除いて学業に励んだ僕は待ち望んだ放課後の訪れが心底嬉しかった。
終礼が終わったところで足早に陸上部の部室へ向かい手早く着替えを済ませた。学業からの解放感から1分もかからなかったと思う。
足早に部室へ向かい手早く着替える。
今にして思えば、手も足も早く動かした僕はまるで陸上部の鑑だな。
部室を出て辺りを見回すと練習の風景がいつもと違うことに気づいた。顧問の先生がいないのだ。
ウチの高校の陸上部はその日その日で練習のメニューを顧問の先生から直々に聞いて行うのだ。これでは今日のメニューが聞けないと困っていると、背後から声をかけられた。
「あれ、笹田先生いねーの」
笹田先生とはこの部活の顧問のことだ。
僕は振り向く。
背後からそうを言ったのは、同じ陸上部の寄木よせぎだった。見るとなにやらうずくまっているからどうしたのかと思ったら、靴紐を結んでいるだけのようだった。
僕は「うん、でもほら」と言って校庭に立っている部長を指差した。
どうやら顧問に代わって指示を出しているらしいのを見つけたからだ。
それを見た寄木も理解したようだ。
なるほど、と呟いて2人で指示を仰ぎに行った。そして、出された指示はこうだった。
グラウンド周りを10周。
ほう、これはなかなか。
うちのグラウンドを外周は約500メートル。それを10周走るとなると5キロメートルになる。
もちろん走れないわけでは無いが、若干納得がいかない。
なぜなら僕は──横にいる寄木も──短距離の専門だからだ。できれば100メートルを10本など、体力よりも走力をあげたい。
しかし文句を言おうにも肝心の顧問がいないのでは仕方がない。
渋々スタート地点へと向かった。
そしてそれは、到底足早とは言えなかった。
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