綺麗な嘘

真世中深夜

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綺麗な嘘 2

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秋は好きだ。夏の暑さを忘れさせる。
そして山が活気に溢れていない。
春や夏は、自然の生命力が感じられてどうにも落ち着かない。
しかし秋だけは、一生懸命生きてきた休憩。そんな雰囲気がした。
1年365日の羽休め。ほっと一息つくのはいつも、この季節だった。
たった1つ問題があるとすれば、次に冬が来ることだ。
 なにもしていない時、または単純な作業を繰り返している時、僕の頭の中にはいつもくだらない考えがあった。
今のように。
そしていつも気がつくと時間が過ぎていた。
今のように。
少し考え事をしている間に僕はもう3周目に差し掛かっていた。走りながら考え事をしていると、疲れていることも息が切れていることも忘れられた。
案外、僕は長距離のほうが向いているのかもしれない。
グラウンド内で汗を流す野球部やサッカー部を横目に、僕はペースを落とさない。すると後ろからペースを上げて僕に並んだ者がいた。
本日2度目、寄木だった。
彼は特別、仲のいい友達というわけでは無い。もともと僕は内向的な性格で、あまり友達が多いとは言えなかった。
けれど部内では比較的気を許している相手でもある。彼は持ち前の明るくユニークな性格で、当然僕よりも友達が多かった。ずば抜けて頭がいいわけでは無い。
けれどもその性格に裏表はなくクラスでも人気者。彼は俗に言うイイ奴だった。
そんな彼は僕にも明るく接してくれる。
彼ほど人気のある人が陸上部というウチの高校ではなかなか部員が少ない部活に入ったことは意外だった。
そんな彼は、僕の横で変わったことを呟いた。
「美容師、調理師、牧師、看護師、漁師……道化師、奇術師、呪術師」
正直、意味がわからなかった。最初こそ職業かと思ったが、後半からオカルトじみてきた。しかし彼はこちらを気にする様子もなく続けた。
「弁護士、税理士、建築士……」
今度も相変わらず謎めいている。しかしわかったことがある。どちらも音を聞いただけでは気づかないが、文字にすると違いがあった。師と士の違いだ。
彼がなにを言いたいのか表情をうかがっていると目があった。
ニコリと笑うがその笑顔は、愛想笑いというよりは僕の不思議そうな表情を見て楽しんでいるようだった。
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