6 / 72
6話
しおりを挟む
あれから丸一日が経過した。 俺を中心としたこの奇妙な共同生活は驚くほど順調に回っていた。
「ギィ(メシだ)」
「……いただきます」
ゴブリン (先輩のほう)はすっかり少女に慣れたのか、俺がDPで生成した「ふかしたパン(5DP)」と「水(1DP)」を少女の前に置き、自分たちの分も受け取って扉の前に戻っていく。
少女も最初はゴブリンを怖がっていたが、害意がないことと俺の命令で動いていることを完全に理解したようだ……。
ゴブリン二匹と少女一人。
一日三食として、(5+1)DP x 3人 x 3食 = 54 DP。
結構な出費だ。
だが……今の俺にとって、それはまったく痛くなかった。
何故なら──
(いいぞ、スライムくん! もっとだ! もっと集めてこい!)
俺の視線の先では朝から晩まで……いや、夜通しか。
10匹のスライム軍団が、休むことなく外と拠点を往復し続けていた。
ぷるるん! (扉の外から帰還) ↓ べちゃっ! (俺に資源 (泥とか苔とか光る石とか)を吐き出す) ↓ [DP +15] ↓ ぷるるん! (再び外へ)
このサイクルが10匹体制で延々と繰り返されている。
どうやら彼らには食事も睡眠も必要ないらしい。本能が命じるままに資源を俺の元へ運び続けてくれている。
素晴らしい……!
戦闘にはまるで役に立たないが、こいつらこそが俺の生命線であり拠点のインフラそのものだ!
俺は、あの時10連ガチャでスライム軍団を引き当てた自分を褒め称えた。
……まぁ、排出率が高いから誰がやってもスライム塗れになるかもしれないけど。
そして今……スライムたちの不眠不休の労働と、少女の滞在ボーナスにより俺のDPはとんでもないことになっていた。
[DP: 1250]
(……すげぇ。一日で1000DP以上稼ぎやがった!)
食費の54DPなんて必要経費だと割り切れる。
これだけあれば高嶺の花だった【拠点機能】リストが、一気に現実味を帯びてくる!
よし……リストを確認しよう!
♢ ♢ ♢
(所持DP: 1250)
【生成リスト:拠点機能】
フロア増設ガチャ(低コスト) …… 1000 DP
管理人アバター(粘土) …… 5000 DP
【生成リスト:基礎食料】
水(1DP)、パン(5DP)、スープ(15DP)
温かいシチュー(一皿) …… 30 DP
チーズと干し肉のセット …… 50 DP
【生成リスト:生活雑貨】
ぼろ布(3DP)、薪(5DP)、松明(10DP)、毛布(15DP)
清潔な寝袋(一つ) …… 100 DP
ランタン(燃料入り) …… 120 DP
【生成リスト:召喚(ガチャ)】
一般魔物ガチャ([C]コモン) …… 5 DP
下級魔物ガチャ([UC]アンコモン) …… 50 DP
一般装備ガチャ …… 30 DP
♢ ♢ ♢
(おぉ!? DPが増えたことで、より上位の項目が解放されてる!)
特に「フロア増設ガチャ(1000DP)」。これがついに射程圏内に入った。 このボロい1階だけの生活から、ついに脱却できるかもしれない。
だが「下級魔物ガチャ(50DP)」も気になる。ゴブリンよりマシな戦力が手に入るかもしれない。一般装備ガチャも気になるな……。
いやいや、まずは少女の生活改善か? 「寝袋(100DP)」と「シチュー(30DP)」は魅力的だ。少女の滞在DP増加も馬鹿にならない。
悩んだ挙句……。
(よし、まずは生活環境の改善だ)
俺はスライム軍団が稼いできた莫大なDP(1250)を使い、リストの【生活雑貨】タブを開いた。
(このボロい石の床で寝かせるのは、さすがに気が引ける)
俺は「清潔な寝袋 - 100 DP」を選択し実行した。
DPが1250 →1150
(場所は……少女の近くがいいか)
隅で体育座りをしていた少女のすぐそば、俺の影になる一番安全そうな場所にふかふかの寝袋がふわりと出現した。
「……!?」
少女は突然現れた寝袋に肩を震わせたが、すぐにそれが俺の仕業だと気づいたようだ。
「わぁ……」
おそるおそる手を伸ばし、柔らかい感触を確かめ嬉しそうに顔をほころばせた。
(よしよし、喜んでくれたか)
ゴブリンたちは……窮屈で嫌がるかもしれないし寝袋は要らんだろう。
でも、そのうちにちゃんとした環境で寝泊まりはさせてあげたいな。
俺は次に【基礎食料】タブを開く。
(いつもパン(5DP)だけじゃ飽きるよな。それに、ゴブリンたちも頑張ってくれてる)
俺は新しくアンロックされた「温かいシチュー(一皿) - 30 DP」を3つ。
少女の分とゴブリン二匹の分だ。合計 90 DP 。DPが 1150 から 1060 に減る。
ぽん、ぽん、ぽん、と。 部屋の中に、湯気の立つシチューの皿が3つ出現した。
パンとは比べ物にならない、肉と野菜のいい匂いが部屋に充満する。
「シチュー……?」
少女は目を輝かせ、ゴブリン二匹も「ギィ!?」と興奮したように鼻をひくひくさせている。
(スライムたちは……飯は食わないみたいだ)
俺はゴブリンたちに意識で「お前たちの分だ、食え」と伝える。
ゴブリンたちは慌ててそれぞれの皿を受け取ると扉の前に戻り、ふーふーと息を吹きかけるのももどかしく熱いシチューにかぶりついた。
「ギギィ!(うまい!)」とでも言いたげだ。
少女も寝袋に座りながらシチューを一口一口大事そうに味わっている。
「おいしい……あったかい……」
パンと水だけの生活から一転、温かい食事と寝床。
彼女の顔から、ここに来た時の不安や恐怖の色は、ほとんど消えていた。
(うん。食べ物は精神を安定させる。間違いない)
ゴブリンたちも、ただの召喚魔物から仲間……というかこの奇妙な共同生活の一員としての意識が芽生えてきたかもしれない。
(さて)
少女とゴブリンの生活の質……QOLを改善しても、俺のDPはまだ潤沢に残っている。
(よし、シチューで腹も膨れた。だけどこの部屋はまだ暗すぎる)
ゴブリンたちと俺は暗闇でも平気だが、少女にはやはり文明的な生活を送らせてあげたい。
それには明かりが必要だ。
俺はDP(1060)を確認し【生活雑貨】リストから「松明(一本) - 10 DP」を選択。 どうせなら、と4本分(合計 40 DP)を生成した。
DPが 1060 から 1020 に減る。
(設置場所は……壁だ)
俺が念じると部屋の壁に都合よく備え付けられていたかのように、ホルダーと火のついた松明が生成された。
パチパチ……と火が爆ぜる音。さっきまでの薄暗い石の部屋が一気にオレンジ色の暖かい光で満たされる。
壁のヒビや、床の埃までくっきりと見えるようになった。
「わ……!」
「ギィ!?」
少女もゴブリンたちも、突然明るくなった部屋に驚いて目をしばたたかせている。
だが暗闇の恐怖から解放された安心感は大きいようだ。少女の表情がシチューの時とはまた別に、パッと明るくなったのが分かった。
(よしよし。これで夜も安心だ。次は……防衛力とあいつらの装備だな)
俺はDP(1020)を使い、今度は【召喚(ガチャ)】タブを開く。
「一般魔物ガチャ」じゃない、別のやつだ。
♢ ♢ ♢
【生成リスト:召喚(ガチャ)】
一般魔物ガチャ([C]コモン) …… 5 DP
下級魔物ガチャ([UC]アンコモン) …… 50 DP
コモン装備ガチャ(一つ) …… 30 DP
♢ ♢ ♢
(これだ。30DP。少女とゴブリン二匹、ちょうど3人分。3回引いてみよう)
俺は「コモン装備ガチャ」を3回実行した。 (合計 90 DP)
DPが 1020 から 930 に減る。
ガチャのエフェクトは魔物召喚よりも控えめだ。
俺の目の前の床にぽん、ぽん、ぽんと3つのアイテムが連続で出現した。
「小さなナイフ(鞘付き)」 …… 護身用にはなりそうな、最低限の刃物。
「革の小盾(バックラー)」 …… 腕に固定するタイプの、丸くて小さな盾。
「布の服(子供用)」 …… 少女が着ている麻袋よりは、ずっとマシなワンピース。
(お、なかなかいい引きじゃないか?)
[C]コモンガチャとはいえ、今の俺たちには十分すぎる装備だ。
少女もゴブリンたちも、突然現れた3つのアイテムと俺を交互に見ている。
「これも神様が……?」
少女がゴクリと喉を鳴らすのが分かった。
(よし、分配だ)
俺はまず、床に置かれた「布の服」を光で少女の方へそっと示す。
「わたしに……?」
少女は驚いた顔をしたが、俺が神様っぽくゆっくり点滅すると麻袋を脱ぎ捨て、新しい服に着替えるために部屋の隅へと移動した。
(うん、石でよかった。下手にアバターとか持ってたら目のやり場に困るところだ)
次に俺はゴブリン二匹に念を送る。
(先輩ゴブリン! お前は「ナイフ」を持て!後輩ゴブリン! お前は「盾」だ!)
「ギィ!」
「ギ?」
二匹は命令されるがまま、ナイフと小盾を拾い上げる。 先輩ゴブリンはナイフを握りしめ、シャッシャッと空を切って満足そうだ。戦闘用([C])の本能が刺激されたらしい。
後輩ゴブリンは盾の腕への付け方が分からないのか、頭に乗せたり背負おうとしたりしている。……最終的に先輩ゴブリンに殴られて、なんとか腕に装着できたようだ。
やがて少女が部屋の隅から出てきた。 ボロボロの麻袋ではなく、簡素だが清潔なワンピース姿だ。
泥を落とせば、かなり整った顔立ちをしているのが分かる。 少女は恥ずかしそうに服の裾をつまみ、俺に向かってぺこりとお辞儀をした。
(よし……!)
ナイフと盾で武装したゴブリン二匹。 清潔な服を着た少女。壁で燃える松明。 床に置かれた寝袋。
(いくらか……文明的な集団になったぞ!)
俺は満残りのDP(930)と、脳裏のリストに意識を戻した。
スライム軍団は今も休まず外でDPを稼いできてくれているが、次にやるべきことは何か。
俺の視線はある項目に釘付けになっていた。
♢ ♢ ♢
【生成リスト:召喚(ガチャ)】
一般魔物ガチャ([C]コモン) …… 5 DP
下級魔物ガチャ([UC]アンコモン) …… 50 DP
コモン装備ガチャ …… 30 DP
♢ ♢ ♢
(下級魔物ガチャ……[UC]アンコモン……50DP……!)
ゴブリンやスライムの10倍のコストだ。 アンコモンというのがどれほどの戦力かはわからない。
俺の感覚では一般の次が下級というのが少し違和感を感じるな……。まぁいい、何かルールがあるんだろう。ポイントから考えて防衛力は格段に上がるはずだ。
しかし……。
([C]ゴブリン(知力3)ですら最初は命令が通じるか不安だったんだ。それより知性が高い[UC]ランクの魔物が、素直に俺の命令を聞いてくれる保証はどこにもない)
(少女が怯えるような、凶暴なヤツが出たらどうする?50DPあれば、[C]ガチャが10回引ける。ゴブリン1匹、スライム9匹の実績を考えると戦力増強よりDP稼ぎのスライムを増やしたほうが堅実か……?)
俺は粗末な扉を見る。
(でも防衛力は必要だ)
──さて、どうする。
♢ ♢ ♢
[現在の拠点状況]
拠点名: (未設定)
階層: 1階のみ(明るくなった)
DP: 930
訪問者: 1名(少女、装備変更)
召喚中: スライム x10(資源採集中)、ゴブリン x2(ナイフと盾を装備)
その他: 寝袋x1、松明x4
♢ ♢ ♢
「ギィ(メシだ)」
「……いただきます」
ゴブリン (先輩のほう)はすっかり少女に慣れたのか、俺がDPで生成した「ふかしたパン(5DP)」と「水(1DP)」を少女の前に置き、自分たちの分も受け取って扉の前に戻っていく。
少女も最初はゴブリンを怖がっていたが、害意がないことと俺の命令で動いていることを完全に理解したようだ……。
ゴブリン二匹と少女一人。
一日三食として、(5+1)DP x 3人 x 3食 = 54 DP。
結構な出費だ。
だが……今の俺にとって、それはまったく痛くなかった。
何故なら──
(いいぞ、スライムくん! もっとだ! もっと集めてこい!)
俺の視線の先では朝から晩まで……いや、夜通しか。
10匹のスライム軍団が、休むことなく外と拠点を往復し続けていた。
ぷるるん! (扉の外から帰還) ↓ べちゃっ! (俺に資源 (泥とか苔とか光る石とか)を吐き出す) ↓ [DP +15] ↓ ぷるるん! (再び外へ)
このサイクルが10匹体制で延々と繰り返されている。
どうやら彼らには食事も睡眠も必要ないらしい。本能が命じるままに資源を俺の元へ運び続けてくれている。
素晴らしい……!
戦闘にはまるで役に立たないが、こいつらこそが俺の生命線であり拠点のインフラそのものだ!
俺は、あの時10連ガチャでスライム軍団を引き当てた自分を褒め称えた。
……まぁ、排出率が高いから誰がやってもスライム塗れになるかもしれないけど。
そして今……スライムたちの不眠不休の労働と、少女の滞在ボーナスにより俺のDPはとんでもないことになっていた。
[DP: 1250]
(……すげぇ。一日で1000DP以上稼ぎやがった!)
食費の54DPなんて必要経費だと割り切れる。
これだけあれば高嶺の花だった【拠点機能】リストが、一気に現実味を帯びてくる!
よし……リストを確認しよう!
♢ ♢ ♢
(所持DP: 1250)
【生成リスト:拠点機能】
フロア増設ガチャ(低コスト) …… 1000 DP
管理人アバター(粘土) …… 5000 DP
【生成リスト:基礎食料】
水(1DP)、パン(5DP)、スープ(15DP)
温かいシチュー(一皿) …… 30 DP
チーズと干し肉のセット …… 50 DP
【生成リスト:生活雑貨】
ぼろ布(3DP)、薪(5DP)、松明(10DP)、毛布(15DP)
清潔な寝袋(一つ) …… 100 DP
ランタン(燃料入り) …… 120 DP
【生成リスト:召喚(ガチャ)】
一般魔物ガチャ([C]コモン) …… 5 DP
下級魔物ガチャ([UC]アンコモン) …… 50 DP
一般装備ガチャ …… 30 DP
♢ ♢ ♢
(おぉ!? DPが増えたことで、より上位の項目が解放されてる!)
特に「フロア増設ガチャ(1000DP)」。これがついに射程圏内に入った。 このボロい1階だけの生活から、ついに脱却できるかもしれない。
だが「下級魔物ガチャ(50DP)」も気になる。ゴブリンよりマシな戦力が手に入るかもしれない。一般装備ガチャも気になるな……。
いやいや、まずは少女の生活改善か? 「寝袋(100DP)」と「シチュー(30DP)」は魅力的だ。少女の滞在DP増加も馬鹿にならない。
悩んだ挙句……。
(よし、まずは生活環境の改善だ)
俺はスライム軍団が稼いできた莫大なDP(1250)を使い、リストの【生活雑貨】タブを開いた。
(このボロい石の床で寝かせるのは、さすがに気が引ける)
俺は「清潔な寝袋 - 100 DP」を選択し実行した。
DPが1250 →1150
(場所は……少女の近くがいいか)
隅で体育座りをしていた少女のすぐそば、俺の影になる一番安全そうな場所にふかふかの寝袋がふわりと出現した。
「……!?」
少女は突然現れた寝袋に肩を震わせたが、すぐにそれが俺の仕業だと気づいたようだ。
「わぁ……」
おそるおそる手を伸ばし、柔らかい感触を確かめ嬉しそうに顔をほころばせた。
(よしよし、喜んでくれたか)
ゴブリンたちは……窮屈で嫌がるかもしれないし寝袋は要らんだろう。
でも、そのうちにちゃんとした環境で寝泊まりはさせてあげたいな。
俺は次に【基礎食料】タブを開く。
(いつもパン(5DP)だけじゃ飽きるよな。それに、ゴブリンたちも頑張ってくれてる)
俺は新しくアンロックされた「温かいシチュー(一皿) - 30 DP」を3つ。
少女の分とゴブリン二匹の分だ。合計 90 DP 。DPが 1150 から 1060 に減る。
ぽん、ぽん、ぽん、と。 部屋の中に、湯気の立つシチューの皿が3つ出現した。
パンとは比べ物にならない、肉と野菜のいい匂いが部屋に充満する。
「シチュー……?」
少女は目を輝かせ、ゴブリン二匹も「ギィ!?」と興奮したように鼻をひくひくさせている。
(スライムたちは……飯は食わないみたいだ)
俺はゴブリンたちに意識で「お前たちの分だ、食え」と伝える。
ゴブリンたちは慌ててそれぞれの皿を受け取ると扉の前に戻り、ふーふーと息を吹きかけるのももどかしく熱いシチューにかぶりついた。
「ギギィ!(うまい!)」とでも言いたげだ。
少女も寝袋に座りながらシチューを一口一口大事そうに味わっている。
「おいしい……あったかい……」
パンと水だけの生活から一転、温かい食事と寝床。
彼女の顔から、ここに来た時の不安や恐怖の色は、ほとんど消えていた。
(うん。食べ物は精神を安定させる。間違いない)
ゴブリンたちも、ただの召喚魔物から仲間……というかこの奇妙な共同生活の一員としての意識が芽生えてきたかもしれない。
(さて)
少女とゴブリンの生活の質……QOLを改善しても、俺のDPはまだ潤沢に残っている。
(よし、シチューで腹も膨れた。だけどこの部屋はまだ暗すぎる)
ゴブリンたちと俺は暗闇でも平気だが、少女にはやはり文明的な生活を送らせてあげたい。
それには明かりが必要だ。
俺はDP(1060)を確認し【生活雑貨】リストから「松明(一本) - 10 DP」を選択。 どうせなら、と4本分(合計 40 DP)を生成した。
DPが 1060 から 1020 に減る。
(設置場所は……壁だ)
俺が念じると部屋の壁に都合よく備え付けられていたかのように、ホルダーと火のついた松明が生成された。
パチパチ……と火が爆ぜる音。さっきまでの薄暗い石の部屋が一気にオレンジ色の暖かい光で満たされる。
壁のヒビや、床の埃までくっきりと見えるようになった。
「わ……!」
「ギィ!?」
少女もゴブリンたちも、突然明るくなった部屋に驚いて目をしばたたかせている。
だが暗闇の恐怖から解放された安心感は大きいようだ。少女の表情がシチューの時とはまた別に、パッと明るくなったのが分かった。
(よしよし。これで夜も安心だ。次は……防衛力とあいつらの装備だな)
俺はDP(1020)を使い、今度は【召喚(ガチャ)】タブを開く。
「一般魔物ガチャ」じゃない、別のやつだ。
♢ ♢ ♢
【生成リスト:召喚(ガチャ)】
一般魔物ガチャ([C]コモン) …… 5 DP
下級魔物ガチャ([UC]アンコモン) …… 50 DP
コモン装備ガチャ(一つ) …… 30 DP
♢ ♢ ♢
(これだ。30DP。少女とゴブリン二匹、ちょうど3人分。3回引いてみよう)
俺は「コモン装備ガチャ」を3回実行した。 (合計 90 DP)
DPが 1020 から 930 に減る。
ガチャのエフェクトは魔物召喚よりも控えめだ。
俺の目の前の床にぽん、ぽん、ぽんと3つのアイテムが連続で出現した。
「小さなナイフ(鞘付き)」 …… 護身用にはなりそうな、最低限の刃物。
「革の小盾(バックラー)」 …… 腕に固定するタイプの、丸くて小さな盾。
「布の服(子供用)」 …… 少女が着ている麻袋よりは、ずっとマシなワンピース。
(お、なかなかいい引きじゃないか?)
[C]コモンガチャとはいえ、今の俺たちには十分すぎる装備だ。
少女もゴブリンたちも、突然現れた3つのアイテムと俺を交互に見ている。
「これも神様が……?」
少女がゴクリと喉を鳴らすのが分かった。
(よし、分配だ)
俺はまず、床に置かれた「布の服」を光で少女の方へそっと示す。
「わたしに……?」
少女は驚いた顔をしたが、俺が神様っぽくゆっくり点滅すると麻袋を脱ぎ捨て、新しい服に着替えるために部屋の隅へと移動した。
(うん、石でよかった。下手にアバターとか持ってたら目のやり場に困るところだ)
次に俺はゴブリン二匹に念を送る。
(先輩ゴブリン! お前は「ナイフ」を持て!後輩ゴブリン! お前は「盾」だ!)
「ギィ!」
「ギ?」
二匹は命令されるがまま、ナイフと小盾を拾い上げる。 先輩ゴブリンはナイフを握りしめ、シャッシャッと空を切って満足そうだ。戦闘用([C])の本能が刺激されたらしい。
後輩ゴブリンは盾の腕への付け方が分からないのか、頭に乗せたり背負おうとしたりしている。……最終的に先輩ゴブリンに殴られて、なんとか腕に装着できたようだ。
やがて少女が部屋の隅から出てきた。 ボロボロの麻袋ではなく、簡素だが清潔なワンピース姿だ。
泥を落とせば、かなり整った顔立ちをしているのが分かる。 少女は恥ずかしそうに服の裾をつまみ、俺に向かってぺこりとお辞儀をした。
(よし……!)
ナイフと盾で武装したゴブリン二匹。 清潔な服を着た少女。壁で燃える松明。 床に置かれた寝袋。
(いくらか……文明的な集団になったぞ!)
俺は満残りのDP(930)と、脳裏のリストに意識を戻した。
スライム軍団は今も休まず外でDPを稼いできてくれているが、次にやるべきことは何か。
俺の視線はある項目に釘付けになっていた。
♢ ♢ ♢
【生成リスト:召喚(ガチャ)】
一般魔物ガチャ([C]コモン) …… 5 DP
下級魔物ガチャ([UC]アンコモン) …… 50 DP
コモン装備ガチャ …… 30 DP
♢ ♢ ♢
(下級魔物ガチャ……[UC]アンコモン……50DP……!)
ゴブリンやスライムの10倍のコストだ。 アンコモンというのがどれほどの戦力かはわからない。
俺の感覚では一般の次が下級というのが少し違和感を感じるな……。まぁいい、何かルールがあるんだろう。ポイントから考えて防衛力は格段に上がるはずだ。
しかし……。
([C]ゴブリン(知力3)ですら最初は命令が通じるか不安だったんだ。それより知性が高い[UC]ランクの魔物が、素直に俺の命令を聞いてくれる保証はどこにもない)
(少女が怯えるような、凶暴なヤツが出たらどうする?50DPあれば、[C]ガチャが10回引ける。ゴブリン1匹、スライム9匹の実績を考えると戦力増強よりDP稼ぎのスライムを増やしたほうが堅実か……?)
俺は粗末な扉を見る。
(でも防衛力は必要だ)
──さて、どうする。
♢ ♢ ♢
[現在の拠点状況]
拠点名: (未設定)
階層: 1階のみ(明るくなった)
DP: 930
訪問者: 1名(少女、装備変更)
召喚中: スライム x10(資源採集中)、ゴブリン x2(ナイフと盾を装備)
その他: 寝袋x1、松明x4
♢ ♢ ♢
162
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
転生したら王族だった
みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……
無能と追放された俺の【システム解析】スキル、実は神々すら知らない世界のバグを修正できる唯一のチートでした
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業SEの相馬海斗は、勇者として異世界に召喚された。だが、授かったのは地味な【システム解析】スキル。役立たずと罵られ、無一文でパーティーから追放されてしまう。
死の淵で覚醒したその能力は、世界の法則(システム)の欠陥(バグ)を読み解き、修正(デバッグ)できる唯一無二の神技だった!
呪われたエルフを救い、不遇な獣人剣士の才能を開花させ、心強い仲間と成り上がるカイト。そんな彼の元に、今さら「戻ってこい」と元パーティーが現れるが――。
「もう手遅れだ」
これは、理不尽に追放された男が、神の領域の力で全てを覆す、痛快無双の逆転譚!
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる