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14話
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ヒーロー・ゴブリンファイターの視点は部下のCゴブリン3匹を引き連れ、拠点の塔から少し離れた森の中を進んでいた。
(すごい……本当に俺が見てるみたいだ)
ファイターの五感が俺の意識に流れ込んでくる。
湿った土を踏みしめる感触、木々の間を吹き抜ける風の音、得体の知れない獣の遠吠え。
「ギィ(兄貴、あっち、音がしやす)」
部下のゴブリンが棍棒で茂みの向こうを指す。
ファイターは俺の指示を待つまでもなく、音を立てずにそちらへ視線を向けた。
(索敵は任せる。だが無理はするな。お前のレベル上げと安全確保が最優先だ)
俺はファイターに意識でそう伝え、彼の視点を通して未知の森の探索を続けた。
スライム軍団やコボルト採掘隊が働いている場所の安全を確認すると、より森の奥深くへと足を踏み入れていく。
すべては拠点の安全を確保するために。
一方で拠点では……。
俺の意識の半分は2階のコアに残っている。DPはスライムとコボルトのおかげで、再び[DP: 250]まで回復していた。
少女は俺のそばでガチャで当てた布の服の裾を自分で修繕しようとしている。針も糸もないけど……。
平和なものだ。
(さて、これからどう動くか……)
ファイターは森の奥へと進もうとしている。
拠点では少女が静かにしている。 DPも少し余裕が出てきた。
(よし、まずは情報収集だ)
俺はヒーロー・ゴブリンファイターに森の奥へ進むよう意識で指示を出した。
「グルル……(静かにしろ、続け)」
ファイターが喉を鳴らすと、部下のCゴブリン3匹は棍棒やナイフを握りしめ、緊張した面持ちで後をついてくる。
ファイターの視界を通して、俺も初めて見る光景に息を呑む。
太陽の光が届かないほど鬱蒼とした木々。 ねじくれた不気味な根が地面を這い、遠くで獣の鳴き声が響いている。
(……スライムやコボルトたちが、この辺りまで来ていない理由が分かる気がするな。明らかに空気が違う)
ファイターは鋭敏になった感覚で慎重に周囲を警戒しながら進んでいく。
[リーダーシップ]スキルのおかげか、Cゴブリンたちも統率が取れており、バラバラに行動することはない。
その時だった。
ガサガサッ!
(止まれ!)
俺が指示するより早くファイターがピタリと足を止め、アイアンソードに手をかけた。
部下のCゴブリンたちも慌てて身を隠す。
(音がしたな!魔物がいるかもしれない!)
ファイターの視線が音のした方角……前方20メートルほどの、ひときわ鬱蒼とした茂みに集中する。
聴覚が、ザリ……ザリ……と何か硬いものが地面を擦る音を拾った。
ファイターは身を低くし、茂みの向こう側を睨みつけている。
部下のCゴブリンたちは怯え、ファイターの背後に隠れてガタガタと震えている。
(来るぞ!)
俺がファイターに「総員構えろ!」と念を送った、その瞬間。
ブシャァァァッ!!
茂みが爆発したかのように弾け飛んだ! 木々の葉や枝を撒き散らしながら、そこから一体の魔物が姿を現した!
(で、でかい……!)
そいつは、ヒーロー進化したファイターよりも、さらに頭二つ分は大きい。 緑色というよりは土気色の汚れた肌、突き出た牙、豚のような醜悪な顔。
手には、人間の子供ほどの大きさもある、錆びついた巨大なナタを握りしめている。
( オーク……! )
「ブゴォォォォッ!!!」
オークは俺たちの姿を認めると、涎を垂らしながら咆哮した。明らかに俺たちをエサとして認識している。
「「「ギィィィ!?」」」
背後にいた部下のCゴブリン3匹は格上の存在が放つ圧倒的な威圧感に完全に腰が抜けてしまい、今にも逃げ出しそうに震えている。
(くそっ、[C]コモンの連中じゃ、威圧だけで戦意喪失か!)
だが、ファイターは[UC]ヒーローだ。ここで引くわけにはいかない!
「グルルァァァッ!!」
ファイターはオークの咆哮にかき消されまいと自らも雄叫びを上げた。
同時に俺はファイターに命令する。
(ヒーロースキル、[鼓舞]を使え! 部下を逃がすな!)
ファイターの体が淡い光を放つ。 [鼓舞 (Lv.1)]スキルが発動し、背後で震えていたCゴブリンたちの震えがわずかに止まった!
(よし、効いてる! 恐怖は消えなくても、ファイターの指揮からは逃れられなくなった!)
オークが大ナタを引きずりながら地響きを立ててこちらに一歩踏み出した。
俺はファイターの戦闘本能と俺自身の決断をシンクロさせる。
(ファイターが突撃! 部下どもは背後から援護させろ!)
「グルルァァァァッ!!!」
[UC]ヒーロー・ゴブリンファイターは、[鼓舞]スキルで部下たちの士気を無理やり維持したまま自ら先陣を切った。
土を蹴り、オークの巨体へと真っ直ぐに突進する。
(速い! AGI 15のダッシュだ!)
「ブゴッ!?」
オークは自分より小さいゴブリンが真正面から突撃してきたことに驚いたようだ。
だが、その反応も一瞬。
「ブモォォォッ!!」
オークは迎撃のため錆びついた大ナタを力任せに横薙ぎに振り抜いた。
(やばい!)
アイアンソードでアレを受け止めたら、武器ごと叩き折られる!
「グッ!」
ファイターは俺の指示より早く、突進の勢いを殺さず地面スレスレにスライディングするように身をかがめた。
ゴォッ! と大ナタがファイターの頭上を風切り音を立てて通過していく。
(今だ! 懐に入った!)
スライディングから即座に立ち上がったファイターは、オークの無防備な脇腹めがけアイアンソードを突き立てようとする。
「ギィィ!(今だ、投げろ!)」
ファイターの[リーダーシップ]が飛ぶ。
背後で震えていたCゴブリン3匹が、恐怖を振り絞り、オークに向かってそこら辺の石や棍棒を投げつけた。
「ブゴッ!?」
石が背中に当たり、オークの注意が一瞬それる。
(もらった!)
ファイターのアイアンソードが、オークの分厚い脂肪に突き刺さった。
「ブギィィィィィィッ!!?」
オークが今度こそ本気の絶叫を上げる。 だが──浅い!頑強な肉体は、[UC]ヒーローの渾身の一撃すら、致命傷になることを許さなかった。
オークは脇腹に剣が刺さったままファイターを振り払おうと、今度は大ナタではなく巨大な拳でファイターを殴りつけようと振りかぶった。
(まずい! あのデカさの拳だ、まともに食らったらファイター(HP:120)でもタダじゃすまない!)
(カウンターは危険だ! まずは引け!)
オークの巨大な拳が振りかぶられたのを視認した瞬間、俺はファイターに「回避!」と強く念じた。
「グッ!」
ファイターはあの拳をまともに受けるつもりなど無い。
彼はオークの脇腹に突き刺したアイアンソードを捻りながら引き抜くと、即座に後方へ飛び退いた。
直後、ファイターが今しがたまで立っていた場所をオークの巨大な拳が叩き潰した。
土がえぐれ、地響きが足元から伝わってくる。
(危なかった……! 直撃したら即死はなくても、骨が折れてたぞ!)
ファイターはオークから数メートルの距離を取り、アイアンソードを構え直す。
AGI 15の瞬発力が、上のランクのパワーを紙一重でかわしきった。
「ブグゥゥゥゥゥ……ッ!!」
脇腹に剣を突き立てられ、さらにカウンターの拳を空振りさせられたオークは完全に激怒していた。
充血した目が、背後で石を投げてくるCゴブリン3匹には目もくれず、目の前の厄介なゴブリン……ファイター一体に完全に固定された。
オークは大ナタと拳を構え直し、ファイターとの距離をじりじりと詰めようと一歩踏み出した。
怪我はしたが、戦闘力はまだ健在のようだ。
(傷の痛みに慣れる前に、一気に畳みかけるぞ!)
俺はオークの巨体とファイターの研ぎ澄まされた戦闘態勢を見比べる。
「グルァァァ!(総員、続け!)」
ファイターは、Cゴブリンたちに([リーダーシップ]で)恐怖をねじ伏せ、自ら先頭に立って再びオークに襲いかかった。
部下たちも「ギィィ!」とヤケクソ気味に叫びながら、その後に続く。
「ブモッ!」
オークは負傷した脇腹を押さえながらも無謀にも再び突撃してきたゴブリン軍団を迎え撃つ。
今度は大ナタを先ほどの横薙ぎではなく上段から叩き割るように振り下ろした!
(速い! 避けろ!)
ファイターはオークの狙いが自分であることを瞬時に見抜き、横っ飛びに回避する。
だが……
「ブゴッ!」
オークは大ナタの振り下ろしを空振りするのを承知でそのまま地面に叩きつけ、その反動を利用して空いている巨大な拳、回避したばかりのファイターめがけて薙ぎ払った!
(しまった! 二段構えか!)
アイアンソードでガードする暇も、完全に回避する隙もない。
ファイターは、とっさに左腕で顔面を庇う姿勢を取った。
「グッ……ァァアア!!?」
ガードした左腕ごと、ファイターの体が横殴りに吹き飛ばされた!
木々に激突し、[UC]ヒーローの体が地面に転がる。
(ダメージ報告! HP: 120 → HP: 85/120)
(くそっ、左腕が折れたか……!?)
「ブヒッ、ブヒヒヒ!」
オークが、勝利を確信したかのように、下卑た笑い声を上げる。
部下のCゴブリンたちはリーダーが吹き飛ばされたのを見て、完全に動きを止めている。
オークはとどめを刺そうと、倒れたファイターにゆっくりと近づいてくる。
だが──。
「……グルル」
ファイターは左腕を押さえアイアンソードを杖代わりに、ゆっくりと立ち上がった。
その目はまだ一切死んでいない。
(……今だ)
俺とファイターの意識が完全にシンクロする。
オークがファイターがまだ立ち上がることに驚き、油断したその一瞬。
(いけ!!)
「グルァァァァァァァァァッ!!!」
ファイターはAGI 15の全速力でオークの懐──さっき自分が斬りつけた脇腹の古傷めがけて、最後の突撃を敢行した!
「ブゴッ!?」
オークは慌てて拳を振るうが、もう遅い。
ファイターのアイアンソードが、寸分たがわず、さっき突き刺した古傷に、今度は根元まで突き刺さった!
「ブギ……ッ……ァ……?」
オークの動きが、完全に止まった。
彼は自分の脇腹に突き刺さる剣とゴブリンを信じられないという目で見下ろす。
「……グルル……」
ファイターが突き刺した剣を渾身力でさらに抉り、引き抜く。
「ブ……ブギ……」
オークは脇腹から致命的な血飛沫を上げながらゆっくりと膝をつき…… ズシンッ!!! と森の地面を揺らしそのまま動かなくなった。
♢ ♢ ♢
[N]オーク の討伐に成功。
[UC]ヒーロー・ゴブリンファイター は Lv.5 → Lv.7 にアップしました。
[C]ゴブリン(部下) は Lv.1 → Lv.5 にアップしました。
♢ ♢ ♢
(……やったか)
ファイターは左腕の激痛に耐えながら、目の前で倒れた巨体を見下ろしていた。
(すごい……本当に俺が見てるみたいだ)
ファイターの五感が俺の意識に流れ込んでくる。
湿った土を踏みしめる感触、木々の間を吹き抜ける風の音、得体の知れない獣の遠吠え。
「ギィ(兄貴、あっち、音がしやす)」
部下のゴブリンが棍棒で茂みの向こうを指す。
ファイターは俺の指示を待つまでもなく、音を立てずにそちらへ視線を向けた。
(索敵は任せる。だが無理はするな。お前のレベル上げと安全確保が最優先だ)
俺はファイターに意識でそう伝え、彼の視点を通して未知の森の探索を続けた。
スライム軍団やコボルト採掘隊が働いている場所の安全を確認すると、より森の奥深くへと足を踏み入れていく。
すべては拠点の安全を確保するために。
一方で拠点では……。
俺の意識の半分は2階のコアに残っている。DPはスライムとコボルトのおかげで、再び[DP: 250]まで回復していた。
少女は俺のそばでガチャで当てた布の服の裾を自分で修繕しようとしている。針も糸もないけど……。
平和なものだ。
(さて、これからどう動くか……)
ファイターは森の奥へと進もうとしている。
拠点では少女が静かにしている。 DPも少し余裕が出てきた。
(よし、まずは情報収集だ)
俺はヒーロー・ゴブリンファイターに森の奥へ進むよう意識で指示を出した。
「グルル……(静かにしろ、続け)」
ファイターが喉を鳴らすと、部下のCゴブリン3匹は棍棒やナイフを握りしめ、緊張した面持ちで後をついてくる。
ファイターの視界を通して、俺も初めて見る光景に息を呑む。
太陽の光が届かないほど鬱蒼とした木々。 ねじくれた不気味な根が地面を這い、遠くで獣の鳴き声が響いている。
(……スライムやコボルトたちが、この辺りまで来ていない理由が分かる気がするな。明らかに空気が違う)
ファイターは鋭敏になった感覚で慎重に周囲を警戒しながら進んでいく。
[リーダーシップ]スキルのおかげか、Cゴブリンたちも統率が取れており、バラバラに行動することはない。
その時だった。
ガサガサッ!
(止まれ!)
俺が指示するより早くファイターがピタリと足を止め、アイアンソードに手をかけた。
部下のCゴブリンたちも慌てて身を隠す。
(音がしたな!魔物がいるかもしれない!)
ファイターの視線が音のした方角……前方20メートルほどの、ひときわ鬱蒼とした茂みに集中する。
聴覚が、ザリ……ザリ……と何か硬いものが地面を擦る音を拾った。
ファイターは身を低くし、茂みの向こう側を睨みつけている。
部下のCゴブリンたちは怯え、ファイターの背後に隠れてガタガタと震えている。
(来るぞ!)
俺がファイターに「総員構えろ!」と念を送った、その瞬間。
ブシャァァァッ!!
茂みが爆発したかのように弾け飛んだ! 木々の葉や枝を撒き散らしながら、そこから一体の魔物が姿を現した!
(で、でかい……!)
そいつは、ヒーロー進化したファイターよりも、さらに頭二つ分は大きい。 緑色というよりは土気色の汚れた肌、突き出た牙、豚のような醜悪な顔。
手には、人間の子供ほどの大きさもある、錆びついた巨大なナタを握りしめている。
( オーク……! )
「ブゴォォォォッ!!!」
オークは俺たちの姿を認めると、涎を垂らしながら咆哮した。明らかに俺たちをエサとして認識している。
「「「ギィィィ!?」」」
背後にいた部下のCゴブリン3匹は格上の存在が放つ圧倒的な威圧感に完全に腰が抜けてしまい、今にも逃げ出しそうに震えている。
(くそっ、[C]コモンの連中じゃ、威圧だけで戦意喪失か!)
だが、ファイターは[UC]ヒーローだ。ここで引くわけにはいかない!
「グルルァァァッ!!」
ファイターはオークの咆哮にかき消されまいと自らも雄叫びを上げた。
同時に俺はファイターに命令する。
(ヒーロースキル、[鼓舞]を使え! 部下を逃がすな!)
ファイターの体が淡い光を放つ。 [鼓舞 (Lv.1)]スキルが発動し、背後で震えていたCゴブリンたちの震えがわずかに止まった!
(よし、効いてる! 恐怖は消えなくても、ファイターの指揮からは逃れられなくなった!)
オークが大ナタを引きずりながら地響きを立ててこちらに一歩踏み出した。
俺はファイターの戦闘本能と俺自身の決断をシンクロさせる。
(ファイターが突撃! 部下どもは背後から援護させろ!)
「グルルァァァァッ!!!」
[UC]ヒーロー・ゴブリンファイターは、[鼓舞]スキルで部下たちの士気を無理やり維持したまま自ら先陣を切った。
土を蹴り、オークの巨体へと真っ直ぐに突進する。
(速い! AGI 15のダッシュだ!)
「ブゴッ!?」
オークは自分より小さいゴブリンが真正面から突撃してきたことに驚いたようだ。
だが、その反応も一瞬。
「ブモォォォッ!!」
オークは迎撃のため錆びついた大ナタを力任せに横薙ぎに振り抜いた。
(やばい!)
アイアンソードでアレを受け止めたら、武器ごと叩き折られる!
「グッ!」
ファイターは俺の指示より早く、突進の勢いを殺さず地面スレスレにスライディングするように身をかがめた。
ゴォッ! と大ナタがファイターの頭上を風切り音を立てて通過していく。
(今だ! 懐に入った!)
スライディングから即座に立ち上がったファイターは、オークの無防備な脇腹めがけアイアンソードを突き立てようとする。
「ギィィ!(今だ、投げろ!)」
ファイターの[リーダーシップ]が飛ぶ。
背後で震えていたCゴブリン3匹が、恐怖を振り絞り、オークに向かってそこら辺の石や棍棒を投げつけた。
「ブゴッ!?」
石が背中に当たり、オークの注意が一瞬それる。
(もらった!)
ファイターのアイアンソードが、オークの分厚い脂肪に突き刺さった。
「ブギィィィィィィッ!!?」
オークが今度こそ本気の絶叫を上げる。 だが──浅い!頑強な肉体は、[UC]ヒーローの渾身の一撃すら、致命傷になることを許さなかった。
オークは脇腹に剣が刺さったままファイターを振り払おうと、今度は大ナタではなく巨大な拳でファイターを殴りつけようと振りかぶった。
(まずい! あのデカさの拳だ、まともに食らったらファイター(HP:120)でもタダじゃすまない!)
(カウンターは危険だ! まずは引け!)
オークの巨大な拳が振りかぶられたのを視認した瞬間、俺はファイターに「回避!」と強く念じた。
「グッ!」
ファイターはあの拳をまともに受けるつもりなど無い。
彼はオークの脇腹に突き刺したアイアンソードを捻りながら引き抜くと、即座に後方へ飛び退いた。
直後、ファイターが今しがたまで立っていた場所をオークの巨大な拳が叩き潰した。
土がえぐれ、地響きが足元から伝わってくる。
(危なかった……! 直撃したら即死はなくても、骨が折れてたぞ!)
ファイターはオークから数メートルの距離を取り、アイアンソードを構え直す。
AGI 15の瞬発力が、上のランクのパワーを紙一重でかわしきった。
「ブグゥゥゥゥゥ……ッ!!」
脇腹に剣を突き立てられ、さらにカウンターの拳を空振りさせられたオークは完全に激怒していた。
充血した目が、背後で石を投げてくるCゴブリン3匹には目もくれず、目の前の厄介なゴブリン……ファイター一体に完全に固定された。
オークは大ナタと拳を構え直し、ファイターとの距離をじりじりと詰めようと一歩踏み出した。
怪我はしたが、戦闘力はまだ健在のようだ。
(傷の痛みに慣れる前に、一気に畳みかけるぞ!)
俺はオークの巨体とファイターの研ぎ澄まされた戦闘態勢を見比べる。
「グルァァァ!(総員、続け!)」
ファイターは、Cゴブリンたちに([リーダーシップ]で)恐怖をねじ伏せ、自ら先頭に立って再びオークに襲いかかった。
部下たちも「ギィィ!」とヤケクソ気味に叫びながら、その後に続く。
「ブモッ!」
オークは負傷した脇腹を押さえながらも無謀にも再び突撃してきたゴブリン軍団を迎え撃つ。
今度は大ナタを先ほどの横薙ぎではなく上段から叩き割るように振り下ろした!
(速い! 避けろ!)
ファイターはオークの狙いが自分であることを瞬時に見抜き、横っ飛びに回避する。
だが……
「ブゴッ!」
オークは大ナタの振り下ろしを空振りするのを承知でそのまま地面に叩きつけ、その反動を利用して空いている巨大な拳、回避したばかりのファイターめがけて薙ぎ払った!
(しまった! 二段構えか!)
アイアンソードでガードする暇も、完全に回避する隙もない。
ファイターは、とっさに左腕で顔面を庇う姿勢を取った。
「グッ……ァァアア!!?」
ガードした左腕ごと、ファイターの体が横殴りに吹き飛ばされた!
木々に激突し、[UC]ヒーローの体が地面に転がる。
(ダメージ報告! HP: 120 → HP: 85/120)
(くそっ、左腕が折れたか……!?)
「ブヒッ、ブヒヒヒ!」
オークが、勝利を確信したかのように、下卑た笑い声を上げる。
部下のCゴブリンたちはリーダーが吹き飛ばされたのを見て、完全に動きを止めている。
オークはとどめを刺そうと、倒れたファイターにゆっくりと近づいてくる。
だが──。
「……グルル」
ファイターは左腕を押さえアイアンソードを杖代わりに、ゆっくりと立ち上がった。
その目はまだ一切死んでいない。
(……今だ)
俺とファイターの意識が完全にシンクロする。
オークがファイターがまだ立ち上がることに驚き、油断したその一瞬。
(いけ!!)
「グルァァァァァァァァァッ!!!」
ファイターはAGI 15の全速力でオークの懐──さっき自分が斬りつけた脇腹の古傷めがけて、最後の突撃を敢行した!
「ブゴッ!?」
オークは慌てて拳を振るうが、もう遅い。
ファイターのアイアンソードが、寸分たがわず、さっき突き刺した古傷に、今度は根元まで突き刺さった!
「ブギ……ッ……ァ……?」
オークの動きが、完全に止まった。
彼は自分の脇腹に突き刺さる剣とゴブリンを信じられないという目で見下ろす。
「……グルル……」
ファイターが突き刺した剣を渾身力でさらに抉り、引き抜く。
「ブ……ブギ……」
オークは脇腹から致命的な血飛沫を上げながらゆっくりと膝をつき…… ズシンッ!!! と森の地面を揺らしそのまま動かなくなった。
♢ ♢ ♢
[N]オーク の討伐に成功。
[UC]ヒーロー・ゴブリンファイター は Lv.5 → Lv.7 にアップしました。
[C]ゴブリン(部下) は Lv.1 → Lv.5 にアップしました。
♢ ♢ ♢
(……やったか)
ファイターは左腕の激痛に耐えながら、目の前で倒れた巨体を見下ろしていた。
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アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
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