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序章・この素晴らしくも狂った世界へ
第10話
しおりを挟む【イレネス大連邦のとある大魔法使いの授業】
エルフたちったら、まあなんて格式張った連中なんでしょう。
権威だの伝統だのと、まるで古い靴下でも大事そうに抱えているみたい。
ワインと同じで、カビだらけになるほど価値が上がると思い込んでいるんですから滑稽ですよね。
エルフの貴族様方といえば、血筋のことになると目の色が変わります。
まるで家系図が宝の地図かなにかのように。
「ほーら見てよ、私の先祖はこの辺りで恐竜と一緒にお茶を飲んでいたザマス」
なんて自慢話をしてくる始末でございます。
そして、この長命なおめでたい連中ときたら、歴史を積み重ねることが自己アピールの最大の武器だと思っているんです。
まるで、歴史の厚みで相手を圧倒しようとしているみたい。
「私の家系は1万年前までさかのぼれるんですよ」なんて言われても、「へー、そうですか。で、その1万年の間に何か面白いことでもあったんですか?」って聞きたくなりますよね。
でも、王族様はまた別格。
ハイエルフこと、エルフの王族様は、もはや神様みたいな存在なんです。
だって寿命なんて存在しないし、病気にもならない不変の理でございますから。
自分が歴史そのものだから、血筋なんてどうでもいいんです。
──でも、家族は大事にするのです。
永遠に生きる彼らにとって、家族は退屈しのぎの最高の娯楽なのかもしれません。
「ああ、また一万年経ったか。そろそろ家族でも作るか」なんて感じでしょうかね。
ハイエルフ様たちの世界ときたら、永遠の時間の中で唯一の慰めが自分に最も近しい存在だなんて。
なんだか切ないような、悲しいような。
でも、それは他の超越種も同じ。
ハイエルフも、グランドワーフも、エンドフェアリーも、始祖も、エンシェントドラゴンも。
みんな悠久の時間の中で、永遠の退屈との闘いに挑んでいるかのようです。
グランドワーフ様は山の中で千年かけて一本のビールを醸造し、「やっと発酵が始まったぞ!」と大喜び。
エンドフェアリー様は次元の狭間でチェス大会を開き、一手に百年かけて考え込む。
始祖様は宇宙の果てで自分の存在理由を探し続け、「私は誰だ?」と永遠に自問自答。
エンシェントドラゴン様に至っては、鱗一枚磨くのに千年かけ、「今日も輝いているな」と自画自賛。
では、ハイエルフ様はというと。
ハイエルフ様に至っては、一本の髪の毛を手入れするのに一万年かけ、「今日もこの輝きは永遠でございますわ」と鏡に向かってうっとり。
彼らの美容ルーティーンは、まさに気の遠くなるような長さです。顔を洗うのに百年、化粧水をつけるのに千年、そして髪を梳かすのに一万年。
「完璧な美しさには時間がかかるのよ」と、にこやかに微笑むハイエルフ様。
その間、世界中で文明が興り滅びていることなど、まるで気にも留めません。
彼らの衣装選びに至っては、もはや芸術の域。
「このドレス、前回着たのはたった2000年前だわ。まだ新しすぎるわね」
なんて呟きながら、壮麗なる衣装部屋で永遠と選び続けます。
そして、ハイエルフ様の食事風景といったら、まさに時が止まったかのよう。
一口の料理を味わうのに百年、ワインを一口飲むのに千年。
「急いては事を仕損じる」が彼らのモットーらしいのですが、それにしてもペースが遅すぎやしませんか?
彼らの会話もまた、悠久の時を感じさせます。
「おや、昨日会ったばかりじゃないか」と言いながら、実は前回会ったのは一万年前だったりします。ハイエルフ様にとっては、それくらいの時間はまばたきする程度の一瞬なのでしょう。
結局のところ、超越種の方々の日常生活は、私たち下位種から見れば途方もなく長く、そして退屈に思えるかもしれません。
でも、彼らにとってはそれが「普通」なのです。
「時は金なり」なんて言葉がありますが、彼らにとっては「時は無限大」。
だからこそ、一つ一つの行動に膨大な時間をかけ、完璧を追求し続けるのかもしれません。
──そして。
彼らが退屈しのぎに世界大戦を引き起こすなんて……まあ、驚くべきことでもないのかもしれません。
ハイエルフ様が「ちょっと面白いことでもしようかしら」と思い立った日には、世界中が震え上がるでしょうね。
想像してみてください。指先一つであらゆる生命を無に帰すことが出来る彼らが、ある日ふと「そういえば、戦争というのをやったことがないわ」なんて思いつくシーンを。
ハイエルフ様が優雅に紅茶を啜りながら、「ねえ、ちょっと世界を滅ぼしてみない?」と何気なく提案する。
グランドワーフ様は千年熟成の酒を飲みながら「いいね、新しい山でも作れるかもしれない」と頷く。
エンドフェアリー様は次元の狭間で「面白そう。新しいゲームが創れそうだよ」とほくそ笑む。
始祖様は宇宙の超空洞で「自分の存在意義が見つかるかもしれない」と期待に胸を膨らませる。
エンシェントドラゴン様に至っては星の核の中で「鱗の輝きを試す良い機会だ」と目を輝かせる。
そして次の瞬間、世界中が戦火に包まれる。彼らにとっては、まるでチェスの駒を動かすような感覚なのでしょう。
国々が滅び、文明が崩壊し、数百万幾千万何億の命が失われても、彼らにとってはただの退屈しのぎ。
「おっと、少し大きくなりすぎたかな?まあ、1000年もすれば元通りだろう」なんて呑気なものです。
彼らの「ちょっとした気まぐれ」が、我々にとっては壊滅的な災厄となる。
彼らの「退屈しのぎ」が、我々の歴史を塗り替えてしまう。
なんとも恐ろしい話ですこと。
彼らにとっては、世界大戦など週末の庭いじりと同じくらいの感覚なのでしょう。国々を駒に見立て、大陸を盤面に、まるでチェスでも楽しむかのように戦争を繰り広げる。
我々にとっては壮絶な世界の終末であっても、彼らにとっては退屈しのぎの庭いじり程度。
数千年、数万年の時を経て、また新たな文明が芽吹き、新たな種族が興る。
そして彼らは、優雅に微笑みながらこう言うのです。
「おぉ。素敵な庭が出来ているな。ちょっくらまた戦争を起こしてみようか」
恐ろしいことに、これが彼らの「遊び」なのです。 我々の存在など、彼らにとっては庭に咲く一輪の花程度の価値しかないのかもしれません。
だからこそ、私たち下位種は必死に生きなければならない。 彼らの気まぐれな「庭いじり」に巻き込まれないよう、しっかりと根を張り、強く生きていかなければ。
だからこそ、ハイエルフ様や他の超越種様が退屈しないよう、我々は常に「面白い」存在であり続けなければならないのです。さもなければ、彼らの気まぐれな遊びの道具になってしまうかもしれません。
【大魔法使いの授業を受けたとある超越種の言葉】
またファルネ先生の大げさな話につきあわされちゃったわね。先生の想像力には感心するけど、現実はそんなに劇的じゃないわ。
彼女はファンタジー小説の読みすぎで現実とフィクションの境目が曖昧になっちゃってるみたい。一万年かけて髪を梳かすなんて、私だってしないわよ。
せいぜい百年くらいかしら?
……冗談よ。
先生の話を聞いて、私まで現実とフィクションの境目を忘れそうになったわ。
それに、世界大戦を引き起こすなんて馬鹿みたい。
私たちだってそんなに暇じゃないし、別のことに時間を費やすわよ。
世界大戦なんて起こしたら、後始末が大変でしょ?破壊された文明を再建するのに何千年もかかるわよ。
え?なんでそんなことを知っているかだって?
さぁ。どうしてだろう?
私だって十万年前のことは覚えてないし。
記憶だって曖昧になるものよ。
特に……不都合な記憶はね。
それに私たちが実際にそんなことをしたなんて、誰も証明できないわ。
証拠なんてないもの。
あったとしても、とっくの昔に……消えてるはずだし。
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