悪魔とダラダラ異世界道中

灯籠

文字の大きさ
9 / 55

第9話

しおりを挟む
 一泊してみたはいいものの、今後の予定を決めていないので、俺はイーギに相談することにした。

 「なあイーギ、これからはどうするんだ?」

 「そうだナ。腹減ったし、ギルドで飯を食おうゼ。」

 そういや、俺達はまだこの世界で飯を食ったことがないんだったな。

 「異世界の飯かあ。ソワソワしてきたな。」

 「安心しろヨ。この下界の飯は結構イケるんダヨ。ロケハンした俺が保証するゼ。」

 「まあ、そーゆうのもあるけど。・・・アレルギーとかさ。俺達の世界ではなかったけど、この世界の飯になると相性が悪い、なんてことはないよな?」

 「気にすんなっテ!その時はその時だっテ!」

 やっぱコイツ、頭が平和だな。



 ギルドに着いた俺達は席に座り、カウンターに書いてあるメニューを眺めた。とりあえず飲み物と近くにいた客と同じ食べ物を注文した。

 「そういやお前、お金持ってんのか?このカード分しか持ってない、ってことはないよな?」

 「そんなヘマしねーヨ。俺様を誰だと思ってんダ?」

 「分かってるから、気がかりなんだよ。」

 そんなことを言っていると、

 「お待たせしましたぁ~。」

 と言い、昨日見たウェイトレスが飲み物を持ってきてくれた。そしていざ飲もうとしたところ、

 「こちらもどうぞぉ~。」

 と言い、テーブルに木製のストローらしきものを置いてきた。

 「あの、これ・・・。」

 「サービスですぅ。それでは、お楽しみくださいぃ~。」

 そう言ってウェイトレスはそそくさとカウンターに戻っていった。

 「どうしたシイマ?何で固まってンダ?」

 いや、明らかにストローなのは分かるが、これって・・・。

 「これ、カップルがよく使う、二つに分かれたやつだよな・・・?」

 どう見ても一人用のストローではなかった。

 「あ、ああ。そうだナ・・・ククッ。」  

 「・・・どうして笑うんだい?」

 ウェイトレスとイーギの意図が一切分からなかったので、俺はストローの片方だけを使ってその飲み物を飲むことにした。



 食事を終え、その会計をしようとして席を立った時、ギルドにいた人の視線の大半がこちらを向いていることに気がついた。そのことを、イーギに確認してみた。

 「俺達、すごく見られてないか?」

 「お、お前の言うとおりだナ、シイマ。」

 「あと、どうしてお前はずっと笑うのをこらえてんだ?」

 「た、大したことじゃねえヨ・・・ケケッ。」

 こいつ、絶対に何か隠してるな。

 そして俺達はカウンターで会計を済ませ、ギルドを出ようとしたとき、

 「また会ったな!男好きの兄ちゃん!」

 とギルドの入り口で聞き覚えのある声がした。シジーヌだった。 

 もちろん俺はそんな趣味などないのでシジーヌを通り抜けていってギルドの出口に向かうと、

 「無視すんなよ、寂しいじゃんかよぉ。」

 え?俺?

 「なんで俺をそう呼ぶんだ?そんな趣味、一切ねえぞ。」

 「そうか?でも昨日の晩に、レッスさんのところの宿から、抱かせろ、って大声と、男の悲鳴が村中に響いてたんだよ。」

 ・・・は? 

 「それで気になった村の人たちが宿に行って誰が泊まってるんだって聞いたら、お前さん達が泊まってるって答えたもんだから、なるほど、そういいうことか、ってなってるんだ。」

 「いや、それは間違ってる。だって・・・。」

 あ、やべ。イーギが変身できるって言ったら、ソッコーでバレちまう。・・・ちくしょう、どうやって弁解すればいいんだ? 

 「間違ってる?いやでも、そこにいるお前さんの仲間が、そう言ってたもんだからさ。」

 と言い、シジーヌは指をさした。

 「・・・え?」

 俺はシジーヌが指をさした方を振り返ると、そこには、

 「ン?」

 イーギがいた。

 「おい、イーギ。これはどういうことだ?」

 するとイーギはニヤけながらわざとらしく、

 「いやあ、俺は誰が泊まってるんダ、って聞かれたカラ、俺とシイマです、って答えただけなんだがナァ。なぁんでこうなったのかナァ。」

 ・・・これで全部分かった。俺は、この悪魔にハメられたんだ。こいつ、俺に襲われた仕返しに、俺を男色家扱いするレッテルを張りつけやがった。 

 「コ、コイツ・・・。」

 そしてイーギは耳元で、

 「ちなみに、ほとんどの村の人がそう認識していることになってるナ。・・・もちろん、あの受付嬢もナ。地域の情報網、エグいナァ。」

 と言いやがった。

 そう言われて冒険者受付の方を見上げると、受付嬢は屈託のない営業スマイルを俺に向けてきやがった。おい、嘘だろ・・・。



 「うわああああああああん!」

 気づいたら、俺は叫びながら村を走っていた。百歩譲って、村の人にそう思われてもいい。けど、あの受付嬢にもそう認識してほしくなかった。

 人間関係がこじれることを恐れる俺が、生まれて初めて彼女を作ろうと思ったら、この仕打ちだ。もう、この村に居場所はない。

 そう思って走っていると、シイゼテが前方にいたのが確認できた。

 俺はシイゼテの前に向かって立ち止まり、

 「なあ、お前なら、嘘だって分かってくれるよな・・・?」

 と聞いてみた。すると、

 「否定しなくたっていいよ。僕は、その・・・。それでも君の友達でいるよ。」

 と言われた。

 「うわああああああ!」

 実質的に受付嬢にフラれたし、誤解は解けねえし!アイツマジ何なんだよ!もう、ヤダ!人と関わりたくねえ!引きこもりてえ!!!

 俺は一人になりたくなったので、スライムがいたあの森に入っていった。 



 「アヒャヒャヒャ・・・ゴホッゴホッ。アヒャヒャ・・・。」

 シイマのヤツ、絶叫しながらどっか行きやがっタ。あー、スッキリしタ。俺に歯向かった罰ダ。

 さて、そろそろアイツの誤解を解いてやるとするカ・・・。

 「いやあ、まさかお前さん達がそんな嗜好だったなんて、知らなかったよ。」

 「お前さん、たチ?」

 「ああ!だって一緒に泊まってたんだろ?だったら、イーギだってそういうことだろ?」

 「お、俺を・・・」

 「ん?」

 「アイツと一緒にするナァァァァァ!」

 気づいたら俺は村を駆け抜け、スライムがいたあの森に入っていっタ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...