20 / 901
一章 魔王城、意外と居心地がいい気がする。
17(sideアゼル)
しおりを挟むそれから俺は魔王城付近に住んでいる力の強い魔族を中心に、シャルを魔王城の住民、ひいては俺の所有物である旨を一週間かけて伝えてまわった。
人間に興味がないものはあっさりと従ったが、人間が大嫌いな連中は多い。
なんせ人間、めんどくさいもんだから。
俺たちが人間を喰うように人間も俺たちを討伐して素材採取に勤しんでいるから、まぁ少なからず因縁がある種族もいるんだ。
そういうやつらは、今実力行使で従わせ中。だが、俺はあんまりそういうことが好きじゃねえ。
魔王が力で従わせると、実質命令となる。それは流石に気が引けてしまう。
なので敗北者には、シャルはその種族の誰かの許可がないと縄張りへの立ち入りは禁止という書類を交して纏めることにした。
そのあたりは城が住居だから問題ねぇぜ。他のやつらにむざむざ見せびらかす気もない。
残る問題は城の中の連中だが……昨日シャルが外に出たがっていたのでそれを叶えるべく、俺は急ピッチでそいつらとタイマン中だ。
魔族はどうしても不満があればタイマン、敗者は絶対服従。だから、強い魔族は弱い魔族を庇護する。
そういう生き物だからな。
多少ハンデは与えているのだ。
そして奔走の日々である──現在。
俺はシャルの欲しがった桃をたっぷり入れたカゴを口に咥え、お散歩用の形態である小型クドラキオン状態で牢の扉の前にいた。
お散歩形態は、夜の月見散歩のために使っている姿だ。
自分の魔力と血液で作る鎌も纏っていないし、爪や牙も通常状態。魔力も隠密に押さえ込んであるので、半端な魔術師では感知もできない。
ヤバイ……俺天才すぎる……パーペキだ。
桃と動物、シャルの望みを俺だけで叶えることができるこの姿。
桃feat俺。素晴らしい。
いつもなら勢いに任せて照れくささを弾き扉を開けるのだが、この姿では扉を開けられなくて、カリカリと前足で扉の下あたりを鳴らす。するとガチャ、と扉が開く。
「…………」
内側から扉を開けたシャルは、いつもの軽装で俺をきょとんと見つめていた。
俺を見ているだけで後光が射している気がする。いや、絶対射してる。神々しい。
神々しいシャルを見ただけで、俺は機嫌よく尻尾を振ってしまった。
パッタパッタと尻尾を振る俺を見つめるシャルは、少し硬直したあと、俺が中に入れるように扉を大きく開いてくれた。
あ? なんだ? クドラキオンが珍しいのか? それもそうか。俺はかなりレアな魔物だからな!
多少間があった理由にあたりをつけ、軽やかな足取りで中に入り、いつものテーブルにカゴを置く。
そして桃調達を褒められたい俺は、扉を閉めてからゆっくりとあとに続いていたシャルに、うきうきステップで走り寄った。
ドヤ顔ひっさげて。
151
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
転生×召喚
135
BL
大加賀秋都は生徒会メンバーに断罪されている最中に生徒会メンバーたちと異世界召喚されてしまった。
周りは生徒会メンバーの愛し子を聖女だとはやし立てている。
これはオマケの子イベント?!
既に転生して自分の立ち位置をぼんやり把握していた秋都はその場から逃げて、悠々自適な農村ライフを送ることにした―…。
主人公総受けです、ご注意ください。
ギルド職員は高ランク冒険者の執愛に気づかない
Ayari(橋本彩里)
BL
王都東支部の冒険者ギルド職員として働いているノアは、本部ギルドの嫌がらせに腹を立て飲みすぎ、酔った勢いで見知らぬ男性と夜をともにしてしまう。
かなり戸惑ったが、一夜限りだし相手もそう望んでいるだろうと挨拶もせずその場を後にした。
後日、一夜の相手が有名な高ランク冒険者パーティの一人、美貌の魔剣士ブラムウェルだと知る。
群れることを嫌い他者を寄せ付けないと噂されるブラムウェルだがノアには態度が違って……
冷淡冒険者(ノア限定で世話焼き甘えた)とマイペースギルド職員、周囲の思惑や過去が交差する。
表紙は友人絵師kouma.作です♪
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない
タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。
対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる