854 / 901
十五皿目 正論論破愛情論
54(sideタロー)
しおりを挟む右王腕様に攫われた後、私は気がついたら、ベショッ、と吊られた鳥かごの中に落ちていた。
よくわからないけれど、空間を作れる右王腕様だから、私を空間を使って鳥かごに送ることもできると思う。
ここは、どこだろう。
キョロキョロと周囲を見てみるけれど、鳥かご以外はなにもなくて、よくわからない。
だけど、この冷たさと静けさには、覚えがあるような気がした。
「ふっ……ぅ、にゃんにゃ……」
私は傷のない体でしゃるとまおちゃんのお人形さんを抱き抱え、小さくなる。
にゃんにゃんは、傷だらけだった。
私を守って、たくさん傷だらけだった。
私には見えていた右王腕様の姿が見えないにゃんにゃんは、それでも一生懸命私を守ってくれたのに。
私は怖くて、助けてって言えなくて、行きたくないって言えなくて。
にゃんにゃんに隠れて私に近づこうとしていることを、教えてあげられなかった。
大切なことを教えてくれた友達なのに、私は……なにもできなかった。
「うっ……ひっく……ごめ、ごめんなさい……っ」
ポロポロと涙が零れて、目元を擦っても擦っても、止まらない。
全部、私が黙っていたからだ。
みんなと家族でいるのが幸せで、私は、ワガママを押し通した。
親という人が、私にはいなかったから。
シャルが私をあっためてくれて、まおちゃんが私をころころしてくれて、勝手に、二人が私の親になってくれたらって、思ったから。
私は〝ジズ〟じゃなくて──……〝タロー〟で、いたくなった。
『さぁ、口を開けて。美味しいか? ふふふ、お前のために作ったんだ。今日もタローが笑顔で、シャルは幸せだぞ』
『積み木はこうだ。いいか? 外壁を強固に、んん、ガッシン! ってしねぇと、敵がきたら危ねぇぜ。あぁ? 俺のそばにいれば、お前は俺が守ってやる。タローは俺とシャルの娘だからな』
本当は、本当は、私に親はいないのに。私はダメな子。いけない子だね。悪い子だね。
にゃんにゃんみたいに、私はちっとも強くない。たくさんの人に迷惑をかけてまで、私は私を貫けない。
じっと二人のお人形さんを手に、俯く私の涙が落ちていくのを、どうしようもなく見つめる。
ニコリと笑ってくれるシャルが恋しい。ツンと抱きしめてくれるまおちゃんが恋しい。
わかってる。
ここはきっと精霊城で、きっと私が元いた鳥かごだって。
もう、あのあったかい魔王城へは、戻れないんだって。
「でも……もっと、もっとね、いっしょにいたいの……っ……たすけて、って……わがまま、わたし……っ」
グスン、グスン。誰もいない部屋の中に、叶わない言葉がから回った。
もっと早く言えばよかった。
精霊界へ行かないで、私といっしょにいて。私、ここにいたい。助けて、守って、お父さん、パパって、言えばよかった。
自分がなになのか、どうして魔界にたどり着いたのか、精霊族の儀式のこと、全部話しておけばよかった。
都合の悪いことは全部隠して、なにも知らないフリをしたから、一番悪いことが起こっちゃったんだよ。
私、知ってたのに。
知ってたのに……!
シャルとまおちゃんが私を愛してくれていること、必ず私を守ってくれること、知ってたのに、信じなかった。
「ご、ごめんねぇ……ごめんねぇ……っ、私、しゃるがお留守番してていいよって言ったのに、ありがとうも、言ってないぃぃ……っ」
私がなにも言わないからなにもわからないのに、みんな私を守ろうとしてくれたのだ。
だから私が今、ここに一人でいるのは、じごうじとく。
42
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
すべてを奪われた英雄は、
さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。
隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。
それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。
すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。
お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
挿絵をchat gptに作成してもらいました(*'▽'*)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる