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第四話 後輩たちの言い分
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そして続く怒涛のペチペチタイム。
「あざとい。かわいくねー。袖くいが許されるのは女子どもだけですし。調子に乗んなよ三十路目前が。寝ろよ病人。まずさっきから、なに話したいオーラ出してんだってカンジ。優しくしてたらつけあがりやがって」
「て、て、デコが、う……」
「おっさんの上目遣いとか、狙撃されても仕方ないレベルだから。眉下げてないで熱下げろ。ね? 顔が赤いんだよ。今日はかっこ悪いって、先輩がかっこよかったことなんか一度もないでしょ? 記憶の捏造かな? ん?」
「うあ、なに……も、キレてることしか伝わらねぇ……う、やめろ、うう、三初……」
「素直にあーんされてんじゃねぇよちょっとした悪戯だったんだよこちとら。あーあーマジでかわいくないなー」
「いっ、う、ぅぅぅ~……っ」
淡々とした嫌味だったが最後だけは心なしか力強く言われ、ペチペチと叩かれ続けた俺の額は締めとばかりにペチーンッと叩かれた。
どこで怒りのスイッチが入ったんだ。意味がわからねぇ。
キレる若者、理解不能だ。俺なりの優しさ返しだったのに。
「あ」
「お、俺の心遣いを弄びやがった……」
あまりに理不尽な叱られ方をされると、弱ったメンタルでは戦えない。
俺は唸りながらコロンと横に転がり、壁の方を向いて丸くなった。
「う……鬼畜サド、うう……あんまりだ……」
「や、すみません。無意識に。反射的に手が」
「ランダム暴君スイッチ……」
「先輩鼻水垂れる」
ズズ、と鼻をすすって、ふてくされる。
背を向けた俺に三初は肩を軽く揺さぶって呼び立てるが、知ったこっちゃない。
三初の言うことはわからねぇ。
叩かれた時に言っていたことの真意を、半分も理解できない。
俺は一から十まで口に出されなきゃわからないし、一は一にしか見えないのに、コイツは言葉をケチるのだ。
「どうせ怒ったんだろ……ゲホ、うう……嫌なら俺と話、しなくていいし……もう、おとなしく寝る……嫌ならそう言えよ、あんな突っぱねることねぇだろ……これだから頭のいいやつは、仲良くなれね……ぐす」
「や、や。あー、待って、待って。なにも泣くこたないでしょう……」
「泣いて、ねぇ」
「涙腺まで緩むって。アンタどこまで弱体化する気だよ」
呆れた声を馬鹿にしてるのだと思い、俺は唇を噤んで石のように頑なになる。泣いてねぇ。
ちょっとだけ『結局好きな人教えてくんねぇ』とか『お前が不向きはしなくていいって言うから俺もそうしてやりたいだけだったのに』とか、思っただけだ。
ちっとも泣いてねぇ。
「あ~……んん、…………御割先輩」
「っ」
しばらくそっぽを向き続けると、ただ俺を揺すって呼んでいた三初が俺の後ろでボスン、と横になった。
肘でもついているのか、ため息が少し上から聞こえる。
俺の体に片腕が回され、三初は布団からはみ出た黒い頭を抱き抱える。
「怒ってないです、元々怒ってない。ね。好きなだけ聞くから話して? ごめんね、ごめん。不屈の合金メンタルじゃないもんね、今日。やわらか御割だもんね」
そしてそっと耳元に唇を寄せ、子どもを相手取るように謝ってくれた。
抱きしめて慰められた俺は、それだけでうるりと瞳を湿らせてしまう。
本当かよ。ベコベコのへなちょこに成り下がった俺だと、お前は叩きたくなったんだろ? あんなに嫌味も添えたくせに、怒ってねぇって言うのかよ。
「ゲホッ……三初のアホ、もっとわかりやすく言え。なんで、叩いたんだよ。……ちゃんと言うこと、聞いてんだろ」
「あれはなんというか、ね。俺の不向きがあれってだけで、つい」
「……じゃあ、いい。仕方ねぇ」
「うん。あんね? そこで受け入れちゃダメでしょ。対先輩限定の不向きなのにアンタが俺の言葉をわかんないんだから、致命的な欠陥でしょうて」
「意味、わかんねぇ。じゃあ、もっとわかりやすく言え」
「あー……努力しますヨ。先輩命令?」
「ん……」
手の甲で目元を拭われコクリと頷く。
不向きも受け入れるが歩み寄ることもするということで、俺たちのちょっとした軋みは取り敢えず、妥協点を見出した。
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