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第六話 狂犬と暴君のいる素敵な職場です
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どうにか寝室にたどり着いた俺はドサッ、とベッドに倒れ込み、脱力した。
ドアを閉めてこちらに向かってくる三初をじっと枕に顔を埋めながら見つめる。
赤のボーダーの上と紺の無地の下のルームウェアを着てだらりと歩いてくる三初。
「三初、その……俺のカバン開けて見ろ」
その足が壁にかかった自分の黒いスーツの下にあるカバンの傍に来た時、俺は意を決してボソボソと呟いた。
渡すのが照れくさいから相手に取り出させようという、セコい魂胆である。
「は? なんか言い方が気に食わないんでやです。ご自分でどうぞ」
「おわッ」
けれど俺の思い通りには絶対動かない男、三初は、俺に向かってカバンを投げつけてきた。
こ、この野郎。毎度毎度先輩の筋書きを壊しやがって……! 投げんなよ潰れる! 予想外すぎるわ!
うつ伏せに横になっていた俺の背中に見事ヒットしたカバンに手を伸ばし、内心で罵倒する。クソ暴君め。
「さーて。社畜脳の先輩は、支給タブレットと書類ファイルと外回りで入れっぱなしの資料その他仕事関係以外、ろくな荷物を持ってるものかねぇ……おかげで先輩のカバン、いつも筋トレ兼ねてんの? ってくらい重いからなぁ」
ギシッ、とベッドが軋み、クスクスとせせら笑いながら嫌味を言う三初は俺のすぐ近くに腰掛けた。
俺がモゾモゾと開けているカバンを覗き込もうとしてくる。
プライバシーの侵害だぞコラ。
俺だって仕事関係以外のなにかしらを持ち歩いたりするわアホ。
どんどん眉間に寄るシワの数を増やしながら、俺はどうにか底のほうに隠しつつ潰れないよう気をつけて入れていた物を、そーっと取り出した。
「……あぁ、なるほど」
察しがいいのも困ったもの。
覗き込んでいた三初は俺の手にある包装紙に包まれた箱を見て全てを察し、感心したような声を出す。
「このタイミングの提出で、まさかの手作りですか」
「まだなにも言ってねぇのにディスんな!」
そして「そこまで正確に察しなくてイイんだよッ」という俺の叫びに、あははと笑い声を上げた。
ほらな、どうせそんな感じだと思ったぜ……!
わかってんだよ俺が手作り菓子をバレンタインにあげるっつーガラじゃねぇってことはよォ……!
カァァ、と耳まで顔が赤くなった。
きっと風呂に入ったせいでのぼせ上がってしまったのだろう。そうに決まっている。
しばらくクツクツと喉を鳴らして笑っていた三初は俺の隣に潜り込み、同じようにうつ伏せで横になる。
広いベッドだが俺の手元を見るために肩を寄せてくるので、なんだかセックスして寝落ちするだけのいつもと違って普段よりドキドキとした。
「クソッ……ほらよ、ご所望のもんだぞオラァ……喜び勇んで是非にと受け取れ……ッ」
「くくく、見てわかるくらい喜んでるでしょ? わーいやったー。超嬉しー。乙種第四類危険物取扱者と毒物劇物取扱責任者の資格持っててよかったー」
「わかりやすく人の初めての手作り菓子を危険物扱いしてンじゃねぇよこの歩く危険物がッ!」
肩をグリグリぶつけながら菓子を押しつけると、三初は失礼発言で俺をからかう。
遠回しに失敗前提で受け取りやがった。なんてクソ野郎だ。
誰の手作りが可燃性危険物だコノヤロー。燃えカスじゃねぇぞ一応。何回か消し炭になったけども。
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