誰かこの暴君を殴ってくれ!

木樫

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第九話 先輩後輩ごった煮戦線

06



 そうして迎えた新コンビ始動。

 俺は荷物を抱えて、竹本と二人、都市部のショッピングモールへ一週間の出張に出ていた。

 それほど遠くはないが移動の手間を考え、出張扱いでホテルも取った。

 もちろんツインだ。
 竹本は絶望的な顔をしている。

 失礼なヤツだな。ダブルよりマシだろ。打ち合わせしやすいし経費削減になるだろうが仕事舐めんな。

 荷物をホテルに預けて、渋る竹本を引っ張り開店前のモールへ向かう。
 手荷物検査を経て入館証を発行してもらい、事務所で挨拶をした。


「六月から八月の夏季限定イベント〝夏、冷やしちゃいました。〟で七月第一週の出店を担当させていただきます。竹本です」

「初めまして、御割です。本日はよろしくお願いいたします」

「あ! リューシンの担当者さん方ですね。いつもお世話になっております。催事責任者の山場やまばです」


 名刺を渡して挨拶をすると、恰幅のいい小柄な中年男性である山場さんは、笑顔で応対してくれる。

 ちなみにリューシンはうちの会社の名前。基本はローマ字で表記しているが、元々は漢字だ。

 衝立で区切られた応接スペースにて軽く説明を受けたあとは、一週間お世話になるノースモールの一階エリアへ案内してもらった。

 朝早くに業者が入ったので、既に搬入作業は終わっている。
 出入口を背にコーンで区切られ、ショーケースや冷凍庫等一式が布をかけられ置いてあった。物販コーナーもきちんとあり、図面より広く感じる。

 ここがこれから俺たちの臨時店舗だ。
 山場さんと別れたのち、ぐっとシャツを捲ってカフェエプロンを着ける。


「さ、やるぜ。販売の連中が来るまでに陳列して最終チェックしねぇと」

「了解。あ、冷凍庫類はずっと稼働してるから立ち上げ大丈夫。でも中身の在庫チェックはしなきゃで、マニュアルこれ……じゃねぇや。えーっとあれだ。御割はレイアウトチェックと棚補充頼む。並べ方はマニュアルの」

「五ページな。印刷してある。マニュアルは目ぇ通して要所覚えてきたから説明いらねぇ。細けぇとこはチェックリスト作ってきたから、全部やったら見せるわ。設営は俺に任せて、竹本は機材設定やれ。力仕事は俺のが早ぇからよ」

「お、おぉ。助かる」

「ん、パソコン繋げろ。起動かかる。ポップとディスプレイは業者入ってんだよな? 店舗装飾はノータッチで行くぜ?」

「いい、いい。ちな俺レジ設定爆速だからダブルチェックよろしく。売り上げリアタイ……ふぃ~っ怖! お祭りインフルエンサーとコラボして考えたバズレシピだぞ! 一週間じゃもったいねぇ!」

「なら結果出してコンペ取れよ。ったく……あとゴミ出しとか母体のルールまとめ上げろ。販売員に説明できねぇ」

「すみませんもうあります共有忘れですはい。あ~母体の配線工事なきゃな~昨日の夜搬入後すぐ準備しておけたのにな~なんかバタつく予感」

「言っても仕方ねぇだろ。ほら搬入ミスなし、数合わせクリア。棚入れして報告すっからカメラ寄越せ」

「ほぉ~。任せた!」


 印刷しておいたディスプレイ完成図案を見ながら配置を確認して、資材や商品の在庫を合わせてから開封して所定の位置にセットしていく。

 事前に過去の資料を見てトラブル予測を立てていたので、準備は万端だ。

 問題は接客だが……まぁそれは喫茶部門から来てくれる接客メンバーに任せるしかねぇな。たった一週間だしよ。

 陳列しながら、内心で息を吐いた。

 竹本も「俺らは基本的に列整理とか宣伝、在庫と売上管理のマーケティング担当だから」って言ってたしな。

 ごく稀にイベント系で接客を担当した時の残念な記憶を封印して、首を振る。

 宣伝企画の仕事の延長線上にこういうことがあるなら、それも俺の仕事。
 一週間出張ということのイコールは考えないようにして、自分のやるべきことをやる。


「どうにかなる。……どうにかするッ」


 俺は小さく呟き、やれるだけのことをやることにした。




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