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第1章 -幼女期 天敵と王子に出会うまで-
49.閑話 Side天敵 ショユーの波紋
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ここはモリーの実家のステイン伯爵家の屋敷である。
柔らかな日差しが照り付ける良き日に、子ども部屋からやかましい声が聞こえてきた。
「えぇぇえ!何よ!醤油と味噌あるんじゃない!早く言いなさいよぉ!ってか、こんな材料ありながらよくもあんなにマズイもの作ってたわね!本当才能なさすぎよ!」
アイリーンはヒューが持ってきた、ワグナー商会とモレッツ商会が売買し始めた”ショユー”と”ミソン”という西大陸でしか取り扱いがなかった調味料を見て、不機嫌そうに言った。
「--こちらは最近になって流通し始めた調味料です。これまでお嬢様は口にしたことがないと思いますが。」
「はぁ??最近までなかったの??え、じゃあ何で流通し始めてんのよ!!普通アイリがババーンと売り出して、美食の女神の名声を高めることになるでしょ??!本っ当、意味わかんないわ。あの神様頭おかしいわね、次の転生の時は他の神様にチェンジしてもらわないと。」
--まるでこのショユーとミソンをはじめから知っている様な態度で、またお決まりの自分の世界に入り込んでいる。
つくづく不気味な子どもだ。伯爵家へ追い出されたことにも未だ気づいていない残念な頭だと思いきや、この様な出回っていない物も知っている様な態度をとる・・・。
ヒューは今一度、このショッキングピンク髪を持つアイリを、珍獣の様な得体の知れない存在であると認識した。
ショユーとミソンがバジル家にもたらされて約1年が過ぎた。
その間に、アイリーンを取り巻く環境が色々と変わった。
まず、母親であるモリーが制限のある生活に耐えきれなくなり、泣く泣く実家である伯爵家へ戻った。
今まで自由に流行のドレスや宝飾品などを仕立てていた生活から、買い物は全て使用人に街で購入してきてもらわなくてはいけないことに音を上げたのだ。
逆に今まで良くもった方だ。タンジ家の使用人達の予想に反して随分と粘ったものである。
それに伴い、一応実の娘で不貞の子審議中のアイリーンは伯爵家へ一緒に連れていかなければいけないことになり、渋々実家の一室を与えたのである。
伯爵家へ戻ろうと、まだ離縁は成立していない。
モリーは再び自由を手に入れて、公爵家へ戻ることをひたすら目論んでいた。
一方アイリーンはというと、「まぁ父親がいない意地悪な使用人しかいない屋敷よりは、お母様の屋敷の方がマシでしょ。」と特に抵抗もなく伯爵家に居座っている。
父親に見捨てられているということには微塵も気づいていない、ある意味一番の幸せ者なのかもしれない。
唯一不満を大にして申し立てたのは、カイトの存在だ。
カイトはタンジ家の使用人の為、そもそも伯爵家に一緒に移動するなどありえないことだが、アイリーンの中では自分と離れることがありえないことだったらしい。
結局主張は却下されたが、グレンのアイリーンとの面会の時に同行するということで落ち着いた。
もう一つ変わったことは、グレンの存在である。
グレンはバジル家訪問後の鍛錬の成果がメキメキと現れ、今ではぽっちゃりしていた姿が嘘の様に痩せていた。
痩せただけではなく、程よく筋肉がつき銀髪青目と相まって物語に出てくる神秘的な王子様の様な美少年へと変貌していた。
この変貌っぷりに、アイリーンの態度は激変した。
今まで「デブ」「ブサイク!」と罵っていた口が、「グレ~ン♪一緒に遊ぼぉ~?」だの「本当カッコイイ!流石アイリの幼馴染ね♪」だのと言うようになった。
グレンはその鍛えた身体能力で、すり寄ってくるアイリーンを華麗にさけ、アイリーンの存在を徹底的に無視していた。
今は一応まだスパイの任を請け負っているし、”一応”公爵令嬢だ。
離縁が成立し、完全に格下の伯爵令嬢になり、トトマ商会を潰した暁には今までの鬱憤を晴らしてやろうかと思っているくらいだ。
グレンがそのような思いを抱いていることはアイリーンは勿論気づくはずもなく、「まったく、アイリが可愛すぎて照れてるのね♪そうよね、初恋の相手だもの、仕方ないわ♪」と能天気にお得意の妄想を繰り広げていた。
伯爵家に移ったことで、アイリーンの従者はヒューのみとなった。
勿論世話をする使用人は数名いるが、誰もアイリーンの専属になろうとも、付けようとも思わない。
ヒューは今まで以上にアイリーンに振り回され、毎日殺意の狭間でギリギリ生きていた。
ヒューはヒューで大変な日々を送っている。
初めは感触がよかったポートマン家だったが、当主の仕事が忙しく今は他国への任務が下ったらしく、”労働力”の売り込みは白紙となった。
資金繰りの当てがなくなり、「マヨネーズが出来たんだ!他の画期的な商品を作らせて、その商品の工場にしてしまえば元が取れる!いや、それ以上に儲かる!」と思いつき、アイリーンに勉強そっちのけで商品開発をさせていた。
しかし、これが全くうまくいかなかった。
ヤツは「チョコレートを作るわ!甘味ファンは多いもの、アイリがますます有名になるわ!」だの「カレーがいいわ!異世界の定番、カレー革命しちゃいましょ!うふふっこれは王子が直接会いに来ること間違いなしね!」だのと訳の分からないことばかり言い、実際の食材のことはこれっぽっちも指示しないのだ。
ヒューは理解した。アイリーンは空想上の物に囚われているに過ぎないと。
そもそも茶色の見た目をした甘いものなんてあるわけがない。髪の色が奇抜だと、その頭も奇抜にできるらしい。
初めはアイリーンの言葉をヒントに、伝手を使って珍しい材料や植物を持ってきていたが全部無駄だった。
しかし、マヨネーズのことがある。ヒューは諦めなかった。
もしや、調味料の知識はあるのかと、今滅茶苦茶話題になっている憎きワグナー商会と今や王都に支店を構える一番乗りに乗っているモレッツ商会が販売しているショユーとミソンを持ってきたのだ。
もう遊んでいる時間は無い。そろそろまとまった資金が本当に必要だ。
今日こそは、ヤツが泣こうが喚こうが新商品が作れるまで引き下がらない。
ヒューは目の座った顔で、アイリーンに問うた。
「お嬢様、この調味料を使った、画期的な商品を作りましょう。--お嬢様はマヨネーズ以外、商品化出来そうなモノに至るものを作っていらっしゃいません。現在、王子様達はワグナー商会やモレッツ商会の方に興味がおありなんだそうです。・・・新商品を開発しなければ、王子様達の目にアイリーン様が映ることはないでしょうなぁ。」
アイリーンはヒューの口から聞いたことに衝撃を受けた。
「な、なんですって?!ワグナー商会??モレッツ商会???--どうしてそんな貴族でもない商人どもに王子様の興味が向いてんのよ!!・・・大体、チョコレートとカレーはどうなってんの??商品化してるのがマヨネーズだけって・・・どういうことよ?!?!」
「アイリーン様、再三申し上げている通り、その”チョコレート”や”カレー”などは材料・レシピが全て分からないと実現出来ません。カカオだの、ターメリックだの言われましてもそんな材料ありませんし、それにそんなに美味しい調理されたものが、その材料だけで出来るとは到底思えません。--アイリーン様、本当に、真剣にお考え下さい。今はアイリーン様が目指してらっしゃる”美食の女神”など、到底叶うような状況ではございませんよ。」
ひるまない--いや、それ以上に凄んできたヒューに事の重大さに気付いたアイリーンは焦った。
しかし、このままだと王子様の興味が失われてしまうし、会うタイミングもどんどん遅くなってしまう。
せっかく婚約者なのに・・・!!(なってない)
「----っく、じゃあ醤油を使った料理を教えるわ!唐揚げっていって、醤油で漬け込んだ肉を衣を付けて揚げるの。簡単だけど美味しいわ!どう?!」
「却下です。--お嬢様、前にも説明しましたが、”独占法で”レシピ登録して商売が出来るのは食堂などで食べる”料理”じゃないんです。ちゃんと、商会や店で購入する”食べ物”なんです。調味料や包装されているお菓子など、商会・小売りですぐ売れる状態のものです。その場で調理するもの・保存の効かないものは含まれないと、何度言ったらわかるんですか。そのままの食材も、登録出来ませんからね。--それに、カラアゲは有名ですよ。ここ最近街の食堂でもあるくらいですからね。レシピが”皆示法”でしかも安価に登録されて、貴族の料理人に話題になって庶民たちも購入してますからね。--さぁ、独占法で登録出来るもの、他にありますか?」
「くっ・・・・。じゃあ・・・ポン酢、そうよ!!ポン酢はどう?!醤油にレモンか何か混ぜたら、さっぱりした味の調味料が出来るわ!!それなら調味料だから独占法で登録出来るわよね?!」
「・・・それは”ビヌポン”のことを言ってますか?ユズポンの果汁とショユーと何かが入ってると言われてる。それなら既に登録されてます。他は?」
「は、はぁ??最近醤油が出始めたのに、なんでもうポン酢があんのよ!!ありえないっ・・・!やっぱり前からあったんじゃない!!----他、他っ!・・・もう、そんなに準備して転生してないわよ!なんで私がこんな目に・・・!!」
珍しく苦悩の表情を浮かべるアイリーンに、ヒューは少しだけ気分が良くなる。
お前のせいで散々な目にあってんだ・・・少しは俺の痛みを思い知れ!!・・・出荷する前に痛ぶってやるのが楽しみだ。
不穏なことを考えているヒューに、アイリーンが苦し紛れに提案する。
「--醤油に生姜を入れて、生姜焼きのタレを売るのはどう?!それなら調味料と一緒だし、独占法で登録出来るんじゃないの?!」
「・・・ほう。なるほど・・・。生姜焼きは既に皆示法で登録されてるが、タレは確かに登録されていない・・・。流石はアイリーン様です!!いいですね、誰でも簡単に作れる生姜焼きのタレ、いいかもしれません!すぐにレシピ登録いたします!--念のため、レシピを書いていただけますか?それと分量もきちんと書いてください。」
こうしてなんとかひねり出したアイリーンのアイデアで、ヒューの負債となっている工場で作る商品が決まった。
ヒューは足早に伯爵家を出て、すぐさま近くの商業ギルドで”生姜焼き”のレシピを購入する。
--どこのマヌケか知らないが、安価で登録してくれて助かった。
そのレシピを見て、先程アイリーンに書かせたレシピと比較する。
・・・やはり、生姜焼きのレシピを買って正解だった。こんなお絵描きの様なレシピじゃあ商品化できなかった。
ただあまりにもこの分量の割合に近いと、法務局が何か言ってきそうだ。
奴等は”確認者欄”に貴族の名前があると途端に緩くなるが、そうでなければ普段突かないところを突いてくるのだ。
ヒューは内容を詰める為に、一人路地裏に消えていった。
柔らかな日差しが照り付ける良き日に、子ども部屋からやかましい声が聞こえてきた。
「えぇぇえ!何よ!醤油と味噌あるんじゃない!早く言いなさいよぉ!ってか、こんな材料ありながらよくもあんなにマズイもの作ってたわね!本当才能なさすぎよ!」
アイリーンはヒューが持ってきた、ワグナー商会とモレッツ商会が売買し始めた”ショユー”と”ミソン”という西大陸でしか取り扱いがなかった調味料を見て、不機嫌そうに言った。
「--こちらは最近になって流通し始めた調味料です。これまでお嬢様は口にしたことがないと思いますが。」
「はぁ??最近までなかったの??え、じゃあ何で流通し始めてんのよ!!普通アイリがババーンと売り出して、美食の女神の名声を高めることになるでしょ??!本っ当、意味わかんないわ。あの神様頭おかしいわね、次の転生の時は他の神様にチェンジしてもらわないと。」
--まるでこのショユーとミソンをはじめから知っている様な態度で、またお決まりの自分の世界に入り込んでいる。
つくづく不気味な子どもだ。伯爵家へ追い出されたことにも未だ気づいていない残念な頭だと思いきや、この様な出回っていない物も知っている様な態度をとる・・・。
ヒューは今一度、このショッキングピンク髪を持つアイリを、珍獣の様な得体の知れない存在であると認識した。
ショユーとミソンがバジル家にもたらされて約1年が過ぎた。
その間に、アイリーンを取り巻く環境が色々と変わった。
まず、母親であるモリーが制限のある生活に耐えきれなくなり、泣く泣く実家である伯爵家へ戻った。
今まで自由に流行のドレスや宝飾品などを仕立てていた生活から、買い物は全て使用人に街で購入してきてもらわなくてはいけないことに音を上げたのだ。
逆に今まで良くもった方だ。タンジ家の使用人達の予想に反して随分と粘ったものである。
それに伴い、一応実の娘で不貞の子審議中のアイリーンは伯爵家へ一緒に連れていかなければいけないことになり、渋々実家の一室を与えたのである。
伯爵家へ戻ろうと、まだ離縁は成立していない。
モリーは再び自由を手に入れて、公爵家へ戻ることをひたすら目論んでいた。
一方アイリーンはというと、「まぁ父親がいない意地悪な使用人しかいない屋敷よりは、お母様の屋敷の方がマシでしょ。」と特に抵抗もなく伯爵家に居座っている。
父親に見捨てられているということには微塵も気づいていない、ある意味一番の幸せ者なのかもしれない。
唯一不満を大にして申し立てたのは、カイトの存在だ。
カイトはタンジ家の使用人の為、そもそも伯爵家に一緒に移動するなどありえないことだが、アイリーンの中では自分と離れることがありえないことだったらしい。
結局主張は却下されたが、グレンのアイリーンとの面会の時に同行するということで落ち着いた。
もう一つ変わったことは、グレンの存在である。
グレンはバジル家訪問後の鍛錬の成果がメキメキと現れ、今ではぽっちゃりしていた姿が嘘の様に痩せていた。
痩せただけではなく、程よく筋肉がつき銀髪青目と相まって物語に出てくる神秘的な王子様の様な美少年へと変貌していた。
この変貌っぷりに、アイリーンの態度は激変した。
今まで「デブ」「ブサイク!」と罵っていた口が、「グレ~ン♪一緒に遊ぼぉ~?」だの「本当カッコイイ!流石アイリの幼馴染ね♪」だのと言うようになった。
グレンはその鍛えた身体能力で、すり寄ってくるアイリーンを華麗にさけ、アイリーンの存在を徹底的に無視していた。
今は一応まだスパイの任を請け負っているし、”一応”公爵令嬢だ。
離縁が成立し、完全に格下の伯爵令嬢になり、トトマ商会を潰した暁には今までの鬱憤を晴らしてやろうかと思っているくらいだ。
グレンがそのような思いを抱いていることはアイリーンは勿論気づくはずもなく、「まったく、アイリが可愛すぎて照れてるのね♪そうよね、初恋の相手だもの、仕方ないわ♪」と能天気にお得意の妄想を繰り広げていた。
伯爵家に移ったことで、アイリーンの従者はヒューのみとなった。
勿論世話をする使用人は数名いるが、誰もアイリーンの専属になろうとも、付けようとも思わない。
ヒューは今まで以上にアイリーンに振り回され、毎日殺意の狭間でギリギリ生きていた。
ヒューはヒューで大変な日々を送っている。
初めは感触がよかったポートマン家だったが、当主の仕事が忙しく今は他国への任務が下ったらしく、”労働力”の売り込みは白紙となった。
資金繰りの当てがなくなり、「マヨネーズが出来たんだ!他の画期的な商品を作らせて、その商品の工場にしてしまえば元が取れる!いや、それ以上に儲かる!」と思いつき、アイリーンに勉強そっちのけで商品開発をさせていた。
しかし、これが全くうまくいかなかった。
ヤツは「チョコレートを作るわ!甘味ファンは多いもの、アイリがますます有名になるわ!」だの「カレーがいいわ!異世界の定番、カレー革命しちゃいましょ!うふふっこれは王子が直接会いに来ること間違いなしね!」だのと訳の分からないことばかり言い、実際の食材のことはこれっぽっちも指示しないのだ。
ヒューは理解した。アイリーンは空想上の物に囚われているに過ぎないと。
そもそも茶色の見た目をした甘いものなんてあるわけがない。髪の色が奇抜だと、その頭も奇抜にできるらしい。
初めはアイリーンの言葉をヒントに、伝手を使って珍しい材料や植物を持ってきていたが全部無駄だった。
しかし、マヨネーズのことがある。ヒューは諦めなかった。
もしや、調味料の知識はあるのかと、今滅茶苦茶話題になっている憎きワグナー商会と今や王都に支店を構える一番乗りに乗っているモレッツ商会が販売しているショユーとミソンを持ってきたのだ。
もう遊んでいる時間は無い。そろそろまとまった資金が本当に必要だ。
今日こそは、ヤツが泣こうが喚こうが新商品が作れるまで引き下がらない。
ヒューは目の座った顔で、アイリーンに問うた。
「お嬢様、この調味料を使った、画期的な商品を作りましょう。--お嬢様はマヨネーズ以外、商品化出来そうなモノに至るものを作っていらっしゃいません。現在、王子様達はワグナー商会やモレッツ商会の方に興味がおありなんだそうです。・・・新商品を開発しなければ、王子様達の目にアイリーン様が映ることはないでしょうなぁ。」
アイリーンはヒューの口から聞いたことに衝撃を受けた。
「な、なんですって?!ワグナー商会??モレッツ商会???--どうしてそんな貴族でもない商人どもに王子様の興味が向いてんのよ!!・・・大体、チョコレートとカレーはどうなってんの??商品化してるのがマヨネーズだけって・・・どういうことよ?!?!」
「アイリーン様、再三申し上げている通り、その”チョコレート”や”カレー”などは材料・レシピが全て分からないと実現出来ません。カカオだの、ターメリックだの言われましてもそんな材料ありませんし、それにそんなに美味しい調理されたものが、その材料だけで出来るとは到底思えません。--アイリーン様、本当に、真剣にお考え下さい。今はアイリーン様が目指してらっしゃる”美食の女神”など、到底叶うような状況ではございませんよ。」
ひるまない--いや、それ以上に凄んできたヒューに事の重大さに気付いたアイリーンは焦った。
しかし、このままだと王子様の興味が失われてしまうし、会うタイミングもどんどん遅くなってしまう。
せっかく婚約者なのに・・・!!(なってない)
「----っく、じゃあ醤油を使った料理を教えるわ!唐揚げっていって、醤油で漬け込んだ肉を衣を付けて揚げるの。簡単だけど美味しいわ!どう?!」
「却下です。--お嬢様、前にも説明しましたが、”独占法で”レシピ登録して商売が出来るのは食堂などで食べる”料理”じゃないんです。ちゃんと、商会や店で購入する”食べ物”なんです。調味料や包装されているお菓子など、商会・小売りですぐ売れる状態のものです。その場で調理するもの・保存の効かないものは含まれないと、何度言ったらわかるんですか。そのままの食材も、登録出来ませんからね。--それに、カラアゲは有名ですよ。ここ最近街の食堂でもあるくらいですからね。レシピが”皆示法”でしかも安価に登録されて、貴族の料理人に話題になって庶民たちも購入してますからね。--さぁ、独占法で登録出来るもの、他にありますか?」
「くっ・・・・。じゃあ・・・ポン酢、そうよ!!ポン酢はどう?!醤油にレモンか何か混ぜたら、さっぱりした味の調味料が出来るわ!!それなら調味料だから独占法で登録出来るわよね?!」
「・・・それは”ビヌポン”のことを言ってますか?ユズポンの果汁とショユーと何かが入ってると言われてる。それなら既に登録されてます。他は?」
「は、はぁ??最近醤油が出始めたのに、なんでもうポン酢があんのよ!!ありえないっ・・・!やっぱり前からあったんじゃない!!----他、他っ!・・・もう、そんなに準備して転生してないわよ!なんで私がこんな目に・・・!!」
珍しく苦悩の表情を浮かべるアイリーンに、ヒューは少しだけ気分が良くなる。
お前のせいで散々な目にあってんだ・・・少しは俺の痛みを思い知れ!!・・・出荷する前に痛ぶってやるのが楽しみだ。
不穏なことを考えているヒューに、アイリーンが苦し紛れに提案する。
「--醤油に生姜を入れて、生姜焼きのタレを売るのはどう?!それなら調味料と一緒だし、独占法で登録出来るんじゃないの?!」
「・・・ほう。なるほど・・・。生姜焼きは既に皆示法で登録されてるが、タレは確かに登録されていない・・・。流石はアイリーン様です!!いいですね、誰でも簡単に作れる生姜焼きのタレ、いいかもしれません!すぐにレシピ登録いたします!--念のため、レシピを書いていただけますか?それと分量もきちんと書いてください。」
こうしてなんとかひねり出したアイリーンのアイデアで、ヒューの負債となっている工場で作る商品が決まった。
ヒューは足早に伯爵家を出て、すぐさま近くの商業ギルドで”生姜焼き”のレシピを購入する。
--どこのマヌケか知らないが、安価で登録してくれて助かった。
そのレシピを見て、先程アイリーンに書かせたレシピと比較する。
・・・やはり、生姜焼きのレシピを買って正解だった。こんなお絵描きの様なレシピじゃあ商品化できなかった。
ただあまりにもこの分量の割合に近いと、法務局が何か言ってきそうだ。
奴等は”確認者欄”に貴族の名前があると途端に緩くなるが、そうでなければ普段突かないところを突いてくるのだ。
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