姉の彼女を好きになりました。

榊󠄀ダダ

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第17話

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 それから数日が経ったある日。


 コンコンッ!


「ツグミー?」


 寝てるんだろうか……


 ツグミは一度寝てしまうと、地震があろうと頬を叩かれようとそうそう起きない。

 自分が寝てる時は勝手に入ってくるなと普段からツグミに言ってある手前、それを自分がすることに気が引けた。ツグミはそんなこと気にしないだろうけど、私のプライドが許さない。
 ……とは言え、今回は緊急事態だから仕方ない。友達を待たせるくらいなら、プライドなんてへし折らないと……。



 つい数分前、服を着て、髪をセットして、さぁ出掛けよう!とお気に入りのブーツを履いて玄関を出た瞬間、右の足に違和感を感じた。

「あれ?」

 見ると、靴底のつま先部分が少しだけペロッと剥がれていた。

「えー!!嘘でしょ!?」

 今日の服には絶対にこのブーツを履いて行きたかった。他の靴というより、どうにか直せないかという策で脳がぐるぐる回る。私の脳裏に、取れてしまったネックレスの石を接着剤でくっつけていた、数日前のツグミの映像がよぎった。

 これくらいならとりあえず接着剤でどうにかなりそうだ。そう思った私はリビングに急ぎ、小物が入った引き出しを漁った。でも、いくらかき分けても見当たらない。

 そんなに時間に余裕があるわけじゃない。無駄な動きをするより……と、私は朝からどこかへ出掛けていったお母さんに電話をかけた。気づかなかったらどうしようと心配したけど、お母さんは3秒で出てくれた。

「あ、お母さん?接着剤ってどこにある?」
「接着剤?リビングの引き出しでしょ?」
「そこにないから電話したの!」
「じゃあ、ツグちゃんが使ったまま部屋に持ってっちゃったんじゃない?いないの?」
「……いる」
「私にかける前に聞いたらいいじゃないの、同じ家の中にいるんだから。あなた達最近なんだか変よ?お互い話もしないじゃない。どうしたの?ケンカでもしてるの?」
「あー!もう時間ないから!」

 私はお母さんの話を遮って電話を切った。

 そうゆうわけで、私はツグミの部屋の前にいる。もう躊躇ってる暇はなかった。

「入るからね!」

 一応断りを入れてから、扉を開けた。
 思った通り、ツグミは少し丸まった格好で、ベッドの上ぐっすりと眠っていた。

「ツグミ!接着剤持ってない?」

 近づいて大きな声で聞いても、何の反応もない。

「ねー!ツグミ!時間ないの!」

 寝てる人に対して不憫なほどに、大きく揺さぶりながらもう一度聞いた。それでも最強なツグミは、眉毛一つ動かさない。あまりにも起きないので、もしかして死んでるんじゃないかとすら思う。

 だめだ、ツグミを起こす方が時間がかかる……

「もう勝手に探すからね!」

 いたってシンプルなツグミの机の引き出しに手をかけた。ツグミの部屋にはベッドと、小さめの勉強机しかない。なんの装飾もない板のような机であの大学に受かったのかと思うと、さすがに頭が下がった。

 ツグミは物に対して極端に執着がない。必要な物しか置かないし、必要がなくなればすぐ捨ててしまう。ある意味片付けの天才だ。

 学力テストの結果表も節目ごとに書かされてきた作文も、絵のコンクールや書道でもらった数々の賞状やトロフィーも、六年間使い続けたランドセルだって『もう使うことはないから』と無慈悲に捨てた。しまいには、卒業式の翌日に卒業証書まで筒ごと捨ててしまい、お母さんを驚愕させたこともあった。

 引き出しを開けると、数本のペンに混じって接着剤があった。

「あった!」

 急いでくっつけなきゃ!
 そう思って引き出しを閉めようとした時、引き出しの奥に小さなアルミ製の缶を見つけた。後ろを振り返ると、私が揺さぶった痕跡のまま何一つ変わらない寝相で眠り続けるツグミがいた。

 私はその缶の箱をそーっと開けてみた。
 中に入ってたのは二つだけ。
 地元の小さな遊園地の半券と、もう一つは、安全ピンのついた赤い切れ端のリボン。
 どっちも私には知り得ないものだった。
 静かに缶のフタを閉めて、私はツグミの部屋を出た。




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