拝啓大好きな家族へ

猫狐

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拝啓大好きな家族へ

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ああ、ついにこの日が来ましたか。

いつかは来ると思ってたけど、意外と早かったですね。

ふふふ。まあでも、今まで赦されてたことが不思議なほどですけど。

私は、いえ、私達は、今まで散々我が儘を言ってきたから。

ずっと反抗し続けてきたから。

当然の結果ですよね。



ついに私を見てくれなかったお母様。


これで気はすみましたか。

あなたは望むこと全てをかなえてきたのに、いつも言ってましたよね。

足りない、、、楽しくない、、、美しくないって。

不器用なお母様。

きっとあなたも知らなかったんですよね。

あなた自身が一番欲しいものを。

それはすぐ目の前にあったんですよ。

私もつい最近知ったことですけど。

私もあなたも愚かでした。

それでも願わずにはいられません。


あなたが少しだけでも前を向いていたなら、全てが変わっていたのでしょうか、と。


これで満足ですか。

何もかも失うこの状況で。

あなたが目指したものが何かは存じませんが、きっと違っているだろうこの状況で。

あなたは満たされたのですか。

初めから嫌だったのでしょうけど、あなたが望んだものは手に入れましたよ。

その代償に周りの全てを壊して。

満足感を得られなかったのなら、それはもう、今までの意味はなんだったのか無くなるくらい。

あなたに満たされてほしくて、頑張ってきた全てが、、、

全てが無駄になってしまいます。

あなたは、、、あなたは、、、あなたは。


私を、私を愛してくれましたか。


一度でも、一度だけでよかったからこっちを見てほしかった。

私はずっとずっとずっとずっと。

あなたに愛してほしかっただけなのに。

ずっとそばにいたのに、一度も気づいてくれなかったお母様。

あなたは、私が私でない時だけ私を見てくれた。

あなたの望む私で居続けるのは、嫌ではなかったのですよ。

あなたに見てもらえてる、そう思うことができたから。

私なんかが、あなたに見てもらえるのなら、それでいいはずだった。

いいはずだったのに、、、。

我儘な私でごめんなさい。

親子としての愛を望んでしまってごめんなさい。

あなたに私自身を見て欲しい、愛して欲しいと欲をかいてしまったから。

こんな結末になってしまった。

大好きなお母様。

ほんとはあなたの方が間違ってると知っていました。

これが、、、これがあなたの望んだ結末ですか。


あなたを止めなかった私を恨んで。



いつも私を叱ってくれたお父様。

あなたは幸せでしたか。

当主という絶対的な権限を持っているのに、待っていてくださったのですよね。

私達を。

私達のせいで全てを壊されたのに。

優しいあなたが、赦し続けてくれていたことを、本当は、心のどこかでわかってました。

我慢強いお父様。

私はあなたに幸せになってほしかった。

壊した張本人である私達を守って我慢し続けた結果。

あなたまで悪者になってしまっていたけども。

あなたの友人が賢い人で本当によかった。

あなたは一緒に堕ちようとしてくれたけど、止めてくださったから。

私は、あなたが悪者にならなくて本当によかったと心から思っています。

なんで私を見捨てなかったのですか。

駄目だと思っていても捨てきれなかった私をずっと叱り続けてくれた優しいお父様。

見捨てずにいてくれた優しさを裏切り続けていたのに。

笑った顔なんてもうおぼろげにしか思い出せないけど。

ずっと仰ってましたよね。

何が大切か、何をすべきなのか。

教えてくださってたけど、理解できなかった、直せなかった弱い私に。

感謝してもしきれません。

やっとやっと理解することができました。

もう遅すぎたけれども。

やっとあなたの本当の娘になれた気がします。

今でも私に期待してくれてますか。

有能なお父様。

なんでも完璧なあなたが私は大嫌いでした。

いつでも正しくて妥協を許さないお父様。

私は今でもあなたの全てが正しかったとは思えません。

でも、大好きでした。

比べられ続けたけど、その事に気づいてなんてくれなかったけれども、どうしても嫌いになれなかったです。

小さい頃から、あなたの大きな背中を見せてくれて、英才教育を受けさせてもらってたのに。

何もできなくてごめんなさい。

無能な娘で本当にごめんなさい。

私を信じようとしてくださったのに、、、

期待を裏切ってごめんなさい。

私をずっと愛してくれてたことを私はずっと気づかなかった。

確かに、あなたの愛情の示しかたは少しずれていたけども。

それでも、教えてもらうまで、、、いえ、教えてもらっても信じられなかった。

私にとってあなたは、小さい頃からずっと悪だったから。

でも違った。

あなたが叱るのは嫌いだからではなく愛してるから。

やっと気づいたよ。

一度も言えなかったけど。

お父様、大好きです。


あなたを、信じられなかった、傷つけた、未熟な私を一生赦さないで。




私を愛してくれたお兄様。

あなたはとても賢いから、すぐに自らの過ちに気づいていましたよね。

私と一緒だったはずなのに。

あなただけが私を私として見てくれたのです。

小さい頃から。

あなただけが私を褒めてくれた。

愛してくれてた。

とても嬉しかった。

私はそれで満足すればよかったのに。

どうしても諦められなかったモノを追い続けてしまいました。

私が強欲だから。

あなただけの愛では満足できなかったせいで。

あなたは、私をずっと救おうとしてくださっていたのですか。

あなただけは私を見捨てないでいてくれのです。

誰もが諦めた中で、最後まで必死に叫び続けてくれましたよね。

私はそれを払いのけて、あなたの大切なものを傷つけて、憎ませたのに。

あなたの最後の言葉と顔が忘れらないです。

あの憎しみと愛情がこもったあの目が。

私は知っていました。

あなたが陰で悩んでいることを。

幼い頃、仲が良かったことを忘れずにいてくれて、憎みきれないことを。

大切なものを傷つけられたのだから、憎んでしまえばいいのに。

私はそんなあなたを利用して、傷つけてしまいました。

あなたは、私の過ちを隠そうとしてくれてたのに。

実際、それに救われたこともあったのに。

なのに、裏切ってしまった私をどうか憎んでください。

大切なものを守りきれてますか。

私がお兄様を信じれなくなったのは、お兄様の一番ではなくなったからです。

もうあなたは私を愛してくれないと思い込んでしまった。

一番ではなくても、あなたはちゃんと私を見ていてくれてたことに気づかないで。

あなたは後悔しているかもしれないけど、私を選ばなかったことを後悔しないで。

私が断言します。

あなたの選択は正しい。

それで良かったのです。

ああ、大好きなお兄様。

あなたが悔やむことは何一つとしてないのです。

全ては私が悪かった。

あなたは、全てを忘れて幸せになってください。

その権利があります。

今まで損したぶん、

大切なものと共に、


どうか幸せに。



最後に、

お母様、お父様、お兄様。

私の大好きな家族

私はただ、

普通の家族になりたかったのです。

一緒にご飯を食べて、

一緒にお出かけをして、

行ってきます、いってらっしゃいを言ってみたかった。

一緒に笑って、

泣いて、

くだらないことを言い合って、

おはよう、おやすみを言ってみたかった。

願わくば、絵本のような幸せな家族になりたかったけど。

一度ぐらい体験してみたかったなぁ。

その願いは、自分の過ちのせいでもう一生叶わないけど。

今も、

これからもずっと、


みんなのことを愛しています。
                              
 

敬具


暗い牢屋の中。

一人の看守が泣いていた。

手紙を読みながら、ただ、静かに。

彼女に紙とペンを渡したのは、ただの気まぐれだった。

相手は、国を震撼させた稀代の大悪女。

まだ子供といえる年で裁かれた、様々な悪事により、死刑囚となっていた。

そして、今日正午。

民衆が集まるなか、公開処刑となった。

彼女は、最後まで嗤っていたという。

そんな彼女がまさか、こんな手紙を残すなんて誰が考えるか。

こんな懺悔をおいて逝くなんて。

誰が想像できるか。

所詮はまだ子供だったのだ。

ああ、私達は一人の少女に何を背負わせてしまったのだろう。

こんなに幼い、ただ、家族が大好きだった少女に。

彼女に何があったのかは知らない。

でも、これだけはわかる。

この手紙は、懺悔は、家族への遇いに溢れている。

稀代の悪女もただの家族思いの少女であったのだ。

彼女は誰もが当然のように受け取っている母親の愛を渇望し続けた。

もう誰からも愛されてないと思った彼女は、最後の望みである、母の愛を欲したのだ。

犯罪をおかして。

なのに、見返りはこれだ。

なんて哀れな少女なのだろう。

なんて可哀想な少女なのだろう。

彼女は捕まったとき何を思ったのか。

諦念に近い想いを抱いていたのか。

最後に父と兄の愛に気づけた彼女は人生で一番幸せだったのだろう。

そして、人生で一番後悔していたのだろう。

涙でにじむ文字は。

しわになっているこの紙は。

血で濡れているこの机は。

この手紙を書いた彼女の心情を露にしている。

最後まで家族を愛し続けた彼女。

ならば、これを見つけた私は、どうすべきか。

そんなの決まっている。

彼女は望まないかもしれないないが、この手紙は__。



どうか彼女が彼方で笑顔でありますように
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