4 / 4
使用人会議
しおりを挟む屋敷に仕える面々が揃ったところで、注目を集めるためにメイド長がパンパンと手を鳴らした。
「皆!よく聞きなさい!また奥様とお嬢様の喧嘩が勃発しました!」
集まった使用人たちはザワザワと騒ぎ出す。
「そんなのいつものことでは?」
「その場にいたやつ可哀想だな。」
メイド長はざわめきを収めるため、再び手を鳴らした。
「よく考えてみなさい!今回は旦那様がおられません!」
「あっ!!」
そこで庭師の男が思わずと言ったふうに声を上げた。
メイド長の視線がそちらを向く。
庭師は、全員の注目を集めてしまったことで、タジタジになりながらも言葉を続けた。
「だから、、、止められる人がいないのですね。」
そこらじゅうで「あっ。」「なるほど、、、。」といった声が上がる。メイド長は深く頷くとぐるりと全員を見渡して言った。
「このような事態は初めてです。性格の似ているお二人ですし、バチバチで喧嘩を始められればどうなるか分かりません。明日には元どうりになっていれば良いのですが、負けず嫌いのお二人ですしそう上手くはいかないでしょう。」
「ならどうすればっ!」
「わたしにもお二人がどのような喧嘩をなさるのかは想像がつきません。おそらく、今までと同じような喧嘩をなさるはずです。主人たちに身内に容赦するという考えがあれば良いのですが、、、おそらく強いと分かっているからこそ逆に手加減などしないでしょう。」
メイド長は皆へ話しながら、考えられる最悪の事態を予想し、顔が真っ青になっていた。
しかし、メイド長である自分が弱気になってはいけないと自らを鼓舞し、強気な姿を皆へ見せ続ける。
近くで話を聞いていたリサはそんなメイド長を頼もしく思っていた。
「そこで、厳重な警備を敷き、近隣へ被害が及ばないようにします。物理的な直接勝負であれば誘導も可能ですが、どのような手で相手を責めるかわかりません。親子ですし、毒などは使わないと思いますが、何をやらかすか分かりませんので。」
メイド長はそこまで言って一旦区切り、後ろを振り返った。
「執事長、それでよろしいですか?」
メイド長が話しかけたのは後ろに控えていた執事長だった。
高齢な彼は表立って動きこそしないが、二十年この屋敷に勤めているメイド長よりも長くこの屋敷に仕えている大ベテランだ。
「問題ない」
そんな彼がしっかりと頷くのを確認したメイド長は、使用人たちの方へ向き直った。
「総員っ!準備に取り掛かれぇぇ!!」
「「「畏まりました!」」」
迫力ある号令に応えるように、使用人は密かに動き出した。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】
※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。
※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる